集金と戦略を両立する、狂気のレベルデザイン ― アークナイツ(レビュー)

世にも珍しい文字通りの「本格スマホ」ゲー。


[タイトル]
アークナイツ [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ
iOS / ★Android ※周回とかはpcエミュを利用

[プレイ時間 / 進行度 / ver / 課金額] ※レビュー時点
3ヵ月(150hくらい?) / ストーリー・イベント一通り / 10章実装時点 / 160円


はじめに

今回紹介するの本格スマホ()タワーディフェンスである、アークナイツだ。
タワーディフェンスは、太古のジャンルでありながらも奥深い防衛系のゲームだ。
実は本ブログでは初となる、運営型のゲームのレビューとなる。

というのも、私は運営型のゲームはあまりやらないので、当然レビューも無い。
私は仕組みからして、買い切り型と比較してゲーム性が劣ると考える。
ゲーム性を犠牲に、集金装置としての役割を持たせないといけないからだ。

本格スマホゲーにありがちな、本格的なガチャ
本格スマホゲーにありがちな、本格的なインフレ
本格スマホゲーにありがちな、本格的な札束ゲーミング

こういったものが散見されるのが、運営型のスマホゲーだろう。
だが、本作はそういったものとは一線を画す存在であると感じた。

ということで、「普通のゲームとして」評価していきたいと思う。

 

普通に、タワーディフェンスしている

タワーディフェンスというジャンルは、太古からあるジャンルだ。
押し寄せてくる敵を、ユニット(昔はタワー)を配置して防衛する。
時間経過又は敵の討伐でリソースが手に入り、それで戦力を増強する。シンプルだ。

タワーディフェンスの面白さは、ゲームによって若干異なる。
だが、基本的には「どう序盤立ち上がり」「どんな最終盤面にするか」だろう。
それを、相手のウェーブや手持ちの駒に応じて調整していくのが醍醐味だろう。

大量の敵が出てくるなら、AOEユニットを。
少量の敵が出てくるなら、単体特攻ユニットを。
飛行する敵が出てくるなら、飛行特化ユニットを。

基本的な敵の特性と、基本的な自キャラの特性。
タワーディフェンスにある「一般的な特性」というものは、十分に網羅している。
リソース面の駆け引きも当然ながら存在している。

普通に、「タワーディフェンスしている」と考えていい。

 

普通以上に、タワーディフェンスしている

前述のように、本作は普通にタワーディフェンスをしている。
だが、それだけでは「あえて」運営型のゲームをレビューしようとは思わない。
あえてレビューするのは、普通のタワーディフェンスを大きく超える水準だからだ。

普通のタワーディフェンスは、先程述べた二つの要素でほぼほぼ完結する。
「どう序盤立ち上がり」「どんな最終盤面にするか」だ。
だが、本作はそこに「配置順」「ステージ/ボスギミック」「スキル」という深さがある。

ということで、細かくその要素の特徴を述べていく。


配置順

まず配置順だが、本作は「後に出したキャラ」が優先的に攻撃される。
キャラは大雑把に地上キャラと高台キャラに分けられ、地上型の方が耐久力がある。
また、地上キャラは敵の進行を食い止めることが可能だ。

本作において、高台キャラのみでの進行阻止はかなり困難だ。
というのも、敵の進行速度は速めであり、地上キャラの足止めを前提としているからだ。
こういった事情から、序盤の立ち上がりにおいては地上から出すのが鉄板だ。

だが、後に高台キャラを配置すると、装甲の薄いキャラが攻撃優先となってしまう
それ故に、どこまでギリギリの戦力で耐えられるかが結構な鍵となってくる。
コストを溜められれば、高台>地上の順で一気に配置することが可能だからだ。

こういった側面から、「敵のウェーブに合わせたシビアな初動管理」が要求される。
確かにこれは、一般的なタワーディフェンスの初動と似てはいる。
だが、キャラのHPとヘイト管理という要素は、想像以上に選択肢を広くしてくれる。


