日本一ソフトウェアに見る「令和のやり込み」論 ― ディスガイア6は、本当にクソゲーだったのか?

最近、ディスガイア7の体験版が出ましたね
僕はまだプレイ出来ていませんが、本発売がとても楽しみです

みなさんインディーゲースタジオ日本一ソフトウェアをご存知でしょうか?
チープな低予算感溢れるゲームを多く発売する会社ですが、アイデアはS級です
アイデアがハマるかどうかでクソゲーか神ゲーかの振れ幅がすごい会社です

レビューを見て頂ければわかるように、僕は日本一のファンです
インディーより大きい規模で、アイデア勝負で「インディー」しているからですね
強気なフルプライスの地雷を踏み抜くのがクセになってきています

日本一ソフトウェアといえば、ディスガイアを代表に「やり込み」で有名になりました
ですが、「令和」のやり込みは「平成」のものと大きく変える必要があると思います

というのも、ゲームを取り巻く環境が大きく変わったからですね
「平成的」なやり込みは、「令和」では通用しないとさえ思います

ということで、細かく見ていきましょう

 

対象となるゲーム

まず、今回の前提を定義していきたいと思います
実は、なんだかんだ昨今の多くのゲームは前提から外れるのではないかと思います
今回の対象となるゲームは、以下の要件を満たすものになります

一つ目は、「オフラインのゲーム」が今回の対象という事です
オフラインと言いつつも、「オンライン」的な競争がある場合は除きます
自分のペースで、ゲームを進めることを大前提とする訳ですね

二つ目は、「やり込み」に「ゲーム上の目標が与えられる」ことです
例えば、ダークソウルのRTAなんかは今回の対象外です
これには、ゲーム的なマイルストーンが存在せず、自ら目標を創造していますよね?

要は、「完全オフ」のゲームであり、「特定の目標」を与えられるゲームが対象です
こう考えると、私が「日本一ソフトウェアを通して」とした理由が分かるかと思います
日本一ゲーは、オフラインでレベリングをする「ハクスラ」的な物が多いですからね

また、「ハクスラ」と「(日本一的な)やり込み」の定義は極めて近いような気がします
あえて「ハクスラ」とタイトルに銘打ったのもこのためです
イメージが難しい方は、「ディアブロ」のような自己満足ハクスラで考えてみて下さい

 

そもそも、やり込みとは何なのか

そもそも、やり込みとは何なんでしょうか?
僕が思うにそれは、究極の自己満足みたいなものです

いくらマイルストーンが与えられているとはいえ、社会的に価値が無いですからね
ゲーム内のレベルをいくら盛ったとしても、リアルのレベルは下がるだけです
では何故、その自己満足を続けられるのでしょうか?

それは、簡略化された課題解決のプロセスとして、非常に優れているからです
例として、「特定のボス」という「マイルストーン」が与えられているとしましょう

プレイヤーは、その目標を達成するためにどうすれば良いか考えます
スキルを変えるのか。レベルを上げるのか。アイテムを強化するのか。
仮説を立て、それを実行し、ボスに挑んで検証するのです

ここで大事なのは、「マイルストーン」「仮説の多様性」「実行コスト」です
マイルストーンが遥か遠くにあったり、仮説検証に時間がかかればプレイヤーは折れます
仮説が簡単に立てられるならば、わざわざ時間をかけて仮説検証する意義を疑います

丁度よい位置に、丁度よい時間で、丁度よく難しい課題がある。
これが、「やり込み」が面白くなるための条件では無いでしょうか?

 

情報化による、攻略情報の氾濫

本ブログでは、過度な情報化は悪みたいな話をよくしています
今回のケースも、この過度なネット社会における弊害を発端とします

今の時代、特定のゲームについて調べたりした場合どうなるでしょうか?
youtubeやgoogle様のサジェストに、とんでもない数のお勧めが出るでしょうね
その多くは、最短最速で攻略するための情報なのは言うまでもありません

それを目にしてしまったら、前述の「やり込み」の要素バランスが崩れます
最短最速で行われることを前提としていないなら、「ゲームバランス」は崩壊します

他社のゲームで申し訳ないのですが、エルデンリングってありましたよね
初期のころは「霜踏み」などという強力な戦技が多く存在しました
また、多くのレベリングスポットが用意されていたように思います

これらを、自力で発見して活用した人はとても気持ちよくなれたでしょう
用意された仮説検証プロセスを、綺麗になぞることが出来たからです
ですが、情報に触れてしまった場合は、そのように受け取ることが出来ません

