天井なきガチャ ― ビビッドナイト(レビュー)

己の不運を、嘆く他ない。本質がどうであれ。


[タイトル]
ビビッドナイト (Vivid Knight) [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC / iOS / Android / nintendo switch

[プレイ時間 / 進行度 ] ※レビュー時点
20時間ほど(ストーリーは4時間弱) / ストーリークリア(エンドコンテンツは6割くらい)


はじめに

今回紹介するのは「オートチェス」ライクなローグライトこと、ビビッドナイトだ。
オートチェスは、dotaのmodから始まったゲームジャンルだ。
riotがまたもやパクったTFTなんかも流行っており、一つの地位を築いたようにも思う。

私は、オートチェスの神髄は、2つあると考えている。
「どこでリソースを吐ききるか」と「最終形までのフローを設計する」ことだ。
これらは確かにローグライトと相性は良く、本作の出来にも大きく影響している。

ということで、「ビビッドナイト」はどのようにこの要素を料理したのか?
そういったところを、細かく見ていこうと思う。

 

オートチェスの基本をおさえる

「オート」チェスとは、「自動で戦闘するから」オートチェスだ。
基本的には、パーティーを編成したら終わりであり、戦闘は眺めるものである。
そう考えた時、ビビッドナイトは「セミオート」チェスと言える。

本作は、ターンの開始時に(パーティー行動と別に)ジェムを使用できる。
これは個別にクールタイムを持っており、所謂主人公スキルみたいなものだ。
これを使用したあと、パーティーが自動で行動を行うという流れになる。

それ以外のパーティー編成的なところについては、基本(?)に忠実だ。
ユニットはそれぞれ固有の「属性」みたいなものがあり、それを揃えると強化される。
麻雀の役のようなイメージで、特定の色を集めるとバフがかかる、みたいな感じだ。

こうしてみると、いろいろなユニットを組み合わせるべきと思うだろう。
だが、これまた基本に忠実な「ユニットの合成」システムが存在している。
同一ユニットを3体集めることで、ユニットを合成して強化することが可能だ。

それゆえ、プレイヤーは「合成」と「役揃え」を天秤にかけながら編成していくこととなる。

 

ローグライトの基本をおさえる

ローグライトは、すべてを失わない。
プレイすることによって得られるゲーム内通貨によって、アンロックが可能だ。
それにより、次回の旅路は若干楽なものとなっていく。

本作も、その「基本」はおさえている。
パッシブ的な「主人公のステータスアップ」は、当然存在する。
ジェム(主人公スキル)の開放もあるし、ユニットの開放もある。

また、所謂「レリック」のようなものも存在する。
これはアクセサリとして本作では登場し、これの開放も可能だ。

ローグライトとしてのテンポも良いし、開放によるリプレイ性もしっかりある。
このあたりは、本当に「基本に忠実」で、しっかりと「王道」だ。
それ故に、ベース部分の総合的な完成度は高いと言っていい。

 

オートチェスと、要素開放と、ガチャ

本作のパーティーメイクはオートチェスライクである、と先程言った。
ただローグライトと相性が良いだけでなく、ある一点で更なるシナジーを齎している。

それは、ガチャとユニットの開放だ。
オートチェスのコアは、ユニットの「属性」を揃える事「合成」させる事だ。
そして、ユニットを揃えるのはリロール……いわゆる「ガチャ」で行うのが基本だ。

その前提の上、考えてみて欲しい。
初心者向けの戦略は、「属性を揃える」のと「ユニット合成」、どちらだろうか?

