いつもの味付けで頼む。 ― 屍喰らいの冒険メシ(レビュー)

ディスガイア風味でお間違い無いでしょうか?


[タイトル]
屍喰らいの冒険メシ [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PS4 / PS5 / Nintendo Switch

[プレイ時間/進行度] ※レビュー時点
45時間 / エンドコンテンツクリア(EASY) ※ストーリーは30時間強


はじめに

今回紹介するのは日本一ソフトウェアの最新作「屍喰らいの冒険メシ」。
古典派(?)ローグライクをメインのゲームシステムとし、
そこに「飯」というアレンジを加えた作品となっている。

本作のコンセプトは「冒険メシ」から始まるアイテムシステムの改革だろう。
限定的な用途になりがちなアイテムを、文字通り何にでも使えるようにする。
そうすることで、アイテムに絡む行動全てにトレードオフを発生させようというのだ。

とはいえ、そのコンセプトが成立するのは要素が開放されきった終盤からだ。
ゲームプレイの大半はいつもの日本一ハクスラに落ち着いてしまったきらいはある。

だが、非常に光る部分が多い作品だった。
ローグ”ライト”としても、タクティクスとしても、ハクスラとしても、だ。
やはり、このあたりのゲームデザインの上手さは日本一ならではだろう。

ということで、詳しく見ていくとしよう。

 

探索から戦闘まで、シームレスで超快適

屍喰らいの冒険メシでは、基本的にはフィールドを探索して戦闘しつつ先に進んでいく。
それゆえに、当然ながら戦闘とフィールド探索の快適さが重要になってくる。
本作の良いところとして、これが非常に快適だ。

本作のフィールド探索は3Dで、戦闘はシンボルエンカウント方式だ。
シンボルエンカウントといってもシームレスに戦闘に移行するため、かなりテンポがいい。
戦闘速度も倍速にすることができるため、そういった意味でも快適だ。

また、戦闘はテクティクスであってもその煩わしさがない。
マスとして移動を指定するのではなく、フィールド操作と同じ感覚で操作するからだ。
最終的にマスで判定して不整合なら行動を決定出来ない、という造りだ。

これは今までやったタクティクス系の中で抜群に操作性が良かった。
一番多く繰り返される営みが快適であることは非常に評価が高い。
正直、これを今後のタクティクスの標準にして欲しいくらいだ。

 

玉石混交のローグ”ライト”要素

本作は、ローグライトとして次回探索で有利になるような要素がある。
失敗しても次はちょっとボーナスがあるから諦めないでね、って話だ。

本作のローグライト要素は、大きく3つ。
装備の引継ぎ/スキルの熟練度/冒険メシによるステータスの微増だ。

まず、キャラの熟練度と冒険メシのステータス増強はかなり絶妙だ。
武器は使い込むと僅かに与ダメージ補正が入り、飯は食べる度に基礎ステが僅かに伸びる。
気付かない程度というのが大事で、「今回は上手くできた」という「有能感」を感じられる。

それに対して、装備引継ぎはややハクスラチックだ。
といいつつも、中盤くらいまでは「いいオプションが付いたから更新する」レベルの塩梅だ。
そこからは抜本的な更新が前提となってきて、ハクスラ感が強くなる。

色々触れたが、なんだかんだ(終盤を除けば)ここのバランスは良い。
オプションの強さも、かなり尖りつつバランスを崩壊させないレベルだ。
Loop Heroのようなローグライト的な課題も無く、成長度合いもかなり絶妙だ。

 

古典派(?)ローグライク

本ゲームの目的は、10階層単位に居るボスを倒すこと。
そのために、ギリギリまでパーティーを強化しながら準備をしていく。

だが、当然ずっと戦闘しっぱなしなわけにはいかない。
「カロリー/水分」というリソースがあり、これを定期的に補充しなければならない。
これらのリソースは、スキルの使用やそもそもの自然消耗が設定されている。

回復には道中で取得出来る食材を用いる。
だから自然と、食材を稼ぎつつぎりぎりまでレベル上げ→ボス戦という形になる。
これはローグライクというジャンルでいうとかなり古典派(?)な内容だろう。

本作は、その古典派ローグライクにおけるリソースを統合しようとした。
それを踏まえた上で、以降のレビューを読んでほしい。

 

冒険メシという「成長」とのトレードオフ

本作には「冒険メシ」というシステムがある。
これは階層を移動する際に使用できるコマンドで、食材を消費する。
メシを食べることで、リソースを回復しつつステータスアップ効果が得られる。

これはいわば、「成長」と「今楽をする」ことのトレードオフだ。
実は食材は戦闘アイテム/お助けアイテムとしても使用でき、階層攻略の助けになる。
アイテムを温存して頑張るほど、以後の攻略が楽になるという感じだ。

また、メシでどのステータスが強化されるかは食材の組み合わせによって異なる。
だから、「どの食材をどの料理にするか」で成長傾向に変化が付けられる。
今回の旅路での強化に加え恒久的なステ底上げにも影響するため、料理の選択がカギになる。

のだが、本システムには致命的な問題が二つある。
そもそも「アイテムとしての使用」があまり有用ではないことと、
狙ったステータスを上げるような料理を作るのが終盤まで難しいことだ。

だから、残念ながら前提が破綻してしまっている。
コンセプトは面白いのに、冒険メシはトレードオフとして成立していない。

 

危険を冒す、というトレードオフ

ローグライクでは、探索の刺激としていくつかの要素がある。
本作でも例に漏れず、「モンスターハウス」や「エリート種」のような要素がある。
これは全滅のリスクを天秤にかけることで、大きな報酬を齎すものでもある。