もっと言えば、他の解決方法は大きく霞み、自らの仮説が無価値に感じるでしょう
ネットの性質が変わったからこそ、ここに向き合わねばならないのです

 

三要素で分析する日本一ゲー

ここからは、以後の議論の為に、「やり込み3要素」で分析をします
三要素は先程述べた「マイルストーン」「仮説の多様性」「実行コスト」です

「マイルストーン」は、ゲームが与える目標設定です
そればボスかも知れませんし、特定レベルかも知れません
適切に設定出来ているほど、プレイヤーは安心して課題解決に取り組めます

「仮説の多様性」は、プレイヤーの解決手段の多さです
特定のマイルストーンを達成する際、取れる選択肢の広さを指します
例えば、有効なスキル組み合わせが多いならば、自力解決の回答を増やせます

「実行コスト」は、プレイヤーが解決手段を実行するためのコストです
仮説検証をする際、準備などにかかる実行コスト(=時間)のことです

これらを軸に、各作品の特色を見て分析していきます

 

ディスガイア5は、本当に最高傑作か?

諸説あるかも知れませんが、ディスガイア5は評価が高いかと思います
というのも、複雑なシステムが成熟し、ひとまとまりとして調和しているからです
シリーズ集大成、というような「安定感」のあるゲームとなっています

ですが、これって本当に「最高傑作」なのでしょうか?
私は、「平成の最高傑作」であって「令和の最高傑作」ではないと考えています
というのも、三要素で分解すると「粗」があるからです


マイルストーン

ディスガイア5の「マイルストーン」は、とても雑です
イベントの発生条件や、修羅への突入条件などの多くはマスクされています
また、シリーズ通例とはいえ、修羅突入後のマイルストーンは遥か遠くに感じます

実行コスト

「実行コスト」ですが、これも一概に良いとは言えません
「LV99を倒すと経験値爆増」みたいな仕様や、経験値倍増を前提としています
効率的なレベリングをしないと、実行コストがかなり高くなる設計なのです

仮説の多様性

それに対し「仮説の多様性」については、とても評価が高いと感じます
数多くの強化要素や、スキルの組み合わせが存在します
多くのやり込み要素のうち、全てを必須としてはいません


本作を普通にやっていたら、レベル上げの効率の悪さに辟易とします
効率的なレベリングをした場合、本来の5~10倍で上がりますからね
「裏技」的なレベリングをすると、今までの努力が「無駄」に感じてしまうでしょう

そして、マイルストーンはとても雑です
マイルストーンの足がかりとなる、ボスの存在すらが分からなかったりします
また、修羅みたいな馬鹿みたいに先にマイルストーンを感じるような場面もあります

これらを解決したのが、当時のインターネットです
当時のインターネットにおける攻略情報は、push型ではなくpull型でした
勝手に与えられる(push)のではなく、自ら探さないと取れない(pull)ものでした

いろいろ試行錯誤して、でも効率が上がらない。
攻略に行き詰まってしまったので、pull型で情報を検索する。
その「攻略情報を探す」という行為そのものが、課題解決プロセスに組み込めたのです

ディスガイア5を令和に出していたら、このようなスタイルは取れません
解決したい場所以外の全てをネタバレされてしまい、すべてを台無しにされます

では、一切共有せずにプレイしたらどうなるでしょうか?
余りにも不親切で、多くの人は折れてしまうでしょう
「課題解決プロセス」に「情報共有」が自然と存在するのが、「平成的」なのです

 

ディスガイア6は、本当に駄作か?

レビューでも述べていますが、ディスガイア6自体はクソゲーでした
ですが、本当に無意味な駄作だったか?というと、際どいところがあります
有意義な挑戦作であり、評価されて然るべきものだと感じます

ということで、三要素を見ていきましょうか


マイルストーン

ディスガイア6の「マイルストーン」は、極めて過保護です
全ての要素の発生条件はほぼ公開されており、事実上のキャップとして設計されています
マイルストーン数や個数は、過去作と比べ大きく乖離はしていない印象です

実行コスト

「実行コスト」ですが、本作にも裏技的な仕様は存在します
裏技的な行為をした方が遥かに効率は良いものの、必須ではありません
というのも、そもそも放置が全てを解決してしまうからです

仮説の多様性

「仮説の多様性」については、酷い結果となっています
スキル数の少なさや、選択肢の少なさや、マイルストーンの固定化。
これらにより、攻略順や手法はほぼ固定化されてしまっています


こう考えると、やっぱりクソゲーなのでは?と思いましたか?
いやまあディスガイア6はゲームとしてクソゲーなのは認めます
ですが、試みはとても「理に適っている」のです

