50倍に薄めた苦汁 ― Darkest Dungeon(レビュー)

ただ、苦汁を飲むのが好きな人もいる。


[タイトル]
Darkest Dungeon [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC / PS4 / PS Vita / Nintendo Switch / iOS / XBox One

[プレイ時間/進行度] ※レビュー時点
10時間/ラスボスちょい前くらい(未クリア)


はじめに

今回レビューするのは、ハードコアローグライク(?)RPGの。
非常に難易度が高く、攻略の緊張感がウリとなっている。

本作はローグライク系の例に漏れず、ダンジョンやアイテムはランダム生成される。
また、キャラクターの強化状態は持ち越せるが「ロスト」するのを前提としている。
新規キャラの作成時は進行に応じて強化されるため、ややローグライトに近い設計だ。

最初のプレイ時間に燦然と輝く「未クリア」の文字が最早ネタバレになってしまっているが、
もはやすべての要素が苦痛でしかない、というのが率直な感想だ。
ということで、詳しく書き殴ってレビューしていこう。

 

「取り返せるもの」を失う虚無感

このゲームにおける「死(全滅)」は、とても当たり前のものだ。
相手の攻撃がクリティカルしようものなら、すぐ壊滅するだろう。
それゆえに、ストレスフルな「死」の扱いこそが、このゲームの根幹だろう

ではそもそも、「死」に緊張感があり、スパイスとなりうるのは何故か?
その答えは、欲の代償で「取り返せないものを失うから」だ。

良く出来たローグライクでは、運よく組み立てられたビルドを。
良く出来たDRPGでは、ランダム生成された素晴らしい報酬を。
そういった「取り返せないもの」を失うからこそ、冷静さを欠いてはいけない。

 

確かに、このゲームにおける死はとても苦痛だ。
全滅したら、その冒険の報酬はもちろん死んだキャラクターを全て失ってしまう。
そこからリカバリーするには、キャラクターを再雇用して鍛えなおす必要がある。

ただ、このリカバリーの過程が実に下らないのだ。
ただ再雇用し、ただ難度の低いダンジョンから順に丁寧に攻略すればいい。
時間を投資さえすれば、失ったものは安定して取り返せるのだ。

だから、このシステムに良い意味での「緊張感」はない。
二度とない幸運を失うのではないからだ。
その死が齎すのは「緊張感」ではなく「時間の喪失」であり、「苦痛と虚無感」だ。

 

因みに、最高難易度ではクリアに日数制限がある。
この場合は死が「意味のあるもの」になるが、
難易度設計があまりにも理不尽だったため、一般的なプレイヤー向けではないだろう。

 

意味のないローグライト要素

このゲームでは、基本的にキャラクターがロストする想定で設計されている。
だから、再雇用したキャラクターは進行に合わせ基礎値が強化される。
いわゆるローグライトな仕上がりであるが、そこに意味がない

このゲームには、ランダムな要素やカスタマイズ要素がほぼ無いからだ。
ランダム要素で自己強化が出来ないため、ロスト後の復元の確度も高い
それすなわち、リセットやらロストやらさせる意味がないのだ。

結局、先程言った内容と被る。
ローグライトとして洗練されていないから、ロストに重きを置いても面白くないのだ。

変数の少ないゲームでの「なんちゃってローグライト」は、B4Bに通ずるものがある。
これではゲームとしての面白さより、「延命」に近い効果を与えているに過ぎない。

 

変わり映えのしないゲームプレイと進行の遅さ

そして、最後にのしかかってくるのがこれだ。
このゲームは、まったくと言っていいほどゲームプレイに変化がない。
基本的には「拠点強化」→「ダンジョン攻略」→「ボス攻略」のループだ。

それは普通のゲームでもそうでは?と言われれば、確かにそうだ。
だが、普通のゲームはこれらの要素に変化を入れてくる。
以前高評価したガレリアなんかはその最たる例で、新要素をガンガン使わせてくる。

 

だがご想像通り、このゲームにおいてそれはない。
拠点強化はただただ「数字が増えるだけ」で、要素はずっと変わらない。
ダンジョン攻略におけるギミックなどはなく、横移動で全て完結する。

だから、「最初の1時間」と「最後の1時間」で、やっていることに変化が一切ない

 

そして、追い打ちをかけるようにレスポンスがあり得ないレベルで遅い
ずっと移動しないといけないのに移動はあり得ないくらい遅いし、
戦闘で1ダメージ与えるだけで3秒くらい演出が入る

前述のロストも相まって、あり得ないくらい進行が遅い
これはあえて書くくらいで、マジの本当の本当に進行が遅い
この伝説的なまでの遅さは逆にやる価値があるかも知れないレベルだ。

補足として、このあたりのスピードはMODで3倍速くらいには出来る。
普通のRPGの最初のダンジョンを10時間かけて攻略するところが、
MODでは3時間で済むくらいになりとても快適だ。もはや必須だろう。

だが、冷静に考えるとそれでも異常なほど遅いのは間違いない。

 

総評

あまりにも薄い。
あまりにも意味がない。
あまりにも苦しく、虚無そのものだ。

正直、一週1~2時間くらいのローグライトに再編成した方が良かったのではないか。
内包しているコンテンツ量が、そもそも50時間もやらせるように出来ていない。

これはつまらないだけの「ただのクソゲー」なんかでは決してない。
これは「50倍に薄めた苦汁」なのだ。

 

でも、勘違いしないでほしい。
これはとても尖っている。尖り過ぎている。
その尖り方が、致命的に僕に合わなかっただけだ。

これだけの苦汁、好きな人には堪らないだろう。
ただただ、常軌を逸した苦さなのだ。

 

個人的お勧め度(バニラ): ✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩(0/10)
個人的お勧め度(高速MODあり): ★✩✩✩✩✩✩✩✩✩(1/10)
個人的お勧め度(総合): ✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩(0/10)

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