酔いの心地よさとは、不安定さ ― BAR ステラアビス(レビュー)

酩酊に収束するのであれば、覚醒と変わりない。


[タイトル]
BAR ステラアビス [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ
★nintendo switch / PS4 / PS5

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
30時間 / ストーリークリア、裏ダンジョン未踏破


はじめに

今回も始まりましたインディーゲースタジオ日本一ソフトウェアの発売日人柱のお時間です!

今回紹介するタイトルは「ステラアビス」、SRPG*ローグライト*会話シミュなゲームだ。
ジャンルのかけ合わせが実に日本一らしい、アイデア勝負っぽい意欲作と言えよう。

ただ、額面上この組み合わせは食い合わせがあまりよくない。
ローグ”ライト”は、「サクサク周回」が大事であり、SRPGの煩雑さとは合わない。
会話シミュは要素として独立するから食傷は起こさないものの、シナジーは薄そうだ。

つまるところかけ合わせが上手くいけば神ゲー、上手くいかなければクソゲーなのだ。
これこそ日本一ソフトウェアと言わんばかりで、非常に楽しみにさせてくれる。
例のごとく発売日にフルプライス購入したので、さっそくレビューしていこう。

 

SRPG*ローグライト

まず前提として、いくつか本作のシステムを紹介しておこう。
本作は一般的なローグライトであり、基礎強化乱数強化部分に分かれている。

基礎強化としては「装備」、「装備オプション」、「成長補正」あたりがある。
また、乱数強化としては「ステラ」と呼ばれるシステムが存在している。
これらを駆使し、シナジーを形成する点は一般的なローグライトと考えてよい。

SRPG要素としては、「ターン」と「マス」で戦闘は展開される部分が挙げられる。
マス……つまるところ距離管理でのヘイトコントロールなどが戦略上は可能で、
操作性も「冒険メシ」を踏襲した快適なもので、日本一らしい仕上がりとなっている。

そのうえで、この組み合わせがどうなったか、批評していこう。

 

乱数強化としてのステラの立ち位置

まずは、乱数強化要素であるステラから評価していこう。

というのも、乱数強化の傾向によってゲームの立ち位置は大きく変わるからだ。
乱数要素が「宇宙」なら、それを「収束」させるゲーム性になる。
乱数要素が「ほぼ同じ」なら、むしろ「強化要素のアンロック」がゲームのコアになる。

それゆえに、この塩梅はゲームの方向性を定める重要なものとなってくる。
ということで、説明に移ろう。


ステラとは?

ステラとは、「戦闘行動のカスタマイズ」「同属性シナジー」の掛け合わせからなる。
プレイヤーは、1枚の範囲ステラ(攻撃範囲/倍率定義)と、
3枚の攻撃ステラ(内容定義)を1セットとし、3セットぶんを戦闘行動として設定できる。

例えば、[遠距離の範囲]*[防御バフ][通常攻撃][ソロptの場合強化攻撃]みたいな感じだ。
この例では、「防御バフを積んだあと遠距離攻撃を2回する」という戦闘行動になる。
[防御バフ]の他にも、[hp回復]や[状態異常]のような特殊攻撃ステラも存在する。

また、各種ステラには「星座」が割り当てられている。
これはオートチェスにおける「属性」みたいなもので、星座を揃えるとバフがもらえる。
本ブログで紹介したゲームだと、ビビッドナイトはその仕組みを上手く落とし込んでいた。

この二つを組み合わせ、12枚の「デッキ」をどう組むか?がゲームのキモとなってくる。


乱数要素は「宇宙」なのか?

そのうえで、冒頭の質問に答えるとすると……どちらともいえない。
本当に、どちらともいえないのだ。

というのも、確かに「宇宙」な組み合わせは存在する。
公式PVでも、例として「バリア獲得」*「バリア依存ダメージ」みたいな例を挙げていた。
これは確かに「宇宙」で、引けたら死ぬほど強い。無敵なレベルだ。

だから「宇宙」だ。
と言いたいところなのだけど、実際そうでもない。
というのも、大きな理由が二つある。

一つ目は、ステラ供給量が多いこと。
本作では1フロアあたり3~5枚、さらにレベル上昇につき1枚ステラが供給される。
ストーリーラストは30フロア/80レベル程度であり、かなりの数が供給される。