ディスガイア5を令和に出したら、成立しないという話をしました
攻略断ちをしたら進まないし、攻略を見たらネタバレされるからですね
その点、ディスガイア6はその問題点にアクセスしようとしています

マイルストーンを過度に設定したのは、目標設定を明確にするためでしょう
過去シリーズの「次何するの?」を、攻略情報に頼らず完結させようとしています

実行コストは、「裏技的な稼ぎ」と「それ以外」の格差を解消しようとしています
裏技的なことをしないと時間がかかり、裏技を知ったら今までの行動が無駄になる。
そういった喪失感を抑えるために、「自動周回」で解消を図ったのです

問題は、これら2点のアクセスが「補助」の役割を大きく超えてしまったことでしょう

サブクエスト的な「補助的マイルストーン」であれば、違ったかも知れません
補助的マイルストーンをこなすうちに、本筋のマイルストーンに気付けるからです
それならば、「レールの上を走らされている感」を大幅に軽減できたはずです

自動周回も、それが全てでなければ違ったかも知れません
効率的な周回に対して、自動周回が無条件に効率的すぎました
一日中放置が12時間、余暇にプレイが3時間とするならば、効率はそれに準ずるべきでした

ディスガイアを「令和向け」に調整しようとしたのは確かです
上手く行かなかっただけで、アイデアも狙いも非常に素晴らしいものだったと思います

 

なら結局、何が良いのか?

ここまでをまとめつつ、いろいろな日本一作品の良い部分を上げていきます
その結果として、私の思う「令和のやり込み像」が見えてきそうです

まず、今までのまとめとして、今の攻略情報はpush型です
過度なpush型攻略情報に触れてしまったら、「ネタバレ」となってしまいます
オフゲーに求められるのは、攻略を一切見ないでも独創性が持てることと考えます

ということで、三要素ごとの僕の理想的な解釈を考えていきます


マイルストーン

マイルストーンでプレイヤーを安心させるには、長期と中期が大事でしょう
「長期」は、「全体像」の把握になります
ゴールはどこで、それを実現するための要素は何があるのか、です

最終的な着地点について……例えば、修羅については「見せる」べきです
その上で、そこに到達するためのサブクエスト的なものを設定するのです

例えばディスガイア6の「特定レベル達成」は、悪いものではありません
ただそれが、ソフトキャップとして機能しているのが問題でした
それを達成しないとキャップが開放されない、と「見せて」いなければ良いのです

「屍喰らいの冒険メシ」は、この設定はかなり良かったと思います
特定階層という節目が分かりやすく設定されており、ゴールが最初から明確です
また、詰まった際もレシピや調合が「サブクエスト」的に機能しています

また、「冒険メシ」の良いところは「アイテム」のランダムオプションでしょう
ハクスラの代表的な手法ではありますが、固定部分と乱数部分を配合しています
装備強度を長期的に見れば綺麗な右肩上がりですが、短期ではメリハリがあります

この「メリハリ」の「上振れ」が出る、というのを短期マイルストーンと出来ます
このような「見えない」短期目標を作れると、目標を見失わずに済むように思います


実行コスト

「実行コスト」については、実を言うと「価値観」の問題でもあります
どこまで作業を耐えられるか、は好き好きであり、「タメ」の時間でもあります
ですから、その価値観には触れず、大事な事についてだけ言及します

その大事な事とは、「実行コスト」の「徒労感」を無くすことです
なんだかんだ、実行コストで「ズル」したくなるのは、徒労感が大きいと考えます
苦労してレベリングしたけれども、実は一瞬で上げる術があったなら嫌ですよね?

ですが、ゲームデザイン上は「ソフトキャップ」を設けるのは当然ですよね
特定条件でのソフトキャップが無ければ、攻略ペースの管理は極めて困難です
ですから、「ソフトキャップまで最高速」以外は「事実上は徒労」なのは確かです

そこで役に立つ要素の一つとして、「最高速」との「速度差」の調整があります
例えば、「ガレリア」なんかは良いバランスで提供されています
効率的なレベリングスポットが多くあり、無理なく発見することが出来ます

この場合は、誰がどうやっても「最高速」の8割くらいの効率は出せます
この程度であれば、徒労感を感じるような効率差にはならないでしょう
自動周回も、調整次第では問題なくこの「ズレ」を補填できたはずです

もう一つの要素として、絶対にズル出来ない「非キャップ依存」要素があります
これは「冒険メシ」の基礎ステータス上昇やスキルレベルが挙げられます
インフレと無関係な、手間比例の要素を持つことで徒労感を軽減させられます


