ディスガイア5 ver2.0 ― 魔界戦記ディスガイア7(レビュー)
早すぎた原点回帰。
[タイトル]
魔界戦記ディスガイア7 [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★Nintendo switch / PS4 / PS5
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
40時間程度 / ストーリークリア & エンドコンテンツ50%くらい
はじめに
本ブログではおなじみ日本一ソフトウェアの看板タイトル、ディスガイア。
今回レビューするのは、その最新作であるディスガイア7だ。
5から6はかなりの間があったが、7は二年での発売とかなりのハイペースである。
極限のやり込み……という名の、ハクスラチックな作業。
それを売りとした本シリーズは、インフレする数字を楽しむニッチなゲームだ。
なんというか、自己満足で無双して悦に入るという罪深いゲームでもある。
前作6は、その「ちまちました作業」を全て「自動戦闘」で排除した。
その結果、虚無感漂う残念な出来になってしまった。
本作7は、その反省を活かしつつも、シリーズにあった導線の弱さにテコ入れしている。
ディスガイア7では、そのような部分がどう変わったのか。反省は、活かせたのか。
さっそく、見ていくとしよう。
なお、ランクバトルについては一切触れていないのでご了承願いたい。
また、軽量設定であれば携帯モードでもswitchの動作に問題は無かった。
いつものディスガイア
大量の育成要素。古のオタク向けっぽいストーリー。ハチャメチャな戦闘。
このあたりのめちゃくちゃ感は、従来のディスガイアと全く変わらない。
チマチマと作業をして、ステータスをインフレさせる。
インフレしたステータスで敵をワンパンして気持ちよくなる。
そういう、大味だが爽快感のある「いつものディスガイア」だ。
ディスガイア6のような、「無味乾燥な」ディスガイアではない。
しっかりと「作業」は必要だし、その作業ありきの「爽快感」がある。
この辺りで6に失望した人には、「全く問題ない」と自信を持って言える出来だ。
ディスガイアの問題点に、どうアプローチしたか
以前、個別に記事に起こしたように、6を除いてディスガイアは「路頭に迷い」やすい。
そして7では、これらの問題にしっかりとアプローチをしたように思える。
一応ざっくり記事の趣旨をまとめてしまうと、主に以下の三つから来ている。
- 育成要素が多すぎる
- 育成要素のとりかかり方次第で、効率差が著しくなる
- 次のマイルストーンが提示されない
以上のことから、目標から手順まで全てが投げっぱなしにされる印象があった。
次のボスの存在そのものが提示されず、目標が無い。
そもそも次にどの育成から手を出せばいいかが分からない。
手探りでレベリングをした結果が、要素開放後の10分にすら満たない。
こういった、「何をすればいいか分からない」上に「失敗が虚無感漂う」問題があった。
これに公式が(破滅的な)回答として出したのが、ディスガイア6ではあった。
今回は、割と無難にここにアプローチしたように思える。
ということで上記3点について、評価をしていきたいと思う。
育成要素が多すぎる
まず本作の育成要素であるが、かなり簡略化されている。
簡略化というよりは、大胆に削除されているといった方が近い。
例えば、「キャラ界」や「魔チェンジ」といった要素は削除されている。
だがこれらの要素は、極限までやり込む人を除けば、重要な要素ではなかった。
また、エキス強化の要素も削除され、6で登場したドリンクバーとなっている。
これも同様、特定ポイントに到達するまでは大事な育成要素ではなかった。
本作はこういった「下手に手を出すな」がセオリーになる育成を、大胆に削除している。
結果として、戦力的な増強がしっかり見込める要素にのみ、プレイヤーは集中出来る。
プレイヤーに見える選択肢は、「キャラの転生」か「アイテムの転生」になったように思う。
育成要素のとりかかり方次第で、効率差が著しくなる ー 要素統合編
ここは個人的には感心した変化であり、かなりいい設計であると考える部分だ。
この部分に関する変更は、主に2か所ある。
まずは、「統合」の過程にて、「裏技的な必須要素」が改善された点について書く。
例えば昔は、「経験値増加屋」という、経験値を20倍にもする要素が存在していた。
これは「イノセント」という、見逃しがちな部分に隠れた重要要素であった。
普通にやっていたら気付きにくいし、気付かないととんでもない時間を無駄にする。
例えば昔は、「アイテム神から上位アイテムが盗める」という要素があった。
普通は敵のステータス欄なんて確認しないし、「盗む」を使う人も少ないはずだ。
だがこれを行わないと、いつまでたっても最強アイテムは手に入らない。
例えば昔は、「アイテム複製」という要素があった。
アイテムをなんと複製できるというめちゃくちゃな要素なのだが、ほぼ裏技だった。
味方キャラクターのコピーが出る専用エリアなどで、「盗む」ことが必要だった。
そしてこれらは、形を変えて「アイテム転生」や「アイテム界」に実装されている。
アイテムに付くプロパティで倍率は強化出来るし、転生時にランクが上がる。
複製は、普通に「複製屋」という形で分かりやすく存在している。
要は、「必須要素」を、必ず目に付く場所に持ってきているのだ。
だから、プレイヤーは自然な形でその手段を知る事が出来るし、理解が出来る。
導線としてはしっかりできているし、それでいて「要素」が減ったわけではない。
育成要素のとりかかり方次第で、効率差が著しくなる ー 失敗に寛容である、ということ
効率差が著しくなる部分については、凡そ上記の統合で解決されている。
だが本作は、さらに「バックアッププラン」までもが存在している。
それが、今回追加された「自動周回」と「アイテム探索」だ。
この「自動周回」だが、アイテム転生に勤しんでいるとリソースが手に入る。
自動周回は既成ステージにしか利用できない為、アイテム転生には利用できない。
それゆえ、キャラクターのレベリング部分で大いに活躍する要素だろう。
次に「アイテム探索」は、これはステージ攻略を行うと自動でアイテム探索をしてくれる。
自動周回/手動周回問わず、ステージクリア単位で攻略をしてくれる。
そしてこれらが、相互の「バックアッププラン」として機能している。
効率の悪いレベリングをしていたとしても、アイテム探索は進む。
効率の悪いアイテム転生をしていたとしても、レベリングリソースが手に入る。
こういった理由から、ディスガイア7では「無駄な育成」に陥りにくいし、失敗に寛容だ。
両方の育成要素で盛大にコケない限り、最低限の進捗は発生してくれるのだ。
次のマイルストーンが提示されない
最後にマイルストーンに関してだが、今回はかなり丁寧になった。
例えばシリーズでは、「オマケ要素をコンプリートしたら裏面開放」みたいな伝統があった。
今回は、こういった「マスクされた開放要素」は存在しない。
また、以前のように「突き放される」ということもない。
以前は、特定の段階で「バカげたように敵が強くなる」ことが多々あった。
その結果として、途方もない目標を提示されて困り果てる、ということがあった。
だが今回は、そこそこの目標設定でクエストが発行される。
このあたりの設定はかなり小刻みであり、次の目標を見失うことはほぼ無い。
そして育成方法についても、先程述べたように迷いにくくなっている。
それでも、ディスガイア6ほど「これをしろ」と、過度に具体的にはなっていない。
ある程度、主体的に育成をしようと思わせてくれる、ギリギリの塩梅だ。
上記のことから、ディスガイア7はシリーズの問題点についてかなり真摯に向き合っている。
その回答はどれも申し分ないし、攻略を見ずとも問題ないバランスとなっている。
プレイヤーに寄り添った、作業ゲーとしての素晴らしい導線が準備されているのだ。
「いつもの」ディスガイア
先程「いつものディスガイア」である、と述べた。
それは文字通りそうなのだが、今回はその「いつもの」が、古く感じる。
というのも、今作は「ディスガイア1~3」くらいに感じるのだ。
昔のディスガイア……つまるところ、アイテム界にひたすら潜るゲーム。
今回は要素統合の影響もあり、そのような印象を特に強く受ける。
そのプレイ感は、「1」とか「2」に近いものであった。
そして、ストーリー展開もそうだ。
いつものディスガイアなのだが、今回は特に「昔のディスガイア」な印象を受ける。
ここは言語化出来ないのだが、「教訓めいたお涙頂戴」から「活劇」に戻った感じだ。
兎に角、シリーズ経験者からすると今回は文字通りの「原点回帰」に感じる。
いつもの、が最高な訳じゃない
まず、私はナンバリングタイトルは全てプレイしている。
その上で言うのだが、「いつもの」が「最高」というわけではない。
本作の育成要素は全て、「5」と「6」をベースに統合されたものだ。
それは似通っているというレベルでなく、ほぼほぼ同じだ。
特に「5」をプレイしていれば、育成の最適解など一瞬で分かるだろう。
推測で申し訳ないのだが、恐らく各種計算式から全くもって同じレベルだ。
確かに導線を引いたことにより、攻略に頼らずじっくり楽しめるようになった。
だがこれは、悪く言うなら「ディスガイア5にただ導線を引いただけ」なのである。
全く同じ育成要素に、育成パターンに、スキルセット。
それは「アイテム転生」などといった風に、名前は変わっている。
だがそれは「使い回し」と捉えられてもおかしくないくらい、「本質的に同じもの」だ。
例えば、シリーズには「戦略」が存在しないという問題があった。
だが新要素はこれを改善するものではなく、依然として「ワンパンゲー」だ。
キャラ転生も、アイテム強化も、ひたすら同一作業をするだけの「作業ゲー」だ。
自動戦闘メインにすることで、「戦略」を作る事も出来たかもしれない。
「冒険メシ」くらいオプションを盛れば、流行りのハクスラっぽく出来たかもしれない。
武器種やステータス自体にテコ入れをし、プレイスタイルを変えられたかもしれない。
今回は、こういった「本質的な部分」に、全くと言っていいほど変化が無かった。
寧ろディスガイア6の方が「挑戦的」であり、今回はかなり「保守的」な印象を受けた。
総評
これは、ディスガイア5に導線を引いただけのゲームだ。
ディスガイア最新作としての「革新」は、存在しない。
ディスガイア6にあった「挑戦」も、存在しない。
確かに、「いつものディスガイア」がやりたい人にとっては、とても良いだろう。
確かに、「ディスガイア新規」にとっては、とても良いだろう。
要素の纏まった5に導線を引いたのだから、単体で見たら「シリーズ最高傑作」だろう。
だが、ディスガイア5から何年が過ぎたのか?
もっと言うと、ディスガイア1から何年が経ったのか?
ディスガイア「7」にもなって、初代レベルにまで「回帰」するのか?
だからこそ、私個人としてはとても「残念」ではあった。
確かに出来は良いし、完成度も高い。それは否定しない。
だけど、ニッチなジャンルで少数相手に「いつもの」を細々やる、のは「残念」だ。
とはいえ、個人的には「ディスガイア6」の「やらかし」に対する回答な気もしている。
信頼回復のための、過度に「原点回帰」で「保守的」な作品なのかもしれない。
勘違いして欲しくないのだが、なんだかんだ普通に楽しめたことは確かだ。
「シリーズ未経験者」や「過去作をまたやりたい人」には、かなりお勧め出来る。
だが「進化したディスガイア」がやりたい人には、全くお勧めできない。
どこまでいっても、これは「導線を引いたディスガイア5」なのだから。
個人的お勧め度(未経験者): ★★★★★★★✩✩✩(7/10)
個人的お勧め度: ★★★★✩✩✩✩✩✩(4/10)