カードゲーム黎明期の追体験 ― Library Of Ruina(レビュー)
俺の最強デッキを食らえ!!!
[タイトル]
Library Of Ruina [公式サイト] ※steam公式
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / XBox One / PS4 / Nintendo Switch
[プレイ時間 / 進行度 / MOD] ※レビュー時点
80時間ほど / トゥルーエンディング / 稼ぎ補助系MOD導入
はじめに
今回レビューするのは、高難度カードゲームであるLibrary of Ruinaだ。
あのLobotomy Corporationを手掛けた、ProjectMoonの二作目である。
本作では、独自のルールで展開されるデッキ構築バトルが楽しめる。
こう書くと「普通のカードゲーム」に見えるが、そこはProjectMoonである。
ギリギリの難易度設計や、めちゃくちゃな要素追加で明らかに「普通」ではない。
Library of Ruinaは、絶対に万人受けはしない。
だが、ハマる人はとことんハマる、絶妙なバランスを誇っている。
ということで、さっそくレビューに入りたいと思う。
戦略性のあるバトル
本作のバトルの基本は……説明が難しいのだが、割とシンプルだ。
「独自用語」みたいなものでとっつきにくくはあるが、そこまで難しくはない。
一応ざっくり記しておくが、レビューで重要なのは「マッチ」という仕様だ。
- キャラクター仕様
- 最大5v5
- 体力と精神力がある。精神力は無くなると1ターン行動不能になる
- 各キャラクターは、速度ダイス(≒カードの最大仕様回数)を持つ
- 各キャラクターは、光(≒マナ)というリソースを持つ
- 光/速度ダイスは、(概ね)ターン経過により回復・最大値が増加
- 各カードは、攻撃or防御といった効果があり、威力はランダムで決定
- ゲームの流れ
- ターン開始時、速度ダイスが決定。これがカードの解決順を定義する。
- 相手が行動予定を決定する。
- 自分が行動予定を決定する。相手のダイスと位置が同じ場合、マッチ発生。
- マッチ発生時は、ダイスの大きい側が一方的に勝利する
- ダイスが同じ位置ではなくても、速度が上回れば乗っ取れる
- 行動予約を終えたら実行し、ターン終了
上の画像の場合、敵が左の味方に向けて攻撃を登録している。
自分キャラが敵のダイスに向けてカードを登録すると、マッチが発生する。
マッチが発生した例。よく見ると自分は右のキャラから行動登録している。
狙われたキャラでマッチ勝利が厳しいなら、速度の速いキャラで乗っ取ることも可能だ。
これを任意のダイス数分登録したあと、行動開始することで実際の戦闘が始まる。
この画像の状態で行動開始を行うと、マッチしているダイス同士で判定が行われる。
1ダイス目の「1-2」vs「3-5」で威力判定が行われ、勝った側が一方的にダメージを与える。
2ダイス目以降はこちらのみダイスがあるため、一方的に攻撃することができる。
とまあこんな感じで、マッチは「早くて強い方が一方的に勝つ」仕様だ。
だからこそプレイングのキモだし、如何に相手のダイスを潰すかが重要になってくる。
だが後半に行くにつれ、相手のダイス数や速度が上がる為、完全に潰すのは困難になる。
だからこそ「何をマッチで受けるか」と頭を悩ませることとなる。
相手の攻撃とあえてズラし、お互いが一方的に攻撃するようなプレイングも出来る。
「高速度ダイスからダイレクトアタックを連発して倒しきる」、
「マッチ乗っ取り用キャラを編成して、乗っ取り&ダイレクトで攻める」、
「保守的に原則マッチで受ける」といった、いろいろな戦略が取れる。
シンプルで奥深い構築
本作のデッキビルドおよびビルドは、シンプルながら奥深い。
それは、普通のTCGというよりは、ローグライトカードのそれに近い。
まず、このゲームにおけるビルドは、ざっくりと2つの要素で構成される。
一つ目はキャラクターのパッシブで、これはコスト制限下でいくつか選ぶ形だ。
二つ目はデッキビルドで、それぞれのキャラクターに紐づける形で構築する。
一つ目は、とても……いわゆる「レリック」っぽい。
打撃攻撃の出目を上げるとか、ドローを増やすとか、状態異常強化なんかがある。
このパッシブをベースに、構築デッキの方向性を決める形だ。
二つ目は、とても「ローグライクカード」っぽい。
というのも、本作におけるデッキの枚数は9枚しかないのだ。
主要カードにアクセスできるように圧縮する、ローグライクカードのような構築になる。
この二つを組み合わせると、「ローグライクカードの最終系」のようになる。
