死にゲーにおける、「高難度」と「理不尽」の境界線
最近、エルデンリングが発売されましたね
フロムゲーといえば死にゲー……なんてイメージも付いた頃でしょうか?
「ソウルライク」同様、「死にゲー」は最早一つのジャンルでしょう
死にゲーの売りとして、「高難度」と「試行錯誤」があります
難しいステージやボスを頑張って突破する、という達成感に重点を置くのです
それ故に難しすぎて折れてしまったり、理不尽だと感じることも少なくありません
では、良い死にゲーとは何でしょうか?
それは、折れてしまう「理不尽さ」にはありません
挑戦したくなる「難しさ」にこそ、良い死にゲーの本質があるはずです
ということで今回は、アクションゲームにおける「高難度」を深堀りします
高難度ゲーの「本質」
アクションゲーにおける高難度とは何でしょうか?
普通に考えればクリアが難しいこと、ということになりますね
では、何故クリアが出来ないのでしょうか?
敵の攻撃が痛い。回復薬が足りない。攻撃が苛烈。
いろいろな要因はあると思いますが、本質的にはこう考えます
プレイヤーの「ミス」を誘い、そのミスを「許容しない」ことです
どれだけ「ミス」を誘発しやすく、どれだけ「許容しないか」。
その設定の厳しさこそが、高難度の理屈ということになります
ということで、さらに詳しく見ていきましょうか
ミスを誘発する、という要素
アクションゲーにおける「ミス」は、大きく2つしかないと考えます
「プレイヤーの操作によるミス」と、「プレイヤーの判断によるミス」です
「プレイヤーの操作によるミス」は、「操作性」といって差し支えないかもしれません
使うボタン数や連携が複雑。回避のタイミングがシビア。キャラの位置取りがシビア。
こういう「操作自体の猶予の少なさ」で、プレイヤーの「ミス」を誘うのです
対して「プレイヤーの判断によるミス」は、「攻略」の要求度でしょう
敵が振りかぶったら回避する。アイテムはここで使う。そもそも回避ではなくガードする。
こういった「プレイヤーの攻略が至らないこと」で、プレイヤーを殺すのです
ミスを許容する、という要素
ミスの許容について、私は3つのパラメータがあると考えます
「ミスの補足率」、「ミスの重さ」、そして「試行回数」です
これは現実の「法律による抑止」の理念に似たものがあります
「検挙率」*「罪の重さ」*「試行回数」=「罪の期待値」となる訳ですね
死にゲーは、この「罪の期待値」が極めて高くなるゲームを指します
ここでいう「検挙率」は、どれだけミスが許されるかを指します
例えば「大振り攻撃>ランダムで1回追加攻撃」をするボスがいるとします
この場合、大振り攻撃の後に近づくのは「ミス」ですが、検挙率は100%ではありません
また、回避タイミングなどの「猶予幅」も事実上の検挙率と言ってよいでしょう
そして「罪の重さ」は、検挙された場合のダメージの大きさを指します
ミスをした場合に一撃死するなら、その罪は非常に重いと言えます
最後の「試行回数」ですが、これは「ミスを誘発する行動」を何セット強いられるかです
例えば、上記ボスの例で「ランダムで1回追加攻撃」の後に3割ほど体力を削れるとします
その場合、このボスでの「試行回数」は4回ということになります
プレイヤーの判断によるミス
ということで、ついに本題に入っていきます
順序を変え、「プレイヤーの判断ミス」から語っていきましょう
結論から言えば、ゲームの「攻略」はプレイヤーの「判断」であるべきです
相手のモーションを覚え、適切な対応パターンを用意する。
ステージギミックを覚え、適切な進行ルートを導き出す。
この「学習」こそが、ゲームに求める「攻略」であると考えるからです
死にゲーに求めるのは「一度きりの経験」では無いでしょうか
それが何故「一度きり」なのかというと、「攻略」が存在するからです
攻略をしてしまえば、「容易に突破出来てしまう」必要性があるとさえ言えます
プレイヤーの操作によるミス
ということで二つ目のミスについて話していきます
まず私が思うに、「ミスの誘発」は「操作性」から来てはならないと考えます
というのも、「操作を極める」ことが重要な体験にならないからです
死にゲーは、基本的には一度の周回をベースとしたゲームであるはずです
一度しかやらないゲームで、シビアな操作を練習しないと土俵に立てない。
それはゲーム体験として、面白いと言えるものでしょうか?
