行きつく先は、逃避行 ― Dreamscaper(レビュー)

スタイリッシュシューティングアクション。


[タイトル]
Dreamscaper [公式サイト] ※steam公式

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / XBox One / Nintendo switch

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
10時間強 / ノーマルエンディングまで


はじめに

ローグライトアクションというジャンルは、インディーを中心にとても有名だ。
かのHADESやDead Cells、Risk of rainなどなどとにかく優良な作品が多い。
今回レビューするDreamscaperも、その系譜だ。

本作は、ローグライトアクションでありながらも、ややその要素が弱い
同一ジャンルのゲームと比較して、特殊な仕上がりになっている。
だが、その「特殊な感じ」も、なかなかに悪くない。

ということで、さっそくレビューに入りたいと思う。

 

現実と夢の往復

本作が「普通のローグライトアクション」と違う要素は、いくつかある。
その一つが、世界観とストーリーテリングだろうか。

本作の主人公は、「現実世界」と「夢の世界(ダンジョン)」を行き来する。
バックストーリーとして「後ろ暗いもの」が仄めかされており、夢に「逃避」していく。
夢の中でその断片を垣間見ることができ、徐々に明らかとなっていく。

現実世界では、町の人々と交流をするのがメインだ。
その交流を通して、ゲーム的なスキルなどを獲得していく。
現実と夢を往復することで、夢の完全踏破を目指していくのだ。

インディーゲーで良質なローグライトアクションは、それなりに数が多い。
だが、ストーリーや世界観にある程度の気配りをし、ゲームに落とし込む作品は少ない。
インディーゲーでありながら、そういった部分に力を入れた点は評価できる。

とはいったものの、ストーリーは非常に抽象的であると同時に、演出面がやや弱い。
ストーリーに好き好きはあるため、ここではその内容について評価はしない。
だが、「夢と現実」に対しての「ゲーム的な融合」が見られなかったのは残念だった。

題材や雰囲気は非常に良かっただけに、演出次第で化けるような印象であった。

 

夢のアクションは、まさに夢のよう

本作のアクションは、近年の良作よろしく非常にレスポンスが良い。
操作感や爽快感などは、特筆するレベルでは無いものの、普通に優れている
アクションが中心であるだけに、プレイフィールはとても重要だ。

そのアクションだが、なんでもできる「夢のような」アクションだ。
なんと近距離/遠距離/cdスキル2種/アルティメット/回避/ガード/パリィが可能だ。
そしてそれは、システム上全て同居出来る。

それ故に、戦略的な「取捨選択」が行えない。
ガードと回避だったり、遠距離と近距離がトレードオフにならないからだ。
所謂「ゴッドイータ―現象」が起きており、なんでも出来るからこそ選択肢がない。

総合的に見て、「レスポンスは良いが戦略としてはイマイチ」といった感じだ。

 

ローグライトと言いつつ、ローグライトではない

冒頭で「ローグライトとしては特殊である」と述べた。
それは、「ローグライトでありながらローグライトではない」からだ。
その点について、説明する。

まず、ローグライトといえば二つの要素から構成されるだろう。
永続的な強化などの「アンロック要素」と、道中の取捨選択による「一期一会要素」だ。
この両者が揃っているのが、良質なローグライトの条件だと私は考えている。

だが、本作はその一つである「一期一会要素」に欠けている。
そもそも、先程述べたように「アクション的な取捨選択が起きない」ことが挙げられる。
なんでも出来るからこそ、「配牌から何かを選ぶ」ということにならない。

だからこそ、アクション毎の重みづけを変える必要が出てくる。
これに該当するのが「レリック」である「キープセイク」と、「パッシブスキル」だ。
パッシブスキルは階層単位で変更することができ、遠距離や近距離などのバフがかかる。

これらが有能であれば、周回ごとに最適解が変わってくると思う。
だが、本作はこれらがかなり弱い
キープセイクは一部を除き「ただの総合バフ」だし、パッシブスキルは弱すぎる。

