疲労への特効薬 ― ピコエーテル(レビュー)

用法用量を守って使いましょう


[タイトル]
ピコエーテル [公式サイト] ※httpなので警告出るかも、怖かったら自分で検索してね

[対応ハード] ※★でプレイ  
★PC

[プレイ時間 / 進行度 ] ※レビュー時点
20時間程(実操作は10時間程度) / 一通りクリア


はじめに

何この同人っぽいゲーム?と思う方も結構いるのではないだろうか。
今回紹介するのは、同人界のカイロソフト犬と猫の最新作「ピコエーテル」だ。
ジャンルは経営シミュレーションと言うのが近いだろうか?

本作品……というか、本サークルの魅力は「変わらないこと」だ。
もう何年も……というか何十年も変わっていない気がするくらい、変わっていない。
だが、「それでいい」という「原初の面白さ」みたいなものを維持出来ている。

開発エンジンがあまりにも古く、未だにfullHDではないこと。
令和なのに公式サイトがhttpsではなく、httpであること。
こういったことからも、なんというか「化石感」が滲み出ているだろう。

本作は特に、ここ最近の作品の中でもかなり「原初寄り」な出来栄えだったと思う。
ということで、そのあたりを詳しく見ていくとしよう。

 

クリッカーに毛が生えたデザイン

一昔前に流行ったゲーム、クッキークリッカーをご存知だろうか?
放置やクリックでクッキーを獲得し、獲得したクッキーで獲得率を上げるゲームだ。
そして本作は、「だいたいクッキークリッカー」みたいなゲームだ。

定期的なクリックや設備投資などを活用し、ひたすら売上を上げるという内容。
「選択と集中」でもって、経営戦略を決定し成長を加速させる。
そんな内容だが、クッキークリッカーとも経営シミュレーションともやや異なる。

というのも、シミュレーションとしては「簡単すぎる」
確かに「選択と集中」要素はあるが、その選択における「デメリット」が存在しない。
大きく選択を誤ったとて、多少成長率が落ちるくらいに留まる。

逆に、クッキークリッカーとしては「意思決定が多すぎる」
完全に放置し、ただ設備を増強するだけのゲームではない。
パッシブスキルや、アクティブスキルなどの中からシナジーを考える要素があるのだ。

クッキークリッカー風シミュレーション、といったところだろうか。

 

大昔のゲームジャンルの持つ、面白さ

こういった、「クッキークリッカー風シミュレーション」は昔からあったように思う。
何も考えずにぼーっと出来て、それでも最低限の判断でゲームに介入は出来る。
そういったゲームが寧ろ、(経営)シミュレーションの主流だったようにも思う。

この、「ぼーっと出来る」のと「ゲームに介入している感」のバランスが、キモだ。
頭を使わないただのクリッカーは、作業感が強くなる。
判断が難しすぎると、どうしても本腰を入れてやらざるを得ない。

特に本作は、このあたりの「シミュレーション的な煩雑さ」を大幅に削減している。
借金をする。維持費の計算をする。複数リソースの確保手段を整備する。
こういった、ちょっとしたシミュレーション要素すらも大幅に簡易化されている。

それでも、「ゲームに介入するときの判断」だけは、より洗練されているように思う。
「どのように売り上げを伸ばすか」という命題に対しての、アプローチは多岐にわたる。
要するに、一番おいしい判断のところだけを切り取ったようなバランスだ。

だから、このゲームはなんだかんだ原初のゲームとしての射幸性を持っている。
特に苦労せず、それでも判断はして、そして判断そのものにリスクはない。
インスタントに、楽に、果実だけを得るような仕組みとして非常に秀逸だ。

 

令和では出来なくなった、原初のゲーム

ここまで書いてきて、こう思った読者もいるのではなかろうか。
「昔ながらのジャンルを、昔のまま惰性で続けてるだけでは?」と。
進歩を続ける現代社会で、そんなゲームが通用するのだろうか?

答えは、「昔ながらのゲームが消えたから逆に独自性が高くなった」だ。
このような「経営シミュレーション」は、令和において二つに分岐したように思う。

一つは、純粋なシミュレーション。
兎に角リアルに、兎に角判断を難しく。そういった「奥深い」ゲーム群に進化した。

もう一つは、放置クリッカー。
クッキークリッカーのように、放置を主軸としたエンドレスなゲームだ。

この、「後者」は、ピコエーテルのような作品に近いジャンルとして……退化した。
ぼーっと出来る「疑似」シミュレーションは、「エンドレスな集金装置」として強すぎる。
終わりなき放置ゲーとして、インフレ前提のアプリゲーばかりが開発されるようになった。

今や、「終わりがあり」「丁度いい判断を要求する」ようなゲームは、ほぼ存在しない。
一生終わらず、しかもインフレで判断が無意味になるような放置ゲーしか残っていない。

だから、ジャンルそのものに価値があり、希少性が高いのだ。

 

総評

ぼーっと出来て、それでいてゲームに干渉出来て、成果だけは確実に得られる。
裏切らない射幸性の供給装置として優秀な、太古のゲームジャンルの生き残り。
それが、本作を表す最も分かりやすい表現と言っていいだろう。

だが、原初のゲームには、欠点がある。
単純すぎて、純粋な「深み」が無いことだ。
そしてこのゲームは、あまりにも単純で、原初を極めすぎている。

だから、本作は体調の良い時にやるべきではない。
体調不良で時間を持て余している時にでもやるべきだ。

本作は「疲労への特効薬」なのだ。
数日で終わり、放置アプリと違って後腐れなくスパっと辞められる。
真面目なゲームをやる気力が無い、そんな時に「服用」してみてはどうだろうか。

 

余談ではあるが、最近このような記事を書いたのは本作のレビューをするためだったりする。
それくらいにこのジャンルは割と存続して欲しいというか、本サークルは応援している。
願わくばUIや開発エンジンだけでも令和仕様になったりしませんかね?

 

個人的お勧め度(疲労時): ★★★★★★★✩✩✩(7/10)
個人的お勧め度(健康時): ★✩✩✩✩✩✩✩✩✩(1/10)
個人的お勧め度(総合): ★★★★★★✩✩✩✩(6/10)

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