逆に、モンハンのようにな周回を前提としたゲームなら話は変わってきます
また、シビアな操作をすることで効率的な攻略が可能である場合も別です
「通常の攻略」ではなく「オプション」であれば、「やり込み」として評価出来るのです
かといって、判断だけではいけない
とはいえ、判断だけではカードゲームになってしまいます
そういう背景もあって、操作猶予があり過ぎるのも考え物です
であれば、どれくらいがちょうどいい範囲なのでしょうか?
思うに、それは「判断を焦らせる」くらいの「時間制限」がベストです
取り立てて厳しいフレーム的猶予はないが、判断を迫られるスピードが速い。
これが、適切な「アクションゲー」における「判断の難しさ」ではないでしょうか
正しい判断は分かってるのに、焦って失敗する。
これが、「次は上手くやれる」と思わせる失敗だと考えます
正しい判断は分かってるのに、操作がシビアで失敗する。
これが、「上手くやったのに死んだ」と思わせる理不尽さだと考えます
あとから振り返った時に、次は上手くやれると思わせる。
これはすなわち、「冷静な立場で見れば判断は明確だった」ということではないでしょうか
操作のシビアさによるミスでは、「次は上手くやれる」という確信には至れません
ミスを許容する、という要素:ゲームの分類
ということで、次はミスの許容について話していきます
先程は「検挙率」*「罪の重さ」*「試行回数」=「罪の期待値」と表現しましたね
ここでは一旦ゲームを列挙し、それらの重みづけを評価してみます
エルデンリング
- 検挙率(判断): 中
- 検挙率(操作): 高
- 罪の重さ: 高
- 試行回数: 低
本作の「検挙率」についてですが、判断ミスによる検挙率は中くらいです
攻撃を連打してくるケースは多いものの、タゲ分散などで許されるケースもあるからです
攻撃力は自他ともに高く、「罪の重さ」と「試行回数」は上記のようになるでしょう
Ender Lilies
- 検挙率(判断): 高
- 検挙率(操作): 低
- 罪の重さ: 低~中
- 試行回数: 中
本作の判断ミスに対する検挙率は極めて高く、判断をミスすればほぼ確実に被弾します
対して操作ミスに対する検挙率は極めて低く、操作面でミスをすることはほぼありません
ダメージは即死する程度ではないですが、相手のhpが高く試行回数はやや多くなります
SEKIRO
- 検挙率(判断): 高
- 検挙率(操作): 中
- 罪の重さ: 中~高
- 試行回数: 低~中
続いてSEKIROですが、これもEnder Liliesと似た傾向になります
やや罪の重さと試行回数はエルデンリング寄りにはなりますが、
判断ミスに主軸を置くことと、回数をある程度要求することが似ています
モンスターハンターライズ(ソロ)
- 検挙率(判断): 中
- 検挙率(操作): 中
- 罪の重さ: 低
- 試行回数: 高
難易度の低いと言われるモンスターハンターライズですが、上記のように考えます
操作面や判断面は武器に依存するものの、どちらもあまり高くなくダメージも少な目です
とはいえモンスターの体力は多く、試行回数は多くなりがちです
モンスターハンターP2G(ソロ)
- 検挙率(判断): 高
- 検挙率(操作): 低
- 罪の重さ: 低~中
- 試行回数: 超高
難易度の高いと言われるモンスターハンターP2Gですが、これは上記のようになるでしょう
判断ミスの検挙率は高いですが、操作は簡単でミスはあまりありません
モンスターの体力はとんでもなく高いため、試行回数は爆発的に多くなります
アイワナなど
- 検挙率(判断): 低
- 検挙率(操作): 超高
- 罪の重さ: ?