ステージ/ボスギミック

本作におけるボスギミックやステージギミックは、相当の完成度だ。
それは単純に「高耐久」や「物量作戦」ではなく、パズル的な要素を多分に含むのだ。

例えば、あるボスは一定体力の減少毎に、“死の宣告”のようなものをする。
対象は「最もダメージを与えてきたキャラ」であり、対象の周囲にも効果を及ぼす。

これは、「敵体力の管理」「与ダメージの管理による誘導」を要求する。
それらを、ボス以外の敵の進行を食い止めつつも行う必要があるのだ。
これは純粋な「DPSによる征服」とは違った要素であり、とてもパズル的である。

本作にはこのようなギミックが、かなりの種類存在している。
他にも一つ例を挙げると、配置順を活かしたデコイ的なギミックも存在する。
こういった理由から、ステージの攻略は毎回新鮮であり、攻略過程がかなり楽しい。


スキル

スキル……というより、キャラと言ってもいいかもしれないだろうか。
まず、本作のキャラには大まかな役割を決める「職分」がある。
「重装」タイプなら、多くの敵を食い止められる……みたいなものだ。

これについては、普通のタワーディフェンスにあるタワー種別のイメージで良い。
ただ、本作はそこに「パッシブスキル」「アクティブスキル」が付いている。
基本的には「職分」に応じた内容となっているのだが、これが要素として面白い。

というのも、これにより「最終盤面」「立ち上がり方」に特色が出てくる。
スキル同士のシナジー的な運用をすることで、最終盤面は無数に存在出来る。
スキルの発動タイミングで、「立ち上がり方」にタイミング的な奥深さが生じる。

「ぼくのかんがえたさいきょうのくみあわせ」で遊ぶ余地もあれば、奥深さもある。
ビルド的な面白さもあれば、アクション的な面白さもある、といった感じだ。


様々な理由から、戦略面について言えば文字通り「本格的」なタワーディフェンスだ。
というか、ここまで戦略性の高いタワーディフェンスは、そうそうないレベルだ。

 

天才的なレベルデザイン

本作の凄まじいところは、上記の「戦略性」を「スマホゲー」と同居させていることだ。
まず大前提として、スマホゲーから「課金ガチャ」と「育成コスト」は切り離せない。

高い育成コストで、課金による近道を大前提とする。
高レアを非常に強くすることで、課金による攻略を前提とする。
こういった戦略を取らないと、そもそも集金出来ないから仕方が無い事ではある。

だが、本作はそれを天才的なレベルデザインで乗り切っている。
言語化が難しいレベルで天才的なのだが、書けるだけ書いていこうと思う。


育成面とステージ攻略の塩梅

まず勘違いして欲しくないのだが、本作の育成コストは普通に「高い」
一つのキャラを最高レベルにするには、一ヵ月はかかると考えて良い。
なのだが、本作はそもそも「最高レベル」にする必要があまりない

中くらいのレベルであれば、それなりに量産できるくらいにコストは減る。
そして、本作における「最高レベル」と「中くらいのレベル」の差は、とても小さい。

その差は、「敵を数体多く倒せるか」というくらいのものだ。
初動の立ち上がりにおいて、「敵を数体多く倒せるか」は、大きく感じるかもしれない。
だが、その差はキャラ1体分には遠く及ばず、体感では1.2キャラ分になる程度だ。

だから、「頑張って最高レベルにする」より「初動を詰める」方が遥かに効率的だ。
初動を詰めて、1キャラ分の時間やコストを捻出したほうが遥かに良い。
というより、そもそも1キャラで雑に解決できるケースはそこまで多くはない。

そして、そもそも圧倒的に育成不足であるならちゃんと警告してくれる。
肌感覚としても、初動でミスったかステータスで押し切られたかは理解しやすい。
それ故に、「これは初動の問題である」という「自己責任感」が発生しやすい。

