未知と理不尽が生む、恐怖への没入 ― Lobotomy Corporation(レビュー)

初見殺しでアブノーマリティになっちゃう……。


[タイトル]
Lobotomy Corporation | Monster Management Simulation [公式サイト] ※steamリンク

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC

[プレイ時間 / 進行度 / MOD] ※レビュー時点
37時間 / トゥルーエンド / 高速化・便利系使用 ※MODについては別記事参照


はじめに

初見殺しとホラーたっぷりな理不尽シミュレーションゲームをお探しか?
そんな人はたぶんほぼほぼ存在しないだろうが、それこそがLobotomy Corporationだ
本作は、SCPインスバイアな独特の世界観を持った「理不尽シミュレーションゲーム」

Lobotomy Corporationのゲームバランスは、お世辞にも「良質」とは言い難い
とんでもない初見殺しややり直し、どうしようもない無力感、回避不能な運ゲー。
この世の悪を全て詰め込んだ悪魔的デザインは、Darkest Dungeonを彷彿とさせる。

だが本作は、悪魔的であるが故の良さもある。
その破滅的なバランスを補って余りある、高密度な世界観を有している。
めちゃくちゃに人を選ぶゲームではあるが、その細部に迫っていくとしよう。

余談ではあるが、本作は(普通の人であれば)MODを導入するべきだと考える。
世界観を堪能するのにあたって、過剰に「不親切」である必要はないからだ。
「悪魔的である」ことと、「不親切であるが故にそれが増幅される」ことは別問題だ。

MODについては別記事を起こしたので、それを参考にしてほしい。

 

大前提としてのゲームの流れ

まず大前提として、本作のゲームの流れについて触れておこう。
本作の目的は、毎日のノルマをこなして日々を生きていくことだ。
具体的な一日の流れは、下記のようになる。


  1. 収容するアブノーマリティ(怪物)を選択する
  2. 職員の雇用/配属を行う
  3. RTSモードとなり、アブノーマリティからエネルギーを収集する
    適宜得られたエネルギーから職員の装備を作成し、戦力を増強する
  4. エネルギー収集ノルマを達成したら翌日へ
    失敗した場合、当日をやり直すorチェックポイント(5n+1日)に戻る

要は、「アブノーマリティを収容し」「配属した職員でエネルギーを収集する」だけだ。
こういってしまえば簡単だが、そう簡単にいくものではない。

エネルギーを得る際は4種類の方法から選択するのだが、個体によって大きく成果が異なる
アブノーマリティに応じた収集方法を選ばないと、様々な不利益があるのだ。
純粋に収集量が低下するだけではなく、職員の死アブノーマリティの脱走もあり得る。

また、一定回数のエネルギー収集毎に「試練」イベントが訪れる。
試練は、一日の始めであれば簡単だ。ただ、時間経過と共に致命的なものになってゆく。
試練の効果は様々だが、効率的にエネルギーを収集しないとクリアは困難になるだろう。

 

悪魔的なアブノーマリティ

さて、アブノーマリティからエネルギーを収集するゲーム、と先程述べた。
そして、適した収集方法を選ばないと不利益がある、とも述べた。
それは、どのアブノーマリティも「爆弾」みたいなものだからだ。

アブノーマリティは、どれも個性的だ。
最初に管理する「たった一つの罪と何百もの善」は、十字架の刺さった骸骨だ。
収集作業では職員の自白がダイアログとして生じ、得られる装備品は「懺悔」だ。

このような、SCPライクでホラーライクでオカルトライクなモノがアブノーマリティだ。
アブノーマリティは、エネルギーを収集することで図鑑として情報が蓄積されていく。
例え取扱いに失敗したとしても、その情報をもってやり直せば何とかなるだろう。

また、アブノーマリティには5段階の危険度が存在する。
最低の危険度であれば、収集時の選択肢を誤ったとしてもさしたる問題はない。
だが最高危険度であれば……時に脱走し、施設に破滅を齎すだろう。

 

緊張感が生む、世界観への没入

アブノーマリティは、未知であり恐怖である。
そして本作では、全く情報が無い状態からアブノーマリティを取り扱う。
結果として、当たり前のように初見殺しに合い、何度も施設は壊滅する。

だからこそ、アブノーマリティへの本能的な恐怖緊張感が生まれる。
扱いを間違えれば破滅するかもしれない、という多大なストレスがある。
それは、作中の職員と感情が同期しているような錯覚に陥らせてくれる。

本作は、この「未知への恐怖」「解明する楽しさ」が、とにかく素晴らしい。
初見殺しに合い、職員を生かそうと慎重に管理をする様が、世界観への没入を生む。
生半可な覚悟で、アブノーマリティに触れてはならないのだ。

 

世界観を後押しする、ストーリー

本作の魅力は、アブノーマリティの解明における恐怖体験だけではない。
この世界観で展開される、メインストーリーも魅力的だ。

アブノーマリティからエネルギーを収集するLobotomy社。
管理人として入職した主人公は、施設の最高AIである「アンジェラ」に運営を任される。
運営と言うのはもちろん、アブノーマリティの管理とエネルギー収集だ。

