体感型サバイバルシミュレーション ― Frostpunk(レビュー)

過酷な世界では、カロリーが最も重要である。


[タイトル]
Frostpunk [公式サイト] ※steamリンク

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC / PS4 / XBox one

[プレイ時間 / 進行度 ] ※レビュー時点
5時間ほど / メインストーリークリア


はじめに

Frostpunkは、極寒の地を生き抜くサバイバルシミュレーションゲームだ。
資源、労働者、法律、探索。
生き抜くために様々な要素を管理し、寒さに耐えられるコロニーをつくるのだ。

本作は、パッと見の印象通りなかなかに「重厚」なゲームだ。
シミュレーションで、なおかつ自然系で、サバイバルで、洋ゲー。
恐らく、これほどまでに「重厚」なテーマを集めたゲームはそうそうないだろう。

ということで、「約束された重厚ゲー」のレビューをしていこうと思う。

 

「重厚」なゲームプレイ

約束された重厚ゲーは、やはり重厚……もとい高カロリーだった。

シミュレーションとしての、管理要素の多さ。
リアルでシビアな現実を見せつけてくる、イベントの数々。
温度を直感的かつ美しく表現する、グラフィックの業。

要素一つ一つが、ただただ「重い」のだ。
「サバイバル」における「重く暗い雰囲気」が、しっかりと表現されている。

これは、細部に関しても余念がない。
細かい手記や、フォント。操作におけるSE。
ワンテンポ遅れるようなしっかりした操作演出も、「重厚さ」に貢献している。

洋ゲーの得意分野である、映画的な重厚さ。
こういった部分については、流石の完成度といったところだろうか。

 

「重厚」なサバイバルシミュレーション

冒頭でも述べたように、本作は生存するための集落を作るゲームだ。
シミュレーションの要素もあれば、町づくり的な要素もある。
基本的には、労働者に資源を採取してもらい、建築をするという流れとなる。

そうやって作った建築物は、特定の資源の採取効率を上げたりしてくれる。
本来の目的である「寒さへの対策」を進めるため、バランス良く建築していく。
「効率的な人員配置」による資源確保と、「建設」における「選択と集中」がキモだ。

……というのは、しっかりした「シミュレーション」であれば、の話だ。
本作には、正直言うと「選択と集中」的な要素は一切存在しない。
いわゆる「街づくり」の方向性……ビルド的な要素は存在しないと言っていい。

シミュレーションとして、管理する要素はものすごく多い。
だが、それはだたの「管理作業」であって、そこに選択の余地はない。
だから、最終的には一本道のようなゲームプレイに帰結するだろう。

良くも悪くも……というか、これに関しては「悪い意味で」重厚だ。
プレイヤーに与えられた管理要素と、すべき判断のバランスが非常に悪い。
内容に対してただただ煩雑極まりない、という印象が強い。

 

ゲームとしての「重厚さ」

以前、tainted grailのレビューでも書いたが、「重厚さ」は「面白さ」と直結しない。
表現的な重みがあったとして、それはゲームとしての面白さではない。
あくまでそれは、一つの「表現」に過ぎない。

そして、本作の重厚さは「シミュレーション」としての「面白さ」を上げてはいない。
それどころか、前述のように「面倒さ」に拍車をかけている
であれば、「表現」として適当な映画でも見たほうが圧倒的に有意義ではないか。

と思いきや、本作は最後の最後に「逆転ホームラン」をかましてくる。
ネタバレになるため細かくは書かないが、終盤~エンディングの演出が大変素晴らしい。
本当に息が詰まるというか、お祈りしたくなるような心持ちにさせてくる。

そして、その演出が際立つのは「面倒な重厚さに付き合った」からに他ならない。
判断は分かり切っている。ゲーム的な戦略はあまりない。ちまちま作業が苦しくなってくる。
だが、「手塩をかけて、ここまで生き延びてきた集落である」という感情は強く残る。

この終盤の苦しさは、ちゃんと「プレイ」しないと体感出来ない。
プレイヤーも苦しいからこそ、サバイバルにリアリティが生まれる。

だからこそ、これはゲームでなければならないのだ。

 

総評

兎に角重厚。だが、ゲームプレイは割と退屈。
ゲームプレイそのものと、重厚さのかみ合わせは非常に悪い。
ゲームとしての面白さは、感じることはできなかった。

だが、そのゲームとしての「めんどくささ」が、やりたい表現の布石になっている。
そういった意味で、非常に印象に残るゲームであった。
とはいえ、いろんな意味で重すぎて他のシナリオをやる気にはなれなかった。

本作は確実に「やらないと良さが分からない」ゲームだ。
動画で見たり、攻略を見たりした時点でただの「劣悪シミュレーション」になる。

結局、良い意味でも悪い意味でも重厚……なのだが、これは正しい「重厚さ」だろう。
やり切った時のなんとも言えない感覚は、是非味わってみて欲しいものだ。
万人受けはしないだろうが、世界観や表現が気になるならかなりお勧めだ。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★★★✩✩(8/10)

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