仮説の多様性

「仮説の多様性」については、これはもう「ガレリア」が素晴らしかったですね
強い組み合わせを多く用意しており、弱い組み合わせとの差を大きく設定していました
要素ごとのシナジーを強力にしており、最適なものを探せという方向性ですね

そして、「最適解を100」「強いのは70」「弱いのは20」くらいが良さそうです
最適解と強いものの差異は少なく、そして弱いもとの強いものの差異は大きくします
これにより、最適探求の圧力を軽減しつつ、シナジー探索の動機/報酬を作れます

「ディスガイア6」なんかは、この要素の失敗例でしたね
純粋に組み合わせのパターンが少なく、試行錯誤が出来ませんでした

正直言って、この「多様性」について、具体的にこうしたらいいとは言えません
というのも、ガレリアみたいな素晴らしいレベルデザインの源泉が不明だからです
上記の「100/70/20」のバランス感を実現するための手段は、分かりません


とまあ、こんな感じでしょうか?
このような条件を満たせば、オフラインで完結する神ゲーになる予感がします

 

番外編:オンラインハクスラの場合

ここまで、オフラインのゲームについてお話してきました
では、オンラインの場合はどうでしょうか?

皆さんお察しの通り、オンラインの場合は「足並みを揃える」ことが前提になります
オンラインは疑似的な競争であり、攻略の完了が前提になるからです
攻略情報を見たプレイヤーと一緒にプレイするには、同等の進捗が必要になります

一緒にやるプレイヤー全員が攻略をトレースしないならば、回避は可能でしょう
ですが、多くのプレイヤーはそのようなコミュニティでゲーム出来ないでしょう
昔のモンハンなんかは、友人で持ち寄りプレイしていたので自然とこうなりました

オンラインの場合、結果としてゲームの攻略(消費)ペースが大幅に早まります
三日も立てば、全クリまでのフローチャートが企業wikiに乗ります
それは前提となり、廃人でもない限りは最短で追いつく同調圧力を受ける形になります

それ故に、オンラインの場合はオフラインと設計を変えるべきだと考えます
オンラインの場合は、「試行回数」を増やし、最短最速でプレイされる前提とすべきです
そして、そもそものハクスラ自体の試行難易度を上げるべきだと考えます

要するに、最適化されても時間がかかるようにしろ、という事です
Darkest Dungeonなんかも、オンラインだったら丁度良かったかも知れませんね
やった事はありませんが、Dark and Darkerってこんなノリな気がしています

兎に角、オンライン化は「最適」以外の遊び方を排除する圧力を孕んでいるのです

 

おわりに

ということで、今回の記事は終わりです
ざっくりまとめると、こうなります


  • 今のネットは「pullからpushになった」
    • 結果として、「push」がネタバレとなるためネット断ちが必要
  • やり込みの肝は、「マイルストーン」「仮説の多様性」「実行コスト」
    • これらをバランス良くすることで、快適な課題解決プロセスを提供する
  • 平成は、「pull」による攻略共有が「課題解決プロセス」に組み込めた
    • 令和では、それをすることが出来ない
  • それ故に、情報に頼らないように整備する必要がある
    • 3要素を適切に設計し、攻略断ちを無理なく実現させられるようにするべき
  • オンラインは完全に別物で、逆に最適化を前提とするべき

まあこれは一プレイヤーの勝手な意見に他なりません
ただ、僕は「平成的な名作」と「令和的な名作」に大きな隔たりがあると思います
「課題解決プロセス」に「情報共有」を組み込めないのが、「令和」なのです

ディスガイア7がそろそろ発売されますが、果たしてどうなるでしょうか?
ディスガイア6の問題へのアプローチが的確であったが故に、とても期待しています

まあ逆に爆発四散する可能性もあるのが面白いところですよね
当然人柱になるので、本記事の答え合わせはレビューでお会いしましょう
とはいえ、発売日にレビューを書くようなエアプのゴミ人と比べると大分遅くはなるでしょう

最後に身も蓋もない事を言いますが、ディスガイアに本記事の問題点はあまり関係ありません
というのも、普通にインプレッションが見込めるタイトルでは無いからです
インディーの規模感であれば、昔のノリで情報接種をすることは十分可能です

とはいえ、シリーズが人気になった場合は必ず起きることでもあります
避けられない事象ではあるが故に、そういった方向への転換は避けられない気もします
この規模感でずっと行く、というのも選択としてはアリだとは思いますけどね

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