アンジェラは、いつもどこか抽象的で謎めいた発言をしている。
アブノーマリティとは?この施設な何か?目的は何なのか?
謎が謎を呼ぶ中、主人公とアンジェラの対話を軸に、施設の謎に迫っていく。

そんなストーリーは、独自用語が多く飛び交い、とっつきにくい印象を受けるだろう。
だが、終盤にこれらのピースが繋がっていき、一本の線となる。
謎がだんだんと解けていく様と、世界観との連動は見事なものであった。

 

初見殺し全特化ということ

ここまで、世界観的な素晴らしさについて長々と語ってきた。
ここからは、ゲーム性について細かく見ていくとしよう。

さて……一言で言ってしまうと、本作のゲーム性は「終盤以外クソ」だ。
ゲーム性なんて、無いに等しい。
というのも、実際問題「初見殺し」のゲームでしかないからだ。

アブノーマリティにどう対処すればいいか。
それが分かってしまえば、あとは失敗しないようにエネルギーを収集するだけだ。
だから、判断面において、知識以外で困るような部分はほぼ無い。

また、一定間隔で起きる「試練」についても同様だ。
内容が分かってしまえば、対処自体はそこまで困難ではない。
やるべきことは単純明快で、アクション的/判断的な難しさはあまりない。

言うなれば、RTS的な瞬間的な判断や判断自体の難しさを要求されない。
頭を使うというよりは、初見殺しを如何に覚えるかのゲームでしかない。
世界観的にマッチはしていても、ゲーム性としては無いと評価するのが妥当だ。

一応、終盤については瞬間的な判断を問われることがあるし、攻略もある。
そういった意味で、終盤だけはゲーム性がある、と言ってよい。
ネタバレになる為詳しくは言及しないが、終盤についてはとても評価は高い。

 

初見殺しが「痛すぎる」

初見殺しのゲーム性……と言ったが、これに大きな問題がある。
というのも、初見殺しの対価が大きすぎるのだ。

例えば、対処が困難なアブノーマリティを収容してしまったとする。
その場合、チェックポイントに戻る(数時間のやり直し)必要がある。
最悪の場合、1日目からやり直さないといけない場合もある。

例えば、一日の終わりの試練で初見殺しを食らったとする。
その場合は一日をやり直すことになるのだが、試練発生まで数十分かかる。
初見殺しポイントまでのゲームプレイはほぼ作業であり、純粋な数十分のロスだ。

更に言うと、試練の抽選はランダムのため、確実に再現するわけではない。
また、試練については図鑑が無いため、どう殺されたのか不明瞭となる事も多い。

こういった点で、初見殺しがあまりにも痛すぎる。
例えるなら……エルデンリングのボス道中が、30分のマラソンだったら嫌だろう?
それ故に、ここについてはMODを入れたほうが良いとさえ思う。

 

「丁寧な作業」と「単純作業」

ミスを誘発する可能性があるが故に、慎重にやるべきもの。
それは、シビアであるが故のものであり、丁寧な作業として尊重されるべきだと考える。
短い時間で多量の操作をするとか、操作内容を記憶する必要があるようなものだ。

逆に、退屈すぎて逆にミスしてしまうようなものはただの「単純作業」だ。
そして本作のゲームプレイは、「単純作業」に該当されることが殆どだ。
先程の「試練までの30分」は、特定の動作をひたすらするだけ、だったりするのだ。

そして厄介なことに、本作は終盤を迎えるにあたって、かなりの「稼ぎ」が必要になる。
それはアブノーマリティの選定だったり、職員の育成だったり、装備集めだったりする。
これが、兎に角気が遠くなるくらいの作業量なのだ。

私はMODを入れてある程度ラクをしたので、実際の水準ははっきりとは言えない。
ただ、バニラの状態でやるなら……数十時間は作業を要求されるレベルだ。
これについてははっきりと好みが出るだろうし、令和的価値観とはかけ離れている。

 

総評

アブノーマリティという未知に対しての、恐怖感。
その恐怖感をプレイヤーと連動させ、世界観に引きずり込む設計
それらが齎す体験は、とても素晴らしいものだ。

だが、ゲーム性が如何ともしがたい。
初見殺しを食らわせる……というのは、世界観的にも仕方が無い部分だ。
だが、ここまで「初見殺し」を致命的にする必要があっただろうか?

初見殺しからのリカバリー周期を早くし、「稼ぎ」作業を大幅に緩和する。
それであっても、本作の世界観的な素晴らしさは十分に伝わるように思える。
だからこそ、あまりにも人を選んでしまう、という印象だ。

なんというか、作業が大量に必要なゲーム……一昔前のレベル制RPGの「HELL」みたいだ。
そこに「NORMAL」があれば、世界観が合致すれば誰でも楽しめる名作だっただろう。
今の難易度だと、90%くらいの人は「クソゲー」と評価してもおかしくない。

だが、時代は令和だ。
MODを入れれば、HELLを強制されることはない。
世界観から人は選ぶゲームだが、MOD前提でやってみてはどうだろうか。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★★★✩✩(8/10)

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