一応、本作はアクション毎に武器を装備することができ、かなりのアクションが存在する。
だから、相性のいいアクションを組み合わせることで、理論上は「ビルド」が可能ではある。

なのだが、装備にはレベルが存在しており、基本的に階層が進むたびに使い捨てになる。
それ故に、アイテムを「取捨選択」して「組み合わせる」ことは、なかなか難しい。
一応、低階層アイテムを使い続けるギミックもあるのだが、負担が大きすぎる。

こういった事情から、本作はローグライト的な「戦略」が、取り辛い。

 

ローグライトではないなら、何なのか

ローグライトではないなら、どんなゲームなのか?
その答えは、「普通のアクションゲーム」だ。

というのも、本作の「アクション」は、数は多くても似たようなものが多い。
例えば回避には「普通の回避」と「ワープ回避」みたいな役割がある。
ワープ回避にも種類があり、「火炎属性」みたいな感じで種類がある。

前項で述べたように、「火炎属性のワープ」で「火炎ビルド」をするのは、難しい。
だが、「ワープ回避」という「アクション単位」で選択するのは、難しくない。
それ故に、狙った「アクション」を選ぶことは出来る。

だから、ランダム要素があるように見せておきながら、本質はアクションゲーだ。
自分の好きなアクションで攻略する、というようなゲーム性になるのだ。
そしてそれは、やはりローグライトではないとも思う。

必ずしも、それは悪ではない。
ローグライトではなく、選択式アクションゲームとして見れば出来は良い。
レスポンスの良いアクションから好きなモノを選ぶのだから、当然だろう。

 

行きつく先は、逃避行

といいつつも、本作のアクションにはやや問題がある。
それは、近距離が弱すぎるということだ。
その根本にあるのは、「回避の性能差」「後半のレベルデザイン」だろう。

まず、回避の性能差だが、とにかくワープ系回避が強すぎる。
ワープ系回避は、画面半分くらいを移動する回避手段のことだ。
分かる人は「通常回避」と「猟犬のステップ2回分」で考えて貰えば正確だ。

移動距離にして数倍レベルの差があるのだが、なんと回避の無敵時間は変わらない
どちらもほぼ動作中無敵であり、全体動作時間はあまり変わらず、硬直も変わらない。
普通に、回避は「強すぎる」状態である。

だからなのか、後半に行くにつれ敵の攻撃範囲や硬直などが露骨に強化される
そして、火力がとんでもなく高くなり、ワンミスで死ぬレベルになってくる。
後半まで1時間弱かかるのに、クロスレンジで「ちゃんと」回避なんてしてられない

結果として、超優秀なワープ回避から遠距離を連打するのが最適解になってしまう。
序盤は遠距離武器が揃わないこともあり近接ゲーだが、終盤は完全に「逃避行」だ。

とはいえ、このプレイフィールが嫌な訳ではなかった。
序盤は丁寧に近接ゲーをし、最終的にはスタイリッシュシューティングになる
シューティングがなんだかんだ気持ちいいため、「遊びが無い」だけで普通に面白い。

 

総評

最近流行りのインディー系ローグライトアクション……に見せかけた、別ゲー。
スタイリッシュシューティングアクション……が近いだろうか?

ローグライト的な面白さ、に期待すると残念な気持ちになるだろう。
だが、逃げながらひたすらシューティングするのは普通に楽しい。
ひたすらボタンを押す感じになるため、ボタンを押したい人にはお勧めだ。

君もシュンシュン移動しながら一生ボタン押してシューティングしよう!

 

因みに真エンドには、10時間くらいの作業が必要なようだ。
私は、稼ぎ作業に親を殺されているためここには到達出来なかった。
アクション的な要素はほぼ変わらないようなので、レビューにはあまり関係無いはずだ。

 

個人的お勧め度: ★★★★✩✩✩✩✩✩(4/10)

error: