効率化の最果てにある、虚無 ― 魔界戦記ディスガイア6(レビュー)
ゲームは虚構であっても、虚無であってはならない。
[作品名]
魔界戦記ディスガイア6(PS4) [公式サイト]
[プレイ時間/進行度]
20時間程度(実操作時間)/裏ボスクリア/トロコン未達成
概要
僕が大好きなインディーゲースタジオ日本一ソフトウェアの
看板タイトルであるディスガイアシリーズの最新作だ。
いわゆるタクティクスRPG、という分類になるだろうか。
本シリーズは、圧倒的やりこみ、はちゃめちゃな世界観と
かわいいキャラデザインが人気であると言えよう。
本作はその「圧倒的やりこみ」を現代的な「自動戦闘」で解決させ、
新たな面白さを追求しようという試みがなされている。
しかし、従来シリーズの要素との調和がとれておらず、それは「虚無」だった。
ディスガイアの戦略とは、ビルドである
ディスガイアシリーズのファンであれば、答えは明白だろう。
このシリーズに戦略性などあったものではない。
兎に角インフレするステータスで、圧殺するかされるか。
それ以外の戦略がないのはこのシリーズ「あるある」だ。
ただ、従来のシリーズでは「幅」があった。
例えば「特定のスキルを組み合わせて圧殺」とか「特定行動で圧殺」とか
圧殺する方法や圧殺までのビルドに遊びがあったのだ。
戦略的にかなり大味だからこそ、なんでも許される。
ステータスを鍛えれば、どんなビルドでも「産廃」にはならない。
そういった「いい意味での」大味さがあった。
だが、今作はそういった「幅」がない。
取れる行動の幅やビルドの幅が狭く、「圧殺」という「結果」だけが目立っている。
このシリーズにおいて「どう圧殺するか」を考える余地がないのは致命的である。
激減した要素やりこみ要素
まず、本作のやり込み要素であるが、
従来のシリーズに比べ、相当な要素が削られている。
半分以下といっても差し支えないレベルだろう。
これが前述の「圧殺の幅」を殺しており、
ただただ「ステータスを上げる」だけになってしまう。
「ステータス上げ」以外の「思考の余地」がないのである。
どうステータスを上げ、どうやって組み立てるか。
その設計こそがやり込みと育成のキモであり、
それが出来ないのはデザインに大きな問題があると言って差し支えないだろう。
見えてしまう「最適解」
本作のやり込みの「ソフトキャップ」はかなり明確である。
ここでいうソフトキャップとは、「一時的な成長上限」である。
スマホゲーとかにおける上限解放的なやつを想像して欲しい。
本作では、特定の条件を達成した瞬間に成長速度と上限が一気に上がるが、
その「特定の条件」がシステム上普通に可視化されている。
このソフトキャップ開放を優先しないと、効率は大幅に低下する。
それが可視化されているなら、育成の道筋すら選択肢が無くなってしまう。
実際、どんなやり込みゲーにもそういうソフトキャップはある。
だが、それは可視化されていないし、試行錯誤をして辿り着くものである。
だからこそ、選択肢があるように「感じる」のだ。
本作は、意図せずとも答えが「見えてしまう」。
そして自動戦闘が加わり、虚無が生まれる
このゲームの肝にして、すべてを破壊した要素。
本作では、簡易なAIを組み、自動で戦闘させることができる。
また、自動で周回させることもできる。
まず、このシリーズに戦略は無い。
ステータスで圧殺するだけで、そのステータスの上げ方で勝負するシリーズだ。
なのに、上げ方が「放置」でほぼ100%対応出来るとなったら、どうなるだろうか?
答えは明白だ。全て放置で解決するのだ。
前述のソフトキャップや、育成の幅の問題も相まって、
「何も考えずにソフトキャップまで放置」してから「キャップ開放」をするだけ。
そのクリア後のような「圧倒的効率厨プレイ」に、恐らく大半の人が行きつく。
「大半の人が行きつく」のが問題である。
攻略の幅が無く、試行錯誤もなく、実操作もない。
極めて効率的であるが、果たしてそれはゲームなのだろうか?
総評
効率化を極めた先の、虚無。
ゲームとは、恐らく「選択」の連続である。
その「選択」が難しいほど、やりがいがある。
その「選択」をすべて奪ったのがこのゲームだ。
巷ではクソゲーなどと評されているのも仕方がない。
だが、挑戦自体はとても好意的に受け止めている。
本シリーズは恐らく3作目程度から既に頭打ちになりつつあり、
ここまでゲームを破壊しかねない要素を入れたのは勇気ある行動に思う。
個人的には、戦略要素を少しだけ強くして(バフ、デバフとか状態異常とか)
自動戦闘におけるAIをもう少し幅を持たせれば面白そうな印象を持っている。
基本的に戦闘は大味なんだけど、自動戦闘やビルドに頭使うことで裏技的に強くなる。
戦闘はシミュレーション、戦略は自分で考える。
そんな大味シミュレーションなら、是非やってみたいと思う。
そういった意味で、次回作には少し期待できる。きっと、素材は悪くなかったのだ。
個人的お勧め度: ★★☆☆☆☆☆☆☆☆(2/10)