1キャラに依存して雑に攻略するのではなく、ちゃんと複数キャラで戦略ゲーをする。
そういった普通のゲームとしての面白さを、普通に楽しめるような造りになっている。

ルート毎に複数キャラによるパズルを要求するが故に、ゴリ押しが難しい造り。
無理矢理言語化するなら、たぶんそういった感じになるだろうか。


課金ガチャとステージ攻略の塩梅

まず最初に言っておくが、本作は無課金でも一切構わない。
それどころか、個人的には「無課金」が「課金」より楽しめるようになっている。
これは、はっきりいって異常なことだ。

そもそも本作における「ガチャ」は、無課金でも十分に出来る
最高レアのキャラであっても、そこそこのペースで手に入るだろう。
無課金と課金の「差」は、「高レアの数」と「種類」だろう。

高レアと言っても職分で尖っているので、種類が無いと毎回起用していくのは難しい。
複数持っている課金者は、毎回高レアを起用出来る、という感じだろうか。
そしてその高レアだが、「タワーディフェンス的な要素」を大体一つ無視できる。

例えば、最高レアはスキルを適当に使ってもDPSがそこそこ高かったりする。
差はそれなりにはあるが、スキルタイミングを見計らうならそこまでの差はない。

例えば、最高レアは配置順を無視しても倒れないくらいの性能を持っていたりする。
それは確かに大きな差ではあるが、配置順を頑張れば何の問題もない。

例えば、最高レアばボスギミックが有効に働く回数を減らすことが出来たりする。
それでも、普通にギミックを攻略するのであれば一切問題が無い。

本作の最高レアは、純粋に「少し楽が出来る」範囲に留まっているのだ。
なんなら、最高レアの数が多すぎないほうが、「戦略性が高くて面白い」。
これがなかなかに凄いところで、無課金の方が純粋にギミックを楽しめるのだ。

勿論、課金者向けのエンドコンテンツはあることにはある。
だが、それは本当に自己満足的なものであり、ある種の「救済措置」な印象だ。
高レアを揃えすぎてしまったら、逆に物足りなくなるだろうからだ。


こういった理由から、「スマホゲー」なのに「戦略ゲーの余地」がある。
これは本当に凄い事であるし、レベルデザイナーの力量が尋常ではない。
本当に天才的なレベルデザインである、としか言いようがない。

 

総評

本格スマホ()なのに、普通にちゃんとタワーディフェンスしている。
それどころか、一般的なタワーディフェンスより戦略性が高い。

集金装置であるにも関わらず、戦略性を維持している。
高レアの気持ちよさや強さを維持しつつも、楽が出来るのは少しだけ。
寧ろ、課金しないほうが面白いバランスになっている。

「本格スマホ()」が、文字通りの「本格スマホ」だったのは、正直初めてだ。
これが無料で……というか、無料の方が面白いというのは如何なものか?
こんなのが無料だったら、他のタワーディフェンスに勝ち目があるのか?

とにかく、このゲームのレベルデザインは異常だ。
何度も言うが、ここまで設計が素晴らしいゲームは見たことが無い。
やっていて感動するレベルであるし、その設計手法が想像できない。

集金装置とゲーム性を両立させた、天才的なレベルデザイン。
それでも、インフレからはきっと逃れられない。
この天才性が維持出来るのは、今だけかも知れない。

だから、興味があるならすぐにやった方が良い。
無料で、この天才的なデザインに触れないのは非常に勿体ない。

 

余談ではあるが、本作にはローグライク的なモードもある。
ローグライク的なモードだけ見ると、若干選択肢や戦略部分に不満点はある。
それでも、ステージ部分の戦略性は非常に高い

正直言って、有象無象のローグライクよりも普通に面白い。
それくらい、基本的なタワーディフェンス部分の完成度が高いのだろう。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★★★★★(10/10)

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