エルデンリング×モンスターハンター ― Salt and Sacrifice(レビュー)

両者のストレスを掛け合わせ、効果は無限大!


[タイトル]
Salt and Sacrifice [公式サイト] ※ps公式リンク

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC / PS4 / PS5

[プレイ時間 / 進行度 ] ※レビュー時点
15時間弱 / ストーリークリア


はじめに

今回紹介するのは「salt and sanctuary」の続編「salt and sacrifice」だ。
前作は、インディースタジオが手掛ける「粗削りな2Dソウルライク」であった。
粗削りとはいえ小綺麗には纏まっており、一部要素に目を瞑れば十分な良作だ。

そんな「期待の2Dソウルライク」の続編にあたるのが本作だ。
高難度で、ダークファンタジーで、意外と骨太なアクションRPG。
ソウルライクの真髄と言える部分に期待するのが、当然の流れだろう。

salt and sacrificeは、その期待に応えられたのだろうか?
その答えは……解答が難しいところだ。
エルデンリングのように、これは「ソウルライク」では無かったのだ。

ということで、細かいところを見ていくとしよう。
なお、本作はある程度マルチプレイを想定している(?)との事。
本レビューはソロプレイの為、その点はご留意されたし。

 

ダークな「エリア制」マップ

本作のエリア構成は、「ダーク」ソウルシリーズ……とは少し違う。
もっと言えば、メトロイドヴァニアとも少し違う。
どちらかというと、「デモンズソウル」のような仕組みになっている。

本作では、拠点の転送門からエリアを選んで移動する形となっている。
そして、転送先は凡そそのエリアの中央部であり、上下左右に広がりがある。
だが、その「広がり」は他のエリアを巻き込むようなものではない。

もっと言うと、エリアを跨いだ背景ストーリーやデザインに目立ったものは無い。
だから、個々のエリアは「独立した一つのもの」と感じられるだろう。
それ故に「エリア同士の繋がり」「広い世界としての感覚」は、あまり無い。

とはいえ、エリア単体で見た場合のコンセプトと設計は悪くない。
例えば大樹のエリアは、分かりやすく「中央に大樹」があり、「沼地に囲まれて」いる。
配置を理解しやすく、それっぽい構成であるのは確かだ。

世界としての「狭さ」は感じつつも、「エリア単位での探索感」はなんだかんだ良かった。

 

ストレスフルな魔導司システム

不穏な見出しであるが、文字通りの意味である。
本作では、令和では標準搭載な「プレイヤーへの配慮」に欠けている。
それらが複数合わさった結果……「逃れられぬストレス」として襲い掛かってくる。

その最たるものが、魔導司戦闘と篝火の仕様である。
まず前提として、本作のボスには二種類のボスがいる。
通常のエリアボスと、魔導司というボスだ。

エリアボスは、基本的には倒すとエリアギミックを使えるようになる。
それに対し魔道司は、エリアにある「封鎖された扉」を開錠する条件になっている。
当然、両者とも倒さないとエリアの攻略は不可能だ。

その魔道司だが、戦闘は以下のような手順となっている。


  1. エリアに配置された「死体オブジェクト」を発見する。
  2. 魔道司がエリアに出現するので、攻撃をする。
  3. 一定ダメージを与えると移動するので、追跡する。
  4. 2-3を5回くらい繰り返す。
  5. 追い詰めた先でボス戦をする。

要は、エリア移動の鬼ごっこをさせられるのだ。
エリアは当然、モンハンのような「洗練された」移動用の形状をしていない。
ソウルシリーズのような、初見殺し満載で事故死が当たり前の形状をしている。

そして、鬼ごっこシステムの為か、篝火へのワープは存在しない。
当然、エリア移動中に事故死した場合は篝火からやり直しとなる。
篝火を見つけられなかった場合、とんでもない距離を再移動させられる。

エリア探索と骨太なボス戦がしたいのに、鬼ごっこをしたいと思うか?
そもそも、モンハンにおける「エリア移動」「狩りの休憩」として成立している。
そして、ダークソウル的なマップは「初見クリアに特化する」から成立している。

あまりにも相性が悪い……というか、要素が成立する前提を満たせていない。
だから、ストレス鬼ごっこをエリアごとに複数回やらされるのはかなり苦しい。

 

辞め時が分からなくなる探索(意味深)

洗練されたダンジョン。エリアが繋がる解放感。ボスの達成感。
ソウルシリーズ、もとい前作にもこういった感覚はあった。
本作も、「探索の辞め時が分からなくなる」ことが多々ある。

……悪い意味で、だ。
本作における探索は、区切りとなるポイントが存在しないのだ。

まず、本作はゲームを終了すると拠点に強制的に戻される仕様になっている。
そして、篝火ワープはないし、エリアは必ず初期位置からの開始となる。
だから、そもそもショトカ開通タイミング以外での帰還を極力避けたい。

次に、前述の魔導司システムも、拠点に戻ると進行がリセットされる。
鬼ごっこはある程度深いところから始まる為、鬼ごっこ中の帰還も避けたい。

だから、上記の二つの条件が満たされた時にしか、そもそも帰りたくない。
それなのに、レベルアップや買い物は拠点でしか出来ない。
更に、回復アイテムは採取が必要であり、ボスのリトライ中に尽きることもある。

普通のプレイにおける理想的な帰還タイミングは、ほぼ無い。
それでも、「レベルアップ」や「回復アイテム」の為に、帰還を強いられる。
プレイヤーは、「無理矢理帰還して進行を失う」か「そのままリソースをロストする」のだ。

この究極の二択の凄いところが、プレイヤーによる「自発的なもの」であることだ。
失えば辞められるけど、極力失いたくない。
この「判断上のストレス」を与えることに関しては、かなり洗練されていると言える。

