「B級ゲー」という「世界観」 ― HunterX(レビュー)

ふざけるな。いや、ふざけてるからいいのか?


[タイトル]
HunterX [公式サイト] ※steamリンク

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
12時間 / ストーリークリア


はじめに

HunterX……と聞いて、どう思うだろうか?
なんだこのふざけたタイトルは?と思わないだろうか?
一周回ってかっこいい……訳でもないよな?

名前からして香ばしい本作は、所謂メトロイドヴァニア系のゲームだ。
2Dのエリアを探索し、二段ジャンプなどの移動スキルを各地で手に入れる。
それをもって探索エリアが増え……というタイプのゲームだ。

本作は、一言で言ってしまえば「B級を極めたゲーム」である。
良くも悪くも、B級のゲームだ。
だが、それでいいと思えるような、許せてしまう仕上がりとなっている。

ということで、レビューをしていこうと思う。

 

メトロイドヴァニアのツボ

メトロイドヴァニア系のツボとは何か?
これには諸説あるだろうが、本作を分析するならば下記の3項目が良いと思う。
「探索」「アクション」「アイテム収集/ビルド」だ。

この3要素について、HunterXは「そこそこ」の点数を出している。
ということで具体的に、各要素について解説していこう。


探索

本作の探索に、残念ながら「目新しさ」や「特別優れた点」は無い。
Ender liliesのような「探索とバックストーリーの連動」はほぼほぼ存在しない。
Hollow Knightのように、段階的に探索をさせるデザイン的な秀逸さもない。

だが、最低限は揃っている。
二段ジャンプなどの、お約束な移動スキル。そして、移動スキルによるエリア再訪問。
そこそこ便利なワープゲートや、探索度合いがしっかりと分かる正確なマップ。

そして、逆に致命的な欠陥はほぼ無い。
一つ、導線が絶対に分からないレベルのものが存在した以外は、分かりやすい。
Salt and Sacrificeのように、探索の面白さを破壊するような要素も無い。

これらのお陰で、探索は極めてストレスフリーで、なおかつ普通に楽しい。
サクサクと探索出来るし、何があれば先に進めるかもなんとなく分かる。
特に優れてはいないが、普通に楽しいのだ。


アクション

本作のアクションは、とってもチープだ。
チープ……というのは、いろんな意味で「チープ」な印象を受ける。

まず、通常動作については「攻撃」「溜め攻撃」「ジャンプ」がある。
防御系動作は「ガード」「パリィ」「回避」で構成された「いつもの」だ。
そして、特殊ゲージ系動作については「必殺攻撃」と「オカルト(魔法)」がある。

普通にこれを聞いて、感じた印象と実装の温度感は同じだ。
本当に、普通のメトロイドヴァニアにおける普通のアクションを網羅している。
……では、何がチープなのか?

それは、モーションとバランス調整がとっても乱雑に感じるからだ。
溜め攻撃は(溜めているにもかかわらず)通常攻撃とDPSはたいして変わらない。
ゲージ系行動は、ゲージを使う割にはそこまでのDPS向上は無い上に、硬直がやや長い。

モーションについても、特段滑らかでも無ければ美しいエフェクトがある訳でもない。
こういった理由で、地味な通常攻撃と各種防御動作を行うだけのゲームプレイになりがちだ。
それが、普通に安っぽく、地味なゲームプレイなのだ。

なのだが、本作にはとてもいい点がある。パリィがめちゃくちゃ気持ちいい。
特大のヒットストップに、やたら派手なSE。そして、気持ちの良いダメージ量。
この「動かしていて気持ちいい感」については、トップクラスの出来栄えだ。

チープでB級な印象は、絶対に拭えない
それでも、普通にプレイしていて気持ちいいという「最重要項目」は満たしている。


アイテム/ビルド

まず初めに、私はビルドには主に2方向あると考えている。
「対策をする」という「相手方向」のものと、「好みを作る」という「自分方向」のものだ。
これらが二つとも出来るのであれば、それはとても自由度の高い素晴らしいゲームだ。

HunterXには、ステータス配分やスキルツリー取得の要素がある。
魔法ステータスを伸ばすのか、攻撃を伸ばすのか、スタミナを伸ばすのか。
パリィのスキル強化をするのか、魔法の使用回数を増やすのか。こういった選択肢はある。

