
最強のビルドで無双せよ ― ユニコーンオーバーロード(レビュー)
最後まで突っ走れるくらいに”overloaded”。
[タイトル]
ユニコーンオーバーロード [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★Nintendo Switch / PS4 / PS5 / XBox XS
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
50時間くらい / ストーリー・裏面クリア
はじめに
フェチ性の強いドットで知られるヴァニラウェア。
今回レビューするのは、ヴァニラウェアのSLGである「ユニコーンオーバーロード」だ。
本作は、リアルタイムな戦略SLGのようなゲームとなっている。
その中で、各小隊の編成が重要なゲームとなっており、
「オートバトラー」としての性質も強く持っているような作品だろう。
ストーリー自体は王道系であり、戦記モノである。
このあたりを鑑みると、本当に「王道」な「戦略SLG」の要素がテンコ盛りだ。
そんな「王道」ゲーを、レビューしていこう。
戦記モノとしてのストーリーと、ゲームプレイ
本作のストーリーは、本当に本当に王道な展開となっている。
ネタバレになるので詳細は省くが、もうコテコテと言っていい。
これでもかってくらい王道のため、驚きのような要素はない。
とはいったものの、本作のような戦略SLGに、壮大なストーリーは要らない。
結局は「戦争」なのだから、「理由」が真っ当であればよい。
そういう意味では、「分かりやすく王道」がマイナスになることはあり得ない。
また、本作はフィールドを「開拓していく」ような攻略となる。
巨大な大陸をひたすら戦いながら切り開き、自軍として平定していく。
そういう「戦争」的なゲームプレイとストーリーは、違和感なく融合している。
特に真新しさはないが、破綻もないし、ゲーム性とも調和が取れてはいる。
ビルド……もとい、部隊編成の面白さ
本作の戦闘なのだが、基本的には複数の部隊を運用して敵陣を落とす形だ。
部隊は複数のユニットで編成でき、各ユニットには戦闘行動をプログラムできる。
そして戦闘は基本的に1ターンなので、想定した通りの動きが再現される。
ユニットの種類はかなり豊富で、それぞれが多すぎず少なすぎない能力を持っている。
基本的に「攻撃」「補助」「自動発動」がそれぞれ1つくらい割り振られており、
全ての技をある程度運用する前提で職業やクラスが設計されている。
また、装備アイテムにも上記のスキルが設定されている。
とはいえ、装備アイテムでスキルを付与できるのは1~2個くらいになりがちだ。
なので、特定戦術を補佐するとか、そういった穴埋めで運用することが多い。
これだけ聞くとよくわからないと思うが、これらの塩梅はかなり良い。
例えば、以下のような編成をすることで、部隊シナジーを構成する。
- アタッカー
- 攻撃時自動発動 攻撃強化
- 戦闘開始時自動発動 攻撃強化
- 攻撃スキル1 範囲攻撃 条件付き
- 攻撃スキル2 単体攻撃 条件付き
- バッファー
- 味方攻撃時自動発動 属性付与
- 味方回復
- 補助スキル 条件付き
このような編成とした上で、攻撃スキルや補助スキルの発動条件を調整することで、
「相手の回避が高かったら補助」「敵数に応じ範囲攻撃」みたいなことが可能だ。
これを、部隊単位のシナジーを考えて組み上げるのが本作のビルド面の魅力と言えよう。
スキル数が多すぎないからこそ、そこまで複雑なシナジーにならないのがとても丁度よく、
採用したクラス(ユニット)を最大限活かすように構成するだけで、割といい感じになる。
編成のゲームプレイは非常に面白いし、必ず1ターンで終わる戦闘であるため再現性も高い。
フィードバックが早いため、トライアンドエラーがかなり捗る。
いい感じのビルドを見つけた時の楽しさはやっぱり最高だし、本作の魅力だろう。
マクロ的な戦闘バランス
先ほど、部隊単位での戦闘およびビルドについて軽く触れた。
では、戦闘全体の流れで言うとどうなのか?というと、結構単調だと言わざるを得ない。
部隊単位では、先程も述べたようにビルドが試されるオートバトルとしての面白さがある。
だが、全体で見た時は、お互いの部隊がただぶつかり合うだけの形になってしまう。
というのも、ほかの部隊が戦闘に干渉できる要素がかなり少ないのだ。
そして、各部隊の戦闘は「ノーダメ」か「一切勝てないか」になりがちだ。
本作には「部隊が消耗するリソース」が事実上存在せず、
上手く編成すれば、基本的にはほとんどダメージを受けずに突破することが出来る。
だから、「強力な部隊でひたすら無双する」というゲームプレイになってしまう。
それを抑止するための「奇襲」みたいな要素もあるのだけど、
これすらも割と雑に強力な部隊がいれば蹴散らせるので、あまり成立していない。
そういった意味で、本作の戦略面は「部隊編成がほぼ全て」といってもいいだろう。
ビルドの幅が「狭い」ということ
本作のキモであるビルド。
ある程度スキル数が少ないから、正解を引きやすく実感もしやすい。
それはそれで長所なのだけど、だからこそ大きな欠点がある。
それは、「ビルドの幅が狭く感じる」ということだ。
というのも、本作には「ビルドを考え直す契機」がほとんどない。
こういうビルド偏重ゲーの名作においては、この契機が複数ある。
そうでないと、最初に選んだ正解で事足りてしまうからだ。
その契機は、「LoR」にあったような「ルール変更」だったり、
「シカトリス」にあったような「メタの変化」だったり、
「ガレリア」にあったような「ビルド対象の大幅変化」だったりする。
本作にも、あることにはある。だけど弱すぎる。
あるとしたら、大陸移動の度に追加される新クラスとアイテムスキルくらいだ。
だが、新クラスは既存クラスの亜種的な立ち位置で、アイテムスキルも数が少ない。
だから、中盤くらいにじっくり考えてしまえば、あとはもう変える内容がない。
これはビルド偏重ゲーとしてはかなり痛いところで、後半の失速感が強かった。
総評
王道で分かりやすいストーリー展開。
分かりやすく面白いビルド要素。ここまではいい。
だけど、戦略ゲーの割には戦略要素は薄い。
ビルドゲーの割にビルド要素の更新材料が少ない。
そういった意味で、ゲームに慣れてからは消化試合となってしまう。
そんな、ちょっと惜しいゲームだな、という印象だ。
新大陸ごとの追加クラスがめちゃくちゃ特徴的だったり、
新大陸でいきなり戦闘が3ターンになるとか、そういう「波乱」が欲しかった。
全体的に完成度は高いのだけど、どうしても良くできたSLGの域を出ない。
王道であるが故に、大きな感動や感心するような要素も少ない。
それ故に、「このジャンルが好き」であることが楽しめる条件になってくるだろう。
恐らくジャンル的な「キモ」は、ほとんど外していない。
だが、「ビルドゲー」なら「ビルドをリセットする契機」が欲しかったな、と思う。
個人的お勧め度: ★★★★★☆☆☆☆☆(5/10)