もう一つは、シナジー形成に必要な枚数がかなり少ないこと。
特定の1枚+αとか、とにかく2~3枚程度で完結するレベルのものが多い。
ステラの全体総数はかなり多いのだが、供給量からしていずれかの強カードは手に入る。

だから、確かに宇宙なのだけど、宇宙が割と前提になってしまっている
それゆえに、どちらともいえない……と言わざるを得ないのだ。


総じて、コアとなる乱数強化の体験が、「ステラ」による乱数制御であるがゆえに、
乱数を「どうコントロールするか?」が物量で解決されてしまうと、深みがない
忖度なく評価するなら、こんなところだろうか。

 

基礎強化としての装備強化/成長補正の立ち位置

次に、基礎強化としての装備強化と成長補正について批評していく。
これは、ほかのローグライトにおける「永久強化」に近いものと考えてよい。
ただ、雑に「HP+1」みたいなものではなく、若干の捻りが加えられている。


装備強化とオプション

本作は、4部位に装備を付けることができる。
これらは基礎能力を底上げしてくれるほか、6つまで装備OPをつけることが可能だ。
装備OPは他アイテムから継承することが可能で、かなりスキルを盛れる。

ここまで聞くと、冒険メシっぽい「ハクスラ」感を受けるかもしれない。
だが、本作はあくまでも「ローグライト」の範疇に留まっており、OPは固定になっている。
めちゃくちゃ補正値の強いOPは無いし、ランダムOP堀りみたいな要素もない。

ではこのOPを装備強化に自由度はあるか?というと、ほぼ無い。
というのも、強OPがほぼほぼ確定しており、それらを継承させる以外ないからだ。
ビルドに合わせてOPを選ぶというより、汎用強OPを詰め込む形になってくる。

だから、「底上げではあるものの、ワクワク感がある」みたいな立ち位置だ。


成長補正

成長補正……もとい酒。
本作では、お酒を最大3種類まで飲むことができ、それぞれに応じた効果が得られる。
効果は多岐にわたり、特定星座ステラの出現力upなどの乱数補正も含まれる。

そして、それぞれの酒にはレベルアップ時の成長補正が存在している。
これらは後半アンロックされる酒のほうが補正が強い傾向にあり、事実上の底上げとなる。
そういった意味で、成長補正と書かせてもらっている。

まずはその成長補正だが、成長補正は底上げとしては気付かないレベルのものだ。
実際は効いてくるのだろうが、プレイの体感としてはあまり変化を感じない。
つまるところ、これは(体感していないからこそ)設計としてはとても良いのだろう。


成長補正: 酒効果

次に酒効果だが、これは主に3つに分類される。
一つに乱数補正、二つに戦闘強化、三つに恒久強化(装備強化回数upなど)だ。

そのうえでゲーム設計として面白いのは、探索の途中で数回「飲みなおし」があることだ。
つまるところ、ビルドの片割れが出来たから乱数補正を飲もう……みたいなことができる。
最後にボス特攻の酒を飲もう……みたいな、経験則が活きてくるところもあるだろう。

だが、この理想を体現するには至っていないのが正直なところだ。
というのも、乱数補正は体感できるほど強力ではないからあまり狙えないし、
ボス特攻も汎用性の高い戦闘強化の酒で事足りるので、知識が活きることもない。


以上から、酒システムは見た目ほど自由度はなく、また実力もそこまで出ない。
理論上は乱数を収束させる強力な手段であると同時に、
ボス戦へのアプローチを大きく変えるような手段になり得そうなものの、そうはならない

結局、決まった酒を決まったように呑むくらいだ。

 

SRPGとしてどうなのか?

コマンド式、マス式のバトルとローグライトの相性はいいのか?
答えは否。
マップ全ての敵を殲滅するのが正義であるローグライトと、手間のかかるマスは相性が悪い。

例のごとく、やっぱり本作のテンポは若干気になる部分がある。
確かにボス戦はそこそこ戦略要素があり、SRPGとしても楽しめるのだが、
雑魚に関しては速攻で倒す以外の解法が無いし、なんならターンを渡すと即死まである。

そんなバランスにおいて、非常に残念なのが「ボス戦がめっちゃ少ない」ことだ。
ボス戦は基本的に最終フロアにしかおらず、道中には一切出現しない。
だから、SRPGとして楽しめるボス戦との配分が悪く、ダレてしまう。