- 試行回数: ?
ついでに超高難度のマリオ系アクションも取り上げます
この場合は、操作の難しさにすべての要素が集約されます
即死を前提としたバランスの為、試行回数や重さはどちらとも取れません
とまあいろいろ書きましたが、結局のところ「パターン」は多くありません
ということで次は、重みづけによる特色を見てみます
ミスを許容する、という要素:重みづけの特色
ここではそれぞれのパターンについて、ゲーム上の影響を考えます
パターンはある程度統合してみていきます
エルデンリング: ロシアンルーレット
これは「検挙率が高く、操作寄り」かつ「罪の重さも高い」パターンです
ただ、それだとクリアが現実的ではないので、試行回数がかなり抑えられています
逆を言えば、「運の良い1回」を引ければ攻略が不完全でも突破可能です
Ender Lilies, MHP2G: リアルタイムチェス
これは「検挙率」と「罪の重さ」がほどほどに高いパターンです
簡単にクリアできてしまわないよう、代わりに試行回数が多くなります
練度に比例し生き残れる時間は伸びますが、攻略が不十分だと1を引くのは無謀でしょう
SEKIRO: 過緊張麻雀
これはエルデンリングと、EnderLiliesの中間あたりのバランスです
ある程度の練度を要求するのは間違いありませんが、運次第で勝つこともあり得ます
そういうわけで、麻雀という表現をここではしています
アイワナ, 改造マリオなど: 修行
これは操作的な検挙率に全振りしたパターンです
操作的な難度が非常に高いため、ゲーム特有の慣れをするまでは修行の様相を呈します
本パターンの特徴は、攻略を主軸と置いたゲームではないことです
そんでもって、これって結局は2軸のマトリクスに出来るんですね
「判断」と「操作」、「試行回数」と「罪の重さ」の重みづけをどうするかです
マトリクスにすると、以下のようになります
良い死にゲーの条件
ここまでいろいろ書きましたが、私の結論は上記マトリクスにおける右上です
「判断ミス」を中心とし、何度も正しい判断を強いるような「試行回数型」のゲームです
「ミス」は攻略起因である「判断ミス」であるべき、というのは先程述べました
もう一方の試行回数が重要であるという点ですが、これはプレイヤー心理上の問題です
まず、ワンパンで死ぬ「罪の重さ型」のゲームは過度なストレスがかかります
ミスが重い為、期待値は変わらなくとも「ミスを許容されない感」が強くなります
また、運で突破も可能ではあるため「運のいい1回」をどうしても意識します
それに加え、純粋に「罪の重さ型」は上手くなるための導線がしっかりしていません
上手くなるための導線……というのは、「モチベーション」と「効率性」です
例えば「罪の重さ型」において、成長実感を得るのは難しくなります
どれだけ上手くなってもワンミスで死ぬということは、毎回どこまで削れるかがブレます
試行回数型は、「実力に応じた消耗戦」であるが故に「実力=生存時間」が成立します
また、「罪の重さ型」は純粋に一戦あたりの判断回数が少なくなります
それゆえに、モーションを見る回数が純粋に少なく、攻略の進行も遅くなります
成長実感や成長速度の面からして、「試行回数型」の方が遥かに好ましいと考えます
おわりに
諸説あると思いますが、僕は「判断ミス型」かつ「試行回数型」のゲームが良いと考えます
プレイヤーが攻略の進捗を感じやすく、純粋に攻略を考えやすくもあるからです
また、実力比例の消耗戦であるが故に「攻略の完成度」の最低ラインがかなり高くなります
そういった意味で、エルデンリングは「理不尽寄り」の難易度設計だと考えます
実際にボス攻略にかかった時間はEnder Liliesと大差ないのですが、
プレイ時のモチベーションや、最終的な攻略の練度に圧倒的な差がありました
ダークソウルシリーズは、似たような傾向はあれどここまで左下寄りではありません
次回作は、こういった部分が少し調整されると良いですね