パッシブとシナジーのある、主要カードのみに圧縮されたデッキが基本になるのだ。
TCGのような、枚数調整や確率計算のような「高レベルな調整」は、必要がない。
「このパッシブとこのカード組み合わせたら強いのでは?」を、すぐに実現できる。
道中を全部無視して、おいしいところだけを抽出したような「効率性」を感じる。
だから、ビルドはめちゃくちゃ面白い。
すぐに結果が分かるし、作りたいデッキを作るのも難しくない。
作ってみたいデッキが多すぎて、回したいデッキが多すぎて、敵が足りないくらいだ。
「運ゲー」という名の「救済措置」
話は戻るがこのゲーム、いかにマッチで勝つかがゲームプレイのキモとなる。
それはまあ当然で、マッチ勝利をすれば一方的に相手の攻撃を潰せるからだ。
だけど、安定してマッチ勝利をするには、敵カードやギミックへの理解が必要だ。
例えば一部のカードは、ダイス幅がめちゃめちゃ広い。
上記の例ではほぼブレは無かったが、例えば10-20みたいなものもある。
お互いこれでマッチした場合、運否天賦で割と決まってしまう。
例えば一部のボスは、特定条件でダイス値が大きく増加する。
元々2-3だったものが、状況限定で6-9みたいな値になる。
「安定して勝てるマッチ」が「普通は負けるようなマッチ」に変貌するのだ。
そしてそのマッチ勝敗は、行動一つをひっくり返す大きなものだ。
こういったマッチで負けてしまうと、運ゲー感を覚えずにはいられない。
だが個人的に、ここのお祈り感はとてもとても塩梅がよい。
というのも、構築や戦略が高レベルなら、リスク回避で行動しても勝てるからだ。
リスクを回避するための手段や戦略は、かなり多く存在している。
だが、往々にして最善な構築や戦略が取れるわけではない。特に初見はそうだ。
だけど、初見で「運否天賦」という「抜け道」があるのが、いい意味で機能している。
ちゃんと出来れば勝てるからこそ、甘くても運ゲーで抜けられる「余白」がある。
運ゲー突破の夢を見せてくれ、たまに運ゲーで突破出来る奇跡の瞬間が発生する。
だが大体は夢破れ、戦略を練ることとなる。
宝くじみたいな外れ値が起こり得るのもまた、本作の魅力だろう。
カードゲームの性質が、変わる
タイトルにもある、「カードゲーム黎明期」の意味。
それは、カードゲームの性質……もといゲーム性が、変わるという点にある。
本作の序盤は、「マッチを基本としたベーシックなカードゲーム」だ。
ゲームの基本となるシステムを中心とした、シンプルなゲーム性だ。
マッチで勝つための、ドローやリソース管理が中心となってくる。
本作の中盤からは、「ギミックを上手く活用するカードゲーム」だ。
マッチは相変わらず重要なものの、ギミックを活用することを求められる。
デッキ内シナジーを加味し、効率的なデッキ回しとマッチの両立が必要だ。
そして終盤からは、「グッドスタッフでメタを読み切るカードゲーム」だ。
相手のダイスが強力になり、細かいギミックだけではマッチの勝敗が覆らなくなる。
だがこちらのカードも強力になるため、強カードでピンポイント対策する形になる。
この感じ、とても「リアルのカードゲーム」っぽくないだろうか?
特にインフレの激しい、終わってしまったようなカードゲームっぽくないだろうか?
序盤は、ルールを覚えつつじわじわ増えていくギミックを楽しめる。
中盤は、効率的なデッキ回しや構築を行う「カードゲーム成熟期」的な楽しさがある。
終盤は、カードゲームというよりはコマンドRPG的な楽しさがある。
なんというか、「一粒で三度おいしい」みたいな感じだ。
古き良きカードゲームとしての、面白さ
「カードゲームの変遷が楽しめる」と言ったが、これにはもう一つの側面がある。
今のカードゲームと、昔のカードゲームの楽しみ方には違いがあるからだ。
今のカードゲームは、最速最短でメタデッキが確立する。
良く言えば「レベルが高い」のだが、悪く言うと「遊びの幅が狭い」のだ。
1週間ほどでメタが確立し、コピーデッキだらけになるのは「多様性がある」と言えるか?
そういった意味で、本作はその心配が一切ない。
相手に容赦は一切ないから、ちゃんとデッキを組む必要は勿論ある。
だが、多少甘くても運否天賦でどうにでもなる。勝ち越す必要など微塵もないのだ。
それを極めたような、運否天賦をベースとしたネタコンボも存在する。
めちゃくちゃ相手の行動と運に依存するが、決まればもう勝ち同然みたいなものだ。
遊び心のあるデッキで楽しめるのも、これまた昔っぽい。
パックを開けて出たカードが強そうだったから、自分でデッキを組んでみる。
これは今や、カードゲームから消えてしまった楽しみ方ではないだろうか?
