世間的な「日本一らしさ」への「裏切り」 ― ファントム・ブレイブ 幽霊船団と消えた英雄(レビュー)

「やりすぎ」といいつつ、まさかの「戦略的RPG」。


[タイトル]
ファントムブレイブ 幽霊船団と消えた英雄 [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ
★PS5 / Nintendo Switch / PS4

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
40時間くらい / ストーリークリア(30時間)、難易度てごわい


はじめに

今回も全国の日本一ファンの皆様お待たせしました!人柱の時間です!

ということで恒例の日本一ゲーの発売日買いということで、
今回レビューしていくのは「ファントム・ブレイブ」の二作目になる。
数十年前のipを引っ張り出してきて、主人公続投の続編という作品だ。

親愛なる日本一ファンの諸兄はこう思ったかもしれない。
「ディスガイア見限ったのか?」「新規ip戦略辞めたのか?」
「過去作をそのまま主人公続投で?」「うおおおおおおおお」と。

私は、「うおおおおおおお」以外は思ったのだが、なんと本ipは未プレイなのだ。
だから、果たしてどんなゲームなのかと期待していた部分がある。
あの日本一がわざわざip引っ張り出してきたのだから、何かあるのだろう、と。

その上で、本作の公式サイトは複数ページで構成されている。
どういうこと?と思うかもしれないが、日本一は1枚LPが基本なのだ。
つまり、予算が他作品よりある、ということなのだ。

少し脇道に逸れたが、さっそくレビューに移っていこう。

 

「やりすぎ」なのに、戦略性が高い

「日本一ソフトウェア」の「やりすぎ」と聞いたら、もうインフレを想像するだろう。
戦略性皆無で、ゴリ押して気持ちよくなる作業ゲー。これがもう定番だ。
なのだけど、本作は以外にも戦略性が高い。それも、SLGとしてはかなり高い

ということで本作の戦略性要素について、要素別に評価していこう。


コンファイン: 配置数の戦略性

本作はユニットを出撃する代わりに、マップ上のオブジェクトに召喚する形になっている。
そして、対象オブジェクトによって強化されたり、特殊効果が付いたりする。
で、この要素は、なんだかんだ「そこそこ」戦略性がある。

というのも、オブジェクトの数によって召喚数に疑似制限がかかるからだ。
それに加え、オブジェクトを「(事実上)生成」するような行動も存在する。
なので、ユニットを配置するプロセス自体に思考の余地がある。

また、オブジェクトの配置が悪く、敵陣にオブジェクトがあったりもする。
そういった場合は、雑に召喚すると駄目になるようなことも多々ある。
ただ逆に、敵陣ど真ん中だと強くなるようなスキルもあるため、戦略性がある

 

パッシブ: 移動のトレードオフ 

次に大きいのが、ほぼ全キャラに存在するパッシブスキルだ。
本作のパッシブスキルは少し特殊で、効果範囲が常に変動する。
それも、「移動したぶん」だけ効果範囲が「減る」ようになっている。

これの何が面白いかというと、「雑に移動すると効果外」になる。
そして本作のヘイト管理スキルは全てパッシブとなっており、重要度が高い。
即ち、雑に行動するとヘイト管理から外れてしまうため、陣形の維持が必要になる。

 

リムーブ: 無双抑止と移動への牽制

その上で、これらをまとめ上げるのが「リムーブ」という「召喚ターン制限」だ。
この存在が、要素をまとめ上げてトレードオフを成立させている。

まず、「強キャラで無双」という「抜け道」を抑制しているのは言うまでもないだろう。
ターン制限があるのだから、当然1キャラに頼った編成は困難になる。

そして、この「ターン制限」があるからこそ、「パッシブ」が活きる。
攻略ターンを節約するには、より移動する必要がある。
だが、移動しすぎると、パッシブ範囲外になってしまう。

これにより、「どこまでリスクを取って進むか?」という問いが常に発生するのだ。

 

絆コンファイン: 戦略的無双

更にもう一つ大きい要素として、絆コンファインがある。
このシステムは、主人公が特定の味方キャラと合体し、複数行動できるものになっている。
ただし、行動が終わったら合体キャラは戦闘中再出撃できない

当然このシステム、複数回行動できるのでめちゃくちゃ強い。無双できる
と思いきや、無双するには「強いキャラ」と合体しないといけない。
というのも、ステータスが合体キャラに依存するからだ。

ある程度ターン経過させた強いキャラを「再利用」するなら、ロスはない。
だが、初動でボコられないように使う方が遥かに重要であるがために、
「強キャラの前借り」といった形に落ち着くことが多かったりする。

なので、ディスガイア7の「弩デカマックス」などより、遥かに戦略的だ。
その上で、ただ「デカいだけ」のものと異なって、強キャラを複数行動できる。
プレイフィールとしても「無双」になるので、使っていて心地が良い


総合して、本作の戦略性は作品の第一印象とは裏腹に、意外なほどに高い
そして、これらの要素はかなり早い段階から解放されていく。
だから、後半からやっと……みたいなことはなく、「基本」だというのも大きい。

 

宇宙とまではいかないが、面白いビルド面

本作におけるビルド面は、「そこそこ」面白い。
「ガレリア」や「シカトリス」には及ばないが、一定の面白さや、ワクワク感はある。

本作のビルドは、「特定の装備」や「特定の役割/戦術」にフォーカスしたものが多い。
だから、どちらかというと「ビルド」ではなく「編成」に近い部分がある。
例えば「吹き飛ばし系」のキャラを複数組み合わせるとか、そういう感じだ。

