これはドキュメンタリーか、現実か。 ― Sid Meier’s Civilization VI(レビュー)

ゲームは、ドキュメンタリーであるべきだ。


[タイトル]
Sid Meier’s Civilization VI [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC / Nintendo Switch / PS4 / Xbox One / iOS / Android

[プレイ時間/進行度 / DLC / MOD ] ※レビュー時点
30時間程度 / 最低難易度クリア(複数指導者でプレイ)/ DLCなし / UI系MOD導入


はじめに

シヴィライゼーション……通称civは、大人気戦略シミュレーションシリーズだ。
今回レビューするのは、その最新作であるcivilization 6だ。

洋ゲーの、それも長寿シリーズの、それも戦略シミュレーション。
辟易するくらいの「骨太感」が、ここから既に漂ってくるレベルだ。
その第一印象の通りに、とにかく「重厚」で「マニアック」なゲームだ。

ここまでの長寿シリーズの根底にある面白さとは、何なのか。
シミュレーションゲームの面白さとは、何なのか。
こういったところを絡めて、レビューしていこうと思う。

 

壮大な「人類史」シミュレーション

civ6の基本的なゴールは、自らの文明を発展させて他文明を蹴落とすことだ。
他文明を全て滅ぼしても良いし、宗教統一で世界を牛耳ってもよい。
内政、外交、戦争、宗教、科学といった豊富な手段で、世界一になれば勝ちだ。

だが、本作の最も魅力的な部分の一つは、人類史の追体験が出来ることだ。
civ6では、文明の発展と共に時代変遷が発生する。
時代変遷と共に軍隊や建造物、はたまた社会制度などがアップデートされる。

シミュレーションとして、最初から最後までやる事は似通っている。
だが、「文明レベルの変化」という要素があることで、盤面の変化は大きい。
そういった意味で、最後までその「壮大さ」に漬かりながらプレイ出来る。

 

これは、ドキュメンタリーである

前述の「壮大さ」を形作るのは、ただ「時代変遷」があるからではない。
それは、節目に入る「ナレーション」がとても素晴らしいからだ。
このナレーションがあるお陰で、「我が文明ドキュメンタリー」のような感覚がある。

例えば、核に関する技術を習得したとき、こう流れる。

「原子には手を出すな。」 – E・Y・ハーバーグ

これは、洋ゲーにふさわしく「皮肉めいていて」「大げさで」「少しくどい」。
だが、civ6においては逆にそれがいい
このわざとらしさが、圧倒的な「ドキュメンタリー感」を生み出している。

世界遺産を建造したときも、技術を習得したときも、なんでもそうだ。
だから、ただゲームを進めているだけでも面白い。
このナレーションを聞きながら文明を作るだけで、没入できる。

 

悲惨なUI/UX

civ6のUIは、とにかく酷い
とにかくごちゃごちゃしているし、何がなんだか分からない。
MODもある事にはあるが、それでもそこまで改善しない。

最も致命的なのが、マップの見辛さだ。
本作は、シミュレーションよろしくマス上にマップが区切られている。
プレイヤーはそこに建造物を建てたり、ユニットを配置したりする。

なのだが、あまりにもごちゃごちゃしていて全容を把握し辛い。
ここに建造物があるのか。そもそもどんなマス属性なのか。ユニットはいるのか。
こういった戦略設計に必須な要素が、あまりにも視認し辛い。

だから、普通に確認するだけでも時間がかかるし、疲れる。
誤操作も当たり前のように発生するし、それをキャンセルすることも出来ない。
ゲームプレイは、常にストレスと隣り合わせだ。

 

「難しさ」と「小難しさ」は違う

civ6における戦略要素は、「小難しい」。
これは、「難しい」とか「複雑である」とは一線を画す。
一言で言うと、兎に角「理解に苦しむ」のだ。

例えば、ユニットの移動を挙げよう。
各ユニットには移動力というパラメータがある。
とりあえず今ここに、移動力が4あるユニットがあるとしよう。

普通に考えれば、4マス移動出来るものだと考えるだろう。
だが、本作はマスごとに属性があり、移動力の消費数が少数単位で異なる。
また、移動後の行動そのものに移動力を消費する仕様になっている。

なのに、1ターンで移動できる範囲をUIが表示してくれない。
だから、行動指定した後に「何故か移動出来ない」し「何故か行動出来ない」こととなる。
そしてその「何故」を、プレイヤーが確認したり気付けるようなデザインになっていない。

移動に限らず、本作の「戦略」はゲーム内で完結できず、攻略情報に頼る他ない。
デザイン上気付くのが極めて難しい概念は、マスクパラメータと大差ない。
戦略ゲーにおいて、重要な要素が事実上のマスクパラメータであるのは致命的だ。

 

一番楽しいはずの部分が、一番面倒である

そもそも戦略ゲーの定石とは何か。
私はジャンルにあまり明るいほうではないが、こう考える。
「序盤は緻密に立ち上がり」「中盤に重要な判断をし」「終盤はウイニングラン」だ。

だから、序盤は複雑かつ煩雑であるほうが面白い。
だから、中盤は判断そのものに注力したほうが面白い。
だから、終盤はただ結末を眺めていられるほうが面白い。

だが、civ6は時間経過とともに操作量が加速度的に増える。
占領した敵地の内政や、戦争時のユニット操作などが多くなるからだ。
そしてそれは、序盤のような重要な操作ではなく「ただの作業」である。

それ故に、プレイ時間と共に面白さと進行スピードが大きく失速していく。
余りにも膨大な作業クリックが、面白さを致命的なまでに削いでしまっている。

 

総評

素晴らしい表現と、劣悪な戦略要素。
なんというか非常に惜しい、というのが率直な感想だ。
とはいえ、シリーズの「人類史シミュレーション」の素晴らしさは体感出来た。

civ6のナレーションが齎す「我が文明ドキュメンタリー」感。
これは、ゲームならではの表現と言っても差し支えない。
それくらい、表現や世界観に関する部分の出来は良かったように思う。

 

「冒険メシ」のように、素晴らしいUI/UXがあれば評価は全く異なるものだったろう。
それくらい、このドキュメンタリー風表現には価値がある。
戦略より表現に興味があるなら、お勧めは出来るかもしれない。

 

ドキュメンタリーは、刺激的ではない部分を削ぐ。
現実は、見たくない部分までもが混ざっている。
であれば、本作は「ドキュメンタリー」ではなく「現実的」なゲームだ。

ゲームは、ドキュメンタリーであったほうがよい。
面倒な作業は、全て自動化されて然るべきだ。
仕組みの読解そのものに調査を要するのも、「リアルすぎる」のだ。

 

個人的お勧め度(戦略): ✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩(0/10)
個人的お勧め度(表現): ★★★★★★★★✩✩(8/10)
個人的お勧め度(総合): ★★★✩✩✩✩✩✩✩(3/10)

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