進化を重ねるゲームプレイ、そして ― MONSTER HUNTER RISE(レビュー)

退化を続けるプレイ環境。


[タイトル]
モンスターハンターライズ [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC / ★Nintendo Switch

[プレイ時間/進行度] ※レビュー時点
70時間 / 一通りクリア ※2022/2月時点のバージョン


はじめに

今回レビューするのは、あの国民的大人気タイトルの最新作である「MHRise」。
前回のPSハードと異なり、今回は任天堂ハードでの発売となった。
2022年にはSteam版が発売され、続編の発売も予定されている。

本作は、強大なモンスターをじっくり時間をかけて倒す「アクション」としての面白さと、
装備を鍛えて強くなる「ハクスラ」的な面白さを兼ね備えたキラータイトルだ。

やはりシリーズを重ねた重みがあるからか、盤石な出来であった。
純粋に良く出来ているし、隙がない。
時代による「残念さ」はあったものの、名作といっていいだろう。

そんな、モンスターハンターライズのレビューをしていこう。

 

原点回帰」なアクション

モンスターハンターシリーズは、割と明確なターン制アクション“だった”
モンスターの攻撃は苛烈で、回避に専念するのがよい。
モンスターの後隙は長く、そこで攻撃するのがよい。

そんなモンハンシリーズのアクションを大きく変えたのが、前作のMHW(IB)だ。
より「自然な動き」になるよう、モーションや後隙が曖昧になったのだ。
その結果、「ターン」の境界はかなり分かりにくくなった。

だが、実際はアクションゲーの例に漏れず「ターン」である。
だからこそ、MHWはアクション面でかなり難しいシリーズだったように思う。
「ターンの認識」こそが攻撃と防御の基礎的な攻略だからだ。

対して今回のRiseは、モーションや後隙がかなりマイルドになった。
「自然な動き」を維持する方向ではあるが、観察不足でも攻撃の隙はある程度ある。
これにより、練度が低くとも時間をかければ攻略が可能だ。

もちろん、ちゃんと観察しないと効率的に討伐することは出来ないだろう。
重要なのは、「討伐に必要な最低ライン」が下がった事であり、
「完全攻略に必要な練度」はある程度高いままである、ということだ。

 

「進化」したアクション

MHRiseで特に優れているのが、ほぼ全武器が「ターン」を無視できることだ。
今回追加された専用ゲージを用いた技が、相手の攻撃への「カウンター」になるのだ。
欲張って攻撃してしまったとしても、カウンターを使うことで返すことができる。

従来のシリーズでは、「ターンの解像度」がかなり必要だった。
良く分からないまま攻撃すると、簡単に被弾してしまうからだ。
だから、まずは「観察」を中心とした「消極的な攻略」が必要になる。

だが、カウンター行動によってこれは一変した。
とりあえず観察しつつ攻撃して、危なそうならカウンターを構えればいいのだ。
ゲージがあるうちは保険が効くが故に、「積極的な攻略」が可能なのだ。

このゲージは被弾時に受身として使うこともでき、かなり重要なテクニックでもある。
だから、カウンターを構えた積極的な攻略にリスクはある。
だが、毎回「我慢」から入らなくていい……つまり、気持ちよく攻略出来る。

これらの要素により、MHRiseのアクションはかなり良い設計だ。
最低限必要な練度は下げつつも、浅くなり過ぎない工夫がされている。
ストレスフリーで、それでいて「攻略」する気になれるモンハンだと感じた。

 

「MHW」と「旧作」のいいとこ取りなマップ

本作のマップは、前作MHW同様にシームレスなマップとなっている。
高低差が強く、広大で探索しがいがある。
マップ単体で見た場合に、その探索性の高さには目を見張るものがある。

だが、前作MHWには一つ重大な欠点があった。
純粋に「探索性が高いマップ」は、広大で複雑に入り組むことになる。
だから、繰り返しクエストをするには移動が面倒になるのだ。

それに対し本作は、「高低差」で「探索性」を作った。
モンスターが徘徊するエリアは、基本的には平地で分かりやすい。
逆に、立体起動で行けるエリアは複雑で探索性があるのだ。

だから、戦闘フィールドとしての機能性と、純粋な探索性が両立している。
高速移動手段が増えたことも相まって、マップデザインはかなり優れている。

 

現代的な環境が、優れたゲームを劣化させる

ここまでほぼほぼ高評価なこのゲームだが、一つだけ問題がある。
それは、情報化社会における環境の変化だ。
モンハンに限った話ではないのだが、モンハンはコアの部分が影響を受けた。

まず、マルチプレイのプレミア感が大幅に減少した。
このシリーズが流行った当初はPSPによるオフラインマルチ全盛期であった。

一人では倒せないから、集まってゲームをする。
「実際に集まり」「共闘する」。
これはゲームでしか出来ない体験であって、プレミアな体験だった。

だが、今のマルチプレイにプレミア感はない。
誰でもワンボタンで見知らぬ誰かと共闘出来るし、どこかに赴くこともない。
本シリーズのマルチプレイは「効率的なプレイの延長」になってしまったのだ。

 

次に、攻略情報が可視化されてしまった。
本シリーズの面白さは、「仲間内で攻略して」倒すところにあったと思う。
皆で同じ課題に立ち向かっている団結感が、また貴重な体験だったのだ。

だが今は、どんな些細なことでもすぐに動画サイトで提供される。
自分で攻略することもないし、仲間で一緒に攻略することもない。
前述の要素と合わせると、「みんなでレールに乗った作業をするだけ」になるのだ。

 

この二つの問題は、ジャンル問わずどのゲームにも見られる。
結局、情報化社会において「最適解」が提供されてしまうことによるものだからだ。

思うに、ゲームとは「簡略化された課題解決の快感を得る仕組み」なのだ。
そして、PSP時代のモンハンは「オフライン」ゆえに絶妙だった。
ゲーム内容よりも、「仲間内で考えて共闘する」という体験に本当の価値があったのだ。

 

総評

本作は「史上最高」と考える人と、「駄作」と考える人で二分されている印象だ。
私の感覚としては「隙が無い名作」と評価するのが適切なように思う。
よく言われる「ボリューム不足」や「難易度低下」は、受け取り側にも問題があるからだ。

普通にやって50時間。全DLCソロでやり込むなら100時間。TAするなら数百時間は遊べる。
敵味方問わずモーションは多種多様だから、アクションを突き詰めるのはかなり難しい。
だが、「効率マルチ周回して最強装備を作る」には10時間あれば十分だろう。

今のゲームは、攻略サイト通りに効率プレイをするのが常識になりつつある。
その前提で考えるならば、確かにボリュームや難易度に課題はある。
マルチゲーで「自分だけの楽しみ方」を貫き通すのは困難であるのも一つの事実だ。

だから、”シリーズが流行った当時の環境であれば”名作だ。
マルチプレイに価値があり、攻略も手探りな環境。
それを自分が構築できるかどうかが、本作の「面白さ」のコアなのかもしれない。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★★☆☆☆☆(6/10)
個人的お勧め度: ★★★★★★★★★★★(10/10) ※環境を用意できる場合

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