当然、ユニット合成が初心者向けだ。
というのも、属性を揃えるには多くの知識を前提とするからだ。
「その属性シナジーの効果」は勿論、安定して狙うなら「対応ユニットの知識」が必須だ。

そしてこのゲームは、ゲームをプレイする度にユニットが開放される。
即ち、ユニットの選択肢とゲームのプレイ時間が比例する形になっている。
選択肢が少なければユニットが被りやすい……つまり、「合成」が狙いやすい。

このバランス感が、とても素晴らしい。
初心者は、大量の属性情報を一旦無視して、合成狙いでやってみればいい。
難しいことは、ユニットを開放した時の「使ってみたい欲」で覚えていける。

とにかく、本作のユニット開放は、プレイヤーの習熟曲線を見事にコントロールしている。
「覚えれば面白い」というオートチェスの「小難しさ」を、感じさせない。
知識によってゲームが上手くなっていく感覚を、自然と味わえる。

 

ローグライクと、要素開放と、ガチャ

ローグライクにおける、古典的な要素とは何か?
それは、「空腹度」や「アイテム」だろう。
勿論、本作にも「マナ」という空腹度と、「ジェム」というアイテムがある。

当然、ローグライト的に「ジェム」も開放が可能で、選択肢は多彩になっていく。
だが、これが致命的にゲームと噛み合っていない。

というのも、まず「ジェム」は「ユニット」同様に「ガチャ」で手に入れる
有限リソースを使用し、抽選で対象が選ばれる仕組みなのだ。
だが、開放対象のジェムには多くの「ハズレ」が存在してしまっている。

もう、言いたいことは分かるだろう。
開放すれば「奥深くなる」ユニットと違い、ジェムは「ガチャが渋くなる」のだ。
最も致命的なのは、「満腹度」を回復するジェムが非常に出にくくなることだ。

これが、兎に角きつい。
満腹度回復ジェムが引けないから、ルート取りを工夫する……のも難しい。
だから、運が悪いと普通に回復ジェムを引けずに餓死する。

傷を最も抉るのは、最初はそういう不安など無いからだ。
最初の段階では、「運が悪いとアイテムが少なくなる」くらいの制約でしかなかった。
それが、最終的には「運が悪いと死ぬガチャ」になってしまう。

この過程が、「ガチャが渋くなり」「運ゲーになる」という印象を強く齎す。
「全開放における排出率」が「意図した設計」であっても、プレイヤーはそうは思わない。
他の要素で頑張れば良かった、と思う前に「ガチャが渋くなりすぎ」と思ってしまうのだ。

プレイヤーに、プレイヤーの「選択を顧みる機会」を与えてくれないのだ。
学習で何とかするゲームなのに、判断ミスを疑う気分になれない。
「開放されて無かったら、引けた」としか、もう考えられない。

本当に「運ゲー」であるかは、正直分からない。
それでもこれは、「運ゲー」なのだ。

 

総評

オートチェスの面白さと、ローグライトの面白さ。
これを綺麗に融合させた、完成度の高い作品であるのは確かだ。
特に、オートチェスの「情報の奔流」を「ユニット開放」で中和したのは見事である。

だが、ジェム周りがそれを打ち消してしまうくらいに問題がある。
開発者目線では、きっと全開放が想定バランスのはずだ。
そして、それが多少は運ゲーだろうと「一番面白い」と思っているはずだ。

それなのに、ジェム開放の仕様がそれらの長所を破壊してしまっている。
ジェム開放の「過程」が、開発者の想定通りにゲームを受け取らせてくれない。
プレイヤーは「緊張感のあるガチャ」として、純粋な気持ちで楽しむことは出来ない。

総合的に見れば、いい感じに纏まった良作であるのは確かだ。
だが、純粋な気持ちでエンドコンテンツを走り切れるかは……難しいところだろう。

 

というか、普通に他のゲーム同様に「アンロック要素のロック」を実装して欲しい。
もしくは、回復アイテムだけはガチャ排出率をコントロールして欲しい。
それらがあれば、少なくとも私はエンドコンテンツをやりきっただろう。

なんというか、「とても勿体ない」という感じだ。
とはいえ、エンドコンテンツ中盤くらいまでは、割と良いバランスだ。
そこまでで20時間は遊べたので、十分楽しめる作品ではある。

余談ではあるが、PC版でジェム関連のmodは無さそうだった。
とはいえandroid版はこれらの問題にアクセスするmodがあるよう(?)だ。

というかapkのmod配布ってガチ違法っぽくない?どういう仕組みなんでしょ?

 

個人的お勧め度: ★★★★★★✩✩✩✩(6/10)

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