だが、事実上の自由度についてはほぼ存在しない。
魔法ビルドは、魔法だけでボスはおろか、道中を攻略することすらままならない。
スキルツリーは制限が多く、基礎ステータスの増強に絡むものが大半だ。

それに対し、相手方向の対策については「若干」対策可能だ。
闇のボスに対しては、闇耐性が上がる装備を付けるくらいは出来る。
連続回避が必要なボスについては、スタミナ回復を重点的に強化する。

こういった方向で、多少のビルドを考えることは可能だ。
そして実際問題、探索のモチベーションとしてはそれでも十分ではある。
探索で得たアイテムが、有効に使えるならばそれでいいのだ。


といった感じで、全ての要素は割と「及第点」なレベルだ。
だが、「及第点」ではある。
変な方向に拘っているのでもなければ、致命的な欠落がある訳でもない。

 

B級なストーリー

では、ストーリーテリングについてはどうだろうか?
公式steamページによれば、あらすじはこうだ。

「月が強烈な紫光を照らす夜
平凡な女子高生の姿をした少女はその日も魔物狩りに出かけた。
魔物を追跡するさなかに異界の隙間を発見し、運命に引き寄せられ冒険は始まる。」

……なんというか、つかみどころのないあらすじだ。
本作は、紫がかった月を背景に、以下のセリフから物語が始まっていく。

「おい、つき!」 - 謎の使い魔

「つき」とは、あの紫がかった月を指しているのだろうか?
成程、あえて平仮名で「つき」と表記したからには何かしらの意味があるのだろう。
そもそも、この使い魔は何なのか?

最初っから、怒涛の展開だ。
中華フォントとPSPみたいなグラフィックで、これらの謎が押し寄せてくる。
そう思った矢先、とんでもないことに気が付く。

この「つき」とは、なんと主人公の名前なのである。

このゲーム、とにかく本当に「B級」なのだ。
ストーリーは、もはや戦う理由でしかない。
戦闘する動機付けでしかないのに、そこに深い意味があるはずも無いだろう?

 

B級ならではの楽しみ方

HunterXを数時間プレイすると、気付くことがある。
実績の解除ペースと、解除タイミングが明らかにおかしい
適当な雑魚敵が武器を落とす度に、凄い勢いで実績が解除される。

更にプレイしていくと、更なるツッコミどころが出てくる。
特定のギミック解除の為のヒントテキストがあるのだが、良く分からない。
そして、それが誤植なのか想定通りなのか判断が出来ない。他のテキストがそうだからだ。

そして極めつけは、背景への「こだわり」だった。
街のステージでは、背景のオブジェクトに無駄にこだわっている。
他のステージではとてもチープな背景なのに、だ。

このステージだけは、建物に貼ってある広告ポスターまでしっかりデザインされている。
なるほどHunterXもこだわるところはこだわるのだな、と感心する。
だがまさかと思って調べてみると、なんと実在する企業の宣材を恐らく勝手に使っていた。

おいおいこれは流石にアウトではないか?と思った矢先、電話番号付きの看板があった。
恐る恐る電話番号をgoogle検索してみると……

この先は、是非貴方の目で確かめてみて欲しい。

 

総評

とにかくB級。
全てがチープ。投げやりで笑いがこみあげてくる。
そして、コンプラスレスレの凄いことをやってのける。まさにB級。

だが、メトロイドヴァニアとしての楽しさや気持ちよさだけは、しっかりA級だ。
AAA級の素晴らしさはないが、ゲームとして楽しむことは普通に出来る。
その上で、ふざけた「B級感」を堪能することができる。

B級ゲーは、「全てが足りない」ものが多い。
本作は、「足りない部分はとことん足りない」「必要な部分は足りている」ゲームだ。
「足りないことを楽しむ」ことが、「ストレスフリーで気持ちよく」出来るのだ。

言うなれば、B級であることを最大限活かしたB級ゲーなのだ。
この「足りない感」が、「B級ゲー」という「統一感」すら生んでいる。
本作は、「B級ゲー」という「世界観」を持ったゲームなのだ。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★✩✩✩✩(6/10)

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