じゃあそのボスはどこまで戦略的か?というと、一般的なローグライトと大差ない。
結局はヘイトコントロールによる防御をマス的に行うだけになっており、ディスガイア的だ。
ステータスが高いほうが勝つ、というのが実際のプレイフィールになってしまっている。

やはり道中が長すぎるがゆえに、いかに道中丁寧に作業したか?が攻略になるのだ。
どこまでダレずに準備したか?でステータスが決まり、それが勝敗になる。
なんというか、やっぱり相性は悪いなと感じざるを得ない。

 

会話パートの世界観

では会話パートはどうか?というと、これはかなり評価は高い
基本的にバーの常連は「やべーやつ」しかいないので、会話を楽しむことができるだろう。
主人公は喋れない設定なので、他人の言葉を「引用」するという演出もなかなかに良い。

欲を言えば、ゲーム部分ともう少しリンクしている部分は欲しかったように思う。
結局は「お酒を飲む」以上でも以下でもなく、ゲーム部分との調和はあまり感じられない。
とはいえこれは超大作であっても難しいもので、本作は及第点はちゃんと取れている。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、会話パートは外れにくいと思う。
日本一の客層向けに刺さるようなテーマが散りばめられており、刺さる人も多そうだ。
PVなどでビビっときたタイプには、それなりの命中率があると考えている。

 

でも結局、中盤が一番完成されている

ステラの組み合わせは終盤には供給過多になり、「宇宙」が前提になる。
酒強化が活きてくるのは、供給コントロールと施設稼ぎが必要な時だけ。
SRPGとして面白いのはボス戦くらいで、あとは作業が煩雑になるだけ。

でも裏を返すと、全てが中盤において噛み合っている

選択肢が少ないが、組み合わせで突破できる中盤においては「宇宙」を実感できる。
自分なりの酒メニューを思考錯誤するのは中盤がメインだ。
階層が少なく、狙うべきボス戦と雑魚までのバランスがいいのも中盤だ。

何なら、会話シミュも山場は本性が現れる中盤にある。
だからこのゲーム、中盤は要素がかなり噛み合っていて、とてもとても面白い。
「冒険メシ」が「終盤」で完成するゲームなら、本作は「中盤」で完成するゲームなのだ。

 

総評

序盤は要素が少なく、退屈。
中盤一気に面白さが加速し、全てにおいて完成する。
終盤に要素が破綻しかけ、失速しながらも走り切る。

本作のゲーム体験は、こんな表現がぴったりなように思える。
だが、難しい要素の掛け合わせではあるものの、それなりにまとまってはいる。
最近の日本一ソフトウェアは大外れを出さないので、逆に心配ですらある。

とはいえ、すべての要素が噛み合ったとしても、特異な体験ではない。
どれも要素としては良質だが、掛け合わせで化学反応が起きてはいない。
良質な要素が良質にまとまった結果、良質な中盤の体験を生み出している感じだ。

だから、本作の要素のいずれかが好きなのであれば、それなりに応えてくれる良作だ。
だが、これらの要素の化学反応とまでなると……そこまでは望めないだろうか。
個人的には、「面白そう」と思ったなら割と外れはしないと思う類の作品とは思っている。

ちなみに、体験版範囲は要素が少なすぎるし会話はイエスマンだし一番つまらない時期だ。
体験版時点で面白いかも?と思ったら、かなり適正はあると考えてよい。

 

最後に私は「日本一には化学反応or自爆」を期待している。
ディスガイア7でも低めな評価を出したが、これはファンならではのクソ心理がある。
普通の人にとっては、若干低く見積もられていると考えてもらえればと思う。

本作は、例えば

  • 「SRPG的に面白いボス」が飲みなおしの前にあり、目先のボスか成長かが酒飲みにおけるトレードオフになっている
  • 一回の探索がコンパクトで、ステラの供給が絞られて乱数管理の役割が強くなる
  • これらによって、「何」を「いつ」飲むか?にゲーム体験のキモがある

みたいな塩梅であったら、素晴らしい化学反応だっただろうなと思っている。
そして、そんな意味不明なバランス感を「ガレリア」なんかではやってのけたので、
きっといつかはやってくれるという願いを込め、ぜひとも2を出してほしい作品だ。

 

個人的お勧め度: ★★★★✩✩✩✩✩✩(4/10)

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