特に、スポット運用で光るようなキャラクターもいるため、試したいことは多い。
「周りが敵だらけだと強い」キャラをスポットで運用するとか、
「一回限りのヒーラー」キャラとか、「合体用のスポットキャラ」とか、アイデアは多い。

その上で、育成コストは限りなく低い
だから、そういった意味で「編成を楽しむ」余白は十分にあると言ってよい。

ただ、裏を返すと「時間をかけてビルドを完成させる必要がない」ということでもある。
なので、「そこそこ」面白い、という印象だ。めちゃくちゃな深み、はない。
ちなみにこれは戦略性や編成とのトレードオフなので、善悪というよりは方向性の話だ。

 

戦略性を維持するために

先程から、編成や戦略性の評価が高い、という話をしている。
ただこれは、ひとたびインフレしてしまえば、全て崩れてしまう。
そして本作には無数の強化要素があり、この時点で黄色信号が灯る

なのだけど、本作は意外にもインフレしない
というのも、本作の強化要素は基本的に「レベル」でスケールする。
だから、経験値を管理しさえすれば、大きくインフレしないのだ。

どういうことかというと、例えば「合成」という例を挙げよう。
本作には装備を強化する「合成」という要素があり、二つの装備ステータスを合算できる。
そして合成にはマナというリソースを消費するが、消費量にレベル補正がある。

この補正は、レベルに見合わないステータスを超えると著しく重くなる
もちろんそのコストを見繕って、見合わない装備を作ることもできる。
ただ、本作は「1キャラで無双するゲーム」ではないから、費用対効果が悪い

なので結果的に、全ての装備はレベルに依存した一定水準に落ち着いてくる。
だから、インフレするように見えて、インフレがあまり発生しないのだ。
そして、要素を強制しないように自作80%くらいの品もドロップする

ただこれは、諸刃の剣でもある。

裏を返せば、レベルを上げたら過去の自作品はドロップ品に負けてしまう
そしてこれは装備以外も例外ではなく、強化要素は基本的にこうなっている。
だから、これらの要素を「あえて」やる意味があまり感じられない。

もちろん、ある程度自作はする。メインキャラくらいは。
ただ、ディスガイアのように、脇道に本気で取り組むインセンティブはない。
だから、せっかく要素としてあるのに、どうしても「流して」しまいがちだ。

 

インフレの始まりと、ゲームの終わり

じゃあインフレのない戦略ゲーなのか、というと、そうでもない
当然インフレ要素はある。それは、エンドコンテンツに現れる

このゲームのエンドコンテンツは、ランダムダンジョンだ。
ひたすら潜って、ひたすらレベルを上げて、ひたすら強化する。
いつもの日本一、といえばわかりやすいだろう。

ただ、本作はエンドコンテンツに大きな欠陥を抱えている。
それは、「エンドコンテンツが面倒」に感じるというところだ。

前述の通り、本作の強化はレベルに大きく依存している。
それは、エンドコンテンツであっても例外ではない。
だから、エンドコンテンツも「レベルを上げる」ことが中心となる。

そして、ちゃんとインフレが制御されているからこそ、戦略性がある。
インフレしたダメージを与えはするものの、ちゃんとタンクしないと死ぬ
ストーリーよりも召喚数が厳しいエリアがあったりして、頭を使う

「え、それの何が悪いの?」と言われると、別に悪くはない。
悪くはないんだけど、かみ合っていない

結局、戦略性はあるといっても「ランダムダンジョン」だ。
ストーリーのように、ちゃんと設計されたマップではないのだ。
だから、一定のパターンで攻略が確立してしまったら、煩わしさが残ってしまう。

その上で、本作には演出スキップが存在しない。
だから、「作業」なのに「大変」で「時間がかかる」のだ。
これが、本当にもったいない。

例えば、最高レアの武器を手に入れたいとする。
その場合は、最高ランクのダンジョンの踏破が必要になってくる。
その最高ランクのダンジョンは……100階くらいあるのだ。

そしてこの100階は、1回10秒で消化できるディスガイアと違う。
丁寧にやる必要があり、無双が出来ないこのゲームでは、一階5分くらいかかる。
これを、ひたすら踏破しないといけないのか?と、どうしてもなってしまう。

私はあまりにも作業感が強く、途中で辞めてしまった
せめて演出スキップがあれば、インフレを楽しめたかもしれないのだが……。

 

総評

やりすぎRPG。日本一。インフレ。
はいはいいつものね。と思いきや、まさかの骨太SLG

そういった意味で、あえてipを復活させた意味も分かる。
ここまでゲーム性が異なるのであれば、その判断にも頷ける。

ただ、インフレを楽しむにはもう少し「やりすぎて」欲しかった。
でもインフレしたら、このゲームのいいところはなくなる。
だから、それでいいのだ、とも思う。ただやっぱり、演出の倍速やスキップは欲しい

総合して、「意外と骨太なSLG」と「素質を問うやり込み」が合体したゲームだろうか。
まあ、ストーリー部分のバランスと戦略面はとても良く出来ていたし、
戦略寄りのゲームが好みならば、普通に楽しめる良ゲーだろう。次回作が楽しみだ。

ただディスガイアみたいな「やりすぎ」を求めているなら、注意が必要だ。
個人的にはディスガイアより圧倒的に「日本一らしい」気もしたので、おすすめではある。
というかディスガイアは自動戦闘に振り切ったほうがいいような……これはまた別の話。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★☆☆☆☆(6/10)

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