だが、これも本作では上手い事機能していない。
理由は二つ。

一つ目は、倒した時のリターンが危険度に見合わなさすぎること。
例えばエリート種は倒したところで普通のモンスター数体分のリターンしかない。
基本はリスクを取らずに通常種を狩る方が良い、というのが実情だ。

二つ目は、シンボルを避けるだけで戦闘を簡単に拒否出来ることだ。
シンボルに当たった場合は戦闘になるのだが、力量差が大きい場合は瞬殺される。
ターンが来ることなく即死するので、「試しに戦闘」みたいなことは出来ない。

だから、「今なら戦えるかもしれないから試しに戦う」という挑戦をする必要はないし、
「出くわしてしまった場合を考えないと……」という緊張感もない。
基本的にダッシュで逃げろ、それだけのゲームプレイになってしまっている。

 

屍喰らいという「リソース」とのトレードオフ

本作には「屍喰らい」というシステムがある。
これは、戦闘中に倒した敵の死体を食べることで戦闘中にバフがかかるシステムだ。
屍喰らいを使用した場合は、当然食材は回収できない。

つまるところ、これも「食材」というリソースと「戦闘バフ」のトレードオフだ。
……のだが、やっぱりこれも機能していない。

雑魚戦では、1戦闘が非常に短い&強敵は避けるためバフを盛る必要が無い。
ボス戦では、屍喰らいにターンを消費してる余裕は無いし、
そもそもボス戦に限り屍喰らいをしても食材を通常と変わらず入手できる。

だから、やっぱりこのシステムを使う必要がない。
ボス戦で使うとしても、それは実際のところただのバフ魔法と大差ない。

 

カロリーとスキル消費のトレードオフ

本作では戦闘スキルを使用すると、カロリーや水分を消費する。
つまるところ「戦闘を無難にこなすこと」と、「探索持続性」とのトレードオフだ。

そんでまあ、ここまで読んでいれば分かると思うが、
このシステムも(ド終盤まで)トレードオフとして成立していない。
スキルでのカロリー消費が軽微であるため、ほぼほぼ無視できるのだ。

だが、終盤の特定エリアの場合は話は別だ。
マップ特性により、スキルの消費量が最大で4倍近くになる。
ここまで来ると無視できないレベルの消費量となり、トレードオフは成立する。

 

すべてが成立するエンドコンテンツ

ここまで聞くと、リソースのトレードオフに悉く失敗しており
「結局コンセプト崩壊してるじゃねーか」って印象を受けるのではないだろうか。
実際その印象は外れではなくて、ほぼほぼそういう認識で構わない。

だが、エンドコンテンツだけは違う。

 

エンドコンテンツまで行けば、エリート種を倒した時のリターンが大きくなる。
エリート種は高確率でレア食材をドロップするが、それを使ったレシピが開放されるのだ。
このレシピはステータスを大きく底上げしてくれる、非常に強力なものだ。

エンドコンテンツ……というか終盤くらいまで行けば、アイテムは有用だ。
アイテムを使った稼ぎが出来るようになったり、エリートと戦う理由が出てくるからだ。
そして冒険メシのレシピは爆発的に増え、強化ステータスも選べるようになる。

エンドコンテンツまで行けば、屍喰らいは使えなくもなくなる。
敵の数が非常に多いマップが増え、1戦闘が長くなる場合があるからだ。
それでもそこまで強くはないが、使う理由くらいにはなる。

エンドコンテンツまで行けば、スキル消費は計画的にする必要が出てくる。
カロリー/水分消費の大きいマップがランダムで混ざるようになるからだ。
消費の大きいマップでスキルを連発してしまうと、そのまま全滅しかねない。

 

……のだが、エンドコンテンツはガレリアよろしくステータスがインフレしてくる。
だから、ローグライトとしての完成系が見えてるにも拘わらず、その土俵で遊べない。
ハクスラとして面白いが故に、ローグライト要素が死んでしまうのだ。

 

総評

序盤はローグライトで始まり、中盤からハクスラになるゲームだろうか。
終盤にはローグライトとして完成するものの、ハクスラ感が強く残り過ぎる。
とはいったものの、ハクスラとしてのクオリティは普通に高い。

正直、エンドコンテンツから引き算でゲームを作ったような印象を受ける。
それほどまでにエンドコンテンツ段階でのコンセプトとの適合は見事だと感じた。
その段階では完全にハクスラに倒れてしまうのが問題なのだが。

 

ハクスラとして楽しむなら、難易度はEASYにするのがお勧めだ。
ローグライトとして楽しむなら、攻略見ながら前半だけHARDだろうか……?
エンドコンテンツから本気を出す、という形でもよいだろう。

私はNORMAL→後半からEASYにして、10-20階層程度で小まめに帰還する形で攻略した。
それなら、ローグライト的なところとハクスラ的なところが両立しやすいはずだ。
装備更新は最低限でいいし、作業になりがちな長時間潜りでのバフ盛りを制限できる。

次回作では、エンドコンテンツの塩梅で装備のハクスラ感を薄めて作って欲しい。
本作のコンセプト体現における「惜しさ」は尋常ではない。

 

とはいえ、いつもの日本一ハクスラとして楽しむ分には全く問題はない。
寧ろ「ディスガイア6」より「ディスガイア」している気さえする。
日本一のハクスラ作りの上手さが、良くも悪くも出てしまったというところか。

 

個人的お勧め度(ストーリー範囲): ★★★★★✩✩✩✩✩(5/10)
個人的お勧め度(エンドコンテンツ付近): ★★★★★★★★✩✩(8/10)
個人的お勧め度(総合): ★★★★★★★✩✩✩(7/10)

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