それが面白いかどうかは、別の話だ。

 

虚無の道中アクション

本作のアクションは、いわば「エルデンリング」だ。
それも、エルデンリングを更に理不尽にしたようなものだ。

まず前提として、スタミナが圧倒的に足りない。
回避を数回したらスタミナが無くなり、攻撃が出来なくなる。
その逆も然りであり、常にスタミナを意識する必要がある。

……つまりスタミナ管理が大事ってこと?と思うかもしれない。
理想はそうだったのだろうが、本作は「スタミナ管理」をするのは不可能に近い。

本作は雑魚の強靭の都合から、ワンコンボで倒さないと反撃を受けやすい。
だが、雑魚戦は複数戦になることが多く、連撃で倒しきれない事が多い。
かといって丁寧に回避すると、スタミナが無くなってそもそも攻撃が出来ない。

じゃあどうするのか?というと、「エルデンリングと同じ」だ。
本作には武器ごとに戦技が存在し、広範囲攻撃となっている。
遠距離からそれをパナして、なんとかするというのが攻略の基本だ。

 

それ以上の虚無のボスアクション

本作のボスは……道中よりもひどい。

まず、ボスの大半は「回避が非常に困難な攻撃」をしてくる。
当たると体力が半分減り、運が悪いとお手玉で即死する。
これを出された場合、確実に体力が吹き飛ぶ。

次に、ボスの大半は「回避を複数回要求する」攻撃をしてくる。
厳密には頑張ればなんとかなるのかもしれないが、かなり困難な印象だ。
攻撃判定や発生速度が曖昧すぎて、安定した決め打ち回避が難しいのだ。

そして、ボスは基本的に後隙が圧倒的に短い
回避した後、一撃殴ったら次の攻撃が来るくらい短い。

これらがスタミナの仕様と相まって、とんでもない事象を引き起こしている。
ヒットアンドアウェイをしていると、スタミナが無くなってしまうのだ。
普通に綺麗に回避行動をしても、普通にスタミナが無くなってしまう。

カツカツのスタミナを管理しながら、3ターンに1回くらい攻撃する。
その間、「絶対回避出来ない攻撃」が来ないようにお祈りする。
……なんて、とてもじゃないけどやってられない。あまりにも無謀すぎる。

だから、遠距離から戦技でハメて殺すのが答えになっている。
これは、コードヴェインの「もう無理だからゴリ押して1引くわ」という感覚に近い。
私の場合は「ボス範囲ギリギリで設置>回復>演出中に戦技戦技>怯み致命」が定石だった。

これなら6~7割減った状態から戦闘が始まり、そこから即死攻撃を引かなければいい。
それでも回避不能攻撃ばかりの神ボスでは15回も死んだのだから、本当に酷いものだ。

 

事実上存在しないビルドパス

最後にもう一つ、ビルドについても触れよう。
本作はソウルシリーズっぽいステータス振りが出来るようになっている。
それらはスキルツリーという概念にはなっているのだが、大差はない。

だが、本作にビルドには「差異」が無い。
まず、本作には「魔法」や「奇跡」といったものは存在しない。
近接攻撃、遠距離攻撃、ガード、戦技が基本アクションとなっている。

近接攻撃は、正直言って使い物にならない。
スタミナと回避の都合で、まともに攻略で運用するのは難しい。
この辺りは、エルデンリングのr1攻撃のイメージをしてもらうといいだろう。

次に遠距離攻撃だが、どのビルドでも直進する弾を同じような火力で発射出来る。
ビルドごとに違うのはエフェクトだけで、プレイフィールに変化はない

また、ガードも基本的にはかなり不遇なプレイスタイルになっている。
そもそも、攻略であっても直前ガードを連発しない限りはスタミナが苦しすぎる。
リスクリターンが噛み合っておらず、メインに据えるには難しい。

最後に戦技だが、これは全武器がある程度似通ったものを搭載している。
そして前述のように、戦技は攻略上運用が必須に近い。
だから、戦技メインとか攻撃メインといった差別化は出来ない。

それ故に、全ビルドが「戦技をパナし」「回避メインで」「遠距離が使える」。
そこに、ビルドごとの特色は存在しない。

 

総評

ここまでストレスを溜めさせるゲームがあっただろうか?
このゲームの齎すストレスは、今まで私がやってきたゲームでトップではないだろうか?

戦闘システムは酷い。まるで遺灰の無いエルデンリングだ。
虚無のボスから1を引くために周回する。倒さないと辞められない。
このゲームは強制的に人を発狂させる実験でもしているのか?

それでも、エリア設計はそれなりに光るものがあった。
探索はやはり面白いものであり、それは原動力になるくらいの体験でもあった。
「ボスをどうやってハメるか?」という攻略も、嫌いでは無かった。虚無ではあったが。

そういった意味で、クソゲーでありつつもクソゲーではない、という印象だ。
このゲームはストレスを溜めるのが本命ではあるが、遊べる部分もある。
お勧めはしないが……怖いものが見たい人にはお勧めする。

このゲームのストレス要素は、他の高難度ゲーを遥かに凌駕する
真の意味で「真顔になるゲーム」が味わえるだろう。

 

ちなみにラスボスはそれなりによく出来ていて、納得行く出来だったと思う。
ハメきるには体力が多く、回避から遠距離攻撃をするという「普通の攻略」が可能だった。
攻撃がちゃんと回避できるように設計されている時点で、本作ではトップクラスの出来だ。

全ボスこうして、スタミナ倍にして、ワープ追加して、鬼ごっこ消したら良ゲー。
まあそれは別ゲーであるし、こういうバランスを意図的に作ったということだろう。

 

個人的お勧め度: ★★★✩✩✩✩✩✩✩(3/10)

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