ローグライトである意味とは ― クロノアーク(レビュー)

意味はない。だが、理由がある。


[タイトル]
クロノアーク(Chrono Ark) [公式サイト] ※steamリンク

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC(steam) / nintendo switch(予定)

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
25時間 / 真エンドまで


はじめに

今回レビューするのは、インディー御用達ジャンルのローグライクゲー「クロノアーク」だ。
インディーで三億回は擦られているジャンルで、良くも悪くも差が出易いジャンルである。

本作の特徴は、「リプレイ性」の中に「ストーリー性」を持たせたことだろう。
ストーリーテリングにはどこかで見た感じの辞書機能が入っていたり、
演出やキャラクターデザインなどもアニメチックな尖り方を見せている。

インディー系ならではの、「やりたいこと」や「尖り」をどこまで落とし込めたか
擦られているジャンルだからこそ、そこを意識して評価していきたい。

 

ローグライトデッキビルダーとして

本作は先ほど述べたように、いつもの「ローグライクデッキビルダー」である。
デッキビルドして、キャラシナジーを作って……みたいな、いつものアレだ。
その中でも本作は、「アンロック薄め」「シナジー・システム型」といった趣だ。

まず、本作におけるアンロック要素はかなり薄い。
アンロックによる難易度の低下はほとんど体感できるものではない。
プレイングやゲーム理解の比重のほうが遥かに高いゲーム性となっている。

そして、ゲームプレイの内容は「覚えゲー」というか、ギミック系に近い。
これは自キャラのシナジーを突き詰める「ソリティア」的なものとは異なっている。
各キャラクターは固有のテーマみたいなものを持っているが、そもそも共通カードがない。

そして、各種シナジーも「圧倒的なレベル」のシナジーはあまり多くない。
キャラクター数も非常に多く、綿密にシナジーを組むようなゲーム性ではない。
各キャラのカード、固有ギミックを覚えるのがメインの攻略となる。

そして、これはボス戦にも同じことが言える。
ボス戦も「正攻法」で攻めるというより、アクの強いギミック型の印象が強い。
ある程度の「正攻法」は通用するのだが、「覚えること」は割と前提な部分もある。

で、じゃあこれが評価としてどうなのか?というと、一長一短だ。
サクッといろんなキャラで遊んで、いろんな固有ギミックを楽しむ分にはとてもよい。
ただ、アセンションを潜っていくようなゲームとしてやるには、リプレイ性に難がある

良くも悪くも、ローグライトである意味がない……RPG的な攻略になってしまっている。

といっても、後述の理由により、本デザインはゲーム体験と非常に大きくマッチしている。
だから、このゲーム性における「悪い部分」を感じたことはなかった。

 

「リプレイ性」を「表現」として使ったということ

本作の特徴の一つは、そのストーリー展開だろう。
そしてそのストーリーなのだが、「ローグライトであること」と大きく連動している。

ローグライトとして何回もやるということが「表現」の一つになっているし、
その過程で「いろいろな」キャラやボスに挑むことを自然とやらせるようになっている。
だからこそ、前述のギミック寄りなゲーム性が非常にマッチしているのだ。

ローグライトにおいて、周回の位置づけは割と限定的だ。
それは、「アンロックのための稼ぎ」か「技術を高める」くらいになってくる。
ゲームの方向性によって比重は大きく異なってくるが、基本的にはこれだ。

ただ、本作は「自然と」「表現の一環として」ローグライト的な周回をさせる。
そのためにゲーム性が調整されているのだろうし、調和として非常に見事だった。

本作はゲーム性を見ると「ローグライトの意味はない」
それこそ、RPGでやったほうがいい。
だが、ゲームで表現したかったことを考えると、「ローグライトの意味がある」のだ。

 

インディーらしいUI

本作の欠点を挙げるとすれば、操作性とUIだろう。
まあインディーらしいといえばらしいのだが、クオリティの底上げが著しい近年では珍しく、
若干のストレスというか、「これPADで出来ねえな……」っていうレベルの操作性ではあった。

そしてUIは最も欲しい「パーティーのデッキや装備」を一枚で提供してくれない
ローグライトの核である情報にアクセスしたり、調整するためのクリックが2~3手多い
代わりに、どうでもいいチュートリアル的な情報(キャラの固有スキルなど)の面積が大きい。

更に、こういった情報のアクセス性に絡む部分として、ビルド面のスケールが確認し辛い。
本作では一時的な装備枠でカード効果がスケールするのだが、
そのスケールの比重や、どう変わるのかを確認するのが非常に面倒になっている。

まあ、前述のように大事なのは「ギミック」の理解のほうであり、ここら辺は適当でもよい。
なのだけど、せっかくあるならちゃんとやりたいよなぁ、とは思うところではある。
といっても私は、ちゃんとやるにはUIがキツくて出来なかった。

ってなると、ストーリー一点突破で簡易化して操作性を上げて欲しかったなとも思う。
ただまあ、スケールの数字自体は結構練られているようではあり、
ちゃんと高難易度をやるのであれば、ちゃんとした攻略自体は出来るとは思われる。

まあ、私個人は操作性やUIの問題で高難度をやる気にはならなかった、という感じだ。

 

総評

「ローグライトとして」は、特筆すべき点は多くない。
サクッと出来るリプレイ性低め・アンロック性低めのギミック覚えゲー的な仕上がりだ。
操作性の悪さも相まって、リプレイ性高く高難度に挑むみたいなのは若干苦しいところがある。

だが、本作は「ローグライト」の「周回」を、いい感じにストーリーに落とし込んでいる。

ローグライトを引き延ばし的な要素として使わず、表現の一環として使う。
そのために、ローグライト部分は「ローグライトらしくない」単発プレイ向けの調整をする。
このあたりの割り切りが非常に優れており、きれいにまとまった作品だったと思う。

キャラクター、ストーリーあたりが気になるなら、いい体験が出来るだろう。
逆に、重厚なローグライトを期待するならあまりお勧めはしない。

「ローグライト」と言いながら、「実はRPG」という「いい尖り」のゲームだった。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★☆☆☆☆(6/10)

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