本作は最初から最後まで、その楽しみ方が出来る。
まあ今でも、本当のトップ層ならこの感覚はあるのだろう。
だが、一般人にこの「構築の面白さ」を味わえる環境は、今やほぼ無いと考えている。
だからこそ、流行りのカードゲームよりも「カードゲームらしい」とさえ思う。
世界観ゲーとしては、一歩後退
前作Lobotomy Corporationは、とにかく没入感と雰囲気が素晴らしかった。
本作にもその圧倒的な世界観を期待したが、やや期待外れではあった。
前作と比べて、「世界観」と「ゲーム部分」の調和がなされていない。
前作は「世界観」「ストーリー」「キャラ設定」が全て、「ゲームプレイ」と連動していた。
だからこそ、圧倒的なまでの没入感と世界観表現が確立していたのだ。
だが本作は、「ストーリー部分」と「ゲームプレイ」が、割と独立してしまっている。
また、メインストーリーは「群像劇」的な感じで進行していく。
それにも関わらず、キャラクターの掘り下げがやや浅い。
特に前作キャラに関しては説明不足で、既プレイでないと薄っぺらく感じるだろう。
こういったところを鑑みて、世界観表現に関しては特筆するレベルでは無いように思う。
勿論、前作の世界観を踏襲しており、雰囲気は抜群だし個人的には最高である。
でも、「ゲーム的な表現」として素晴らしいか?というと、「普通」という感じだ。
とはいったものの、幻想体戦は非常に素晴らしかった。一部鳥肌が立った。
なるほどこのようにカードゲームに落とし込んだのか、と興奮出来る仕上がりだ。
これは確かにゲーム的表現ではあるのだが、やはり前作ありきなのが拭えない。
あとは、お約束的な「決めカード」みたいな展開もあり、これは王道でアツい。
Ender liliesでおなじみmiliの楽曲もあるので、盛り上がるのは確かだ。
あいあむふぁ~~~~いあ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!
とんでもねぇUI
もう一つだけ欠点を上げるとすれば、それはUIだ。
このゲーム、とにかくUIが操作し辛い。
近年のDTCGをやっている人からすれば、まずデッキ構築でイラっとくるだろう。
だが一番の問題は、マッチ線のUIだ。
これが、とにかく致命的に見辛い。
このゲームにおけるマッチ線と速度ダイスは、「ゲームプレイのコア」なのに、だ。
まあいろいろ語るより、画像を見てもらおうか。
ネタバレになりそうなところは塗りつぶしているが、線の多さがよくわかるだろう。
だれがどこ攻撃してるか分かんねぇよ!左上はダイスの数字が潰れてて速度が見えねぇよ!
これのお陰で、少し気を抜くとマッチがすり抜けていた、みたいなことになる。
こればっかりはどうにかならなかったのか……?と、強く思う。
一応線のオンオフみたいなのは出来るのだが……そういうことではない。
総評
太古の、カードゲーム。
パックを開けて、強そうだからデッキを組んでみる。
デッキが回るまで、いろいろ試行錯誤して遊ぶ。
そういう、「本来のカードゲーム的な楽しさ」が、味わえる作品だ。
特に昔のカードゲームが好きだった世代には、ウケが良いのではないだろうか?
僕は、絶妙な難易度やゲーム性に心惹かれ、最高に楽しめたゲームだった。
このゲーム、たぶん開始2~3時間くらいで「合う」「合わない」が分かる。
インディーで安めではあるし、気になっているなら少しやってみて欲しい。
合う人にはとことん合う、最高のゲームになり得るはずだ。
また、本作のプレイにあたって「Lobotomy Corporation」のプレイは……不要ではある。
前作は「雰囲気9割ゲーム性1割」だったが、本作は「雰囲気1割ゲーム性9割」だからだ。
なのだけど、個人的にはLobotomy Corporationを触ってからやって欲しいと思う。
それは、本作がLobotomy Corporationの「ネタバレ」的に作用してしまうからだ。
前作が合わないというなら、普通にスルーしても問題はない。
私が懸念するのは、本作をやったことにより前作の体験を損なうことだ。
本作に限るなら、これは「カードゲーム黎明期の追体験」がメインディッシュである。
最後になるが、導入したMODについて記しておく。
本作はMODを入れなくても問題ない出来ではあるが、稼ぎが嫌いな人な入れたほうがよい。
入れない場合の想定稼ぎ時間は、10時間に満たないくらいだろうか。
個人的お勧め度: ★★★★★★★★★✩(9/10)