重厚長大。 ― Tainted Grail: Conquest(レビュー)
その重さが、ボディーブローのように効いてくる。
[タイトル]
Tainted Grail: Conquest [公式サイト] ※無かったのでsteamリンク
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / Xbox One
[プレイ時間/進行度] ※レビュー時点
10時間 / 難易度ノーマルクリア(エンドコンテンツ&ストーリー回収未プレイ)
はじめに
今回紹介するのは「Tainted Grail: Conquest」だ。
どうやら原作があるっぽく(?)、それをベースにしたローグライトカードゲームだ。
ローグライトカードは最近流行りで、最早乱発されているとさえ感じる。
本ジャンルはベースが確立していて、割と「システム勝負」になりやすい。
裏を返せば、アイデアで大変面白くなる可能性を秘めているジャンルだ。
Tainted Grail Conquestは、そんな「アイデア勝負」のジャンルでは少し異質だ。
というのも、明らかに「重厚さ」を前面に出しているからだ。
実際にグラフィックや会話イベントなども骨太で、ある種「コンセプト」とも言える。
だが、本作の「重厚さ」は、良い「重厚さ」ではなかった印象だ。
ゲームとしては割と及第点だし、悪くはない。
重厚さが、ゲームの面白さを潰してしまったように感じた。
では、詳しく見ていくとしよう。
美麗なグラフィックと、豊富なイベント
Tainted Grail Conquestのグラフィックは、それなりに綺麗だ。
大作RPGに比べると見劣りはするものの、ジャンルとしては突出している。
ローグライクカードは、ドットや2DだったりPS2レベルが普通だからだ。
Tainted Grail Conquestのイベントは、それなりに豊富だ。
NPCすべてにストーリーがあり、周回する中イベントが進行していく。
一切ストーリーが無いゲームが大半のジャンルにおいて、これは珍しい。
Tainted Grail Conquestのビルドは、かなり豊富だ。
パッシブスキル、クラス、カードに拠点アップグレード。
普通のゲームと違い、なんと装備やアイテムシステムもある。
Tainted Grail Conquestの戦闘は、かなりの要素がある。
キャラクター全てにある「攻撃/被弾における固有の乗算値」に始まり、
複雑なエネミー特性やカード特性など盛りだくさんだ。
それゆえ、本作は一言で言うならやはり「重厚」である。
使っているパーツが、ジャンル平均を大きく上回るのだ。
重厚すぎるビルド
本作のビルドは、とても種類が豊富だ。
そして、一回のランで大量のパッシブを重ねることが出来る。
これは一見、高い戦略性・リプレイ性があるかのように感じる。
だが、これは逆に重厚“”すぎる””。
ローグライクカード……もとい、選択を「カード」化したゲームには利点がある。
選択の結果が非常に分かりやすく、戦略的に考えやすいのだ。
例えば、普通のRPGで攻撃が10&素早さが10上がるとしよう。
プレイヤーはこの点において、期待値レベルでどう変わるか把握できない。
計算式がマスクされていて、結果はやらないと分からないからだ。
本作は、これと似たようなことが起きてしまっている。
10個のパッシブと、6個の装備パッシブ。敵味方の攻撃乗算値。
これだけで真面目に計算するのが苦しいのに、更にカード効果などが加わってくる。
それ故に、雰囲気でビルドして雰囲気でカードを使うことになる。
「雰囲気」というのは、「明らかに期待値が高そう」という意味だ。
これはRPG的な意思決定であり、「カード」としての良さが全く発揮されないのだ。
RPGがそれでいいのは、局面が毎回異なるからだ。
そこに意識を割かせるより、別のところにあるメインの前座とするのだ。
でも、本作はリプレイを前提としたゲームだ。
メインの楽しみはシナジーとデッキビルドなのだから、そこで楽しませるべきだ。
重厚すぎるグラフィック
本作は、マップは3Dフィールドを移動する方式だ。
当然戦闘も3Dで、モーションもしっかり作られている。
カードは全てホログラム加工的な動きがあって、美麗だ。
でも、求めている「重厚さ」はそこではない。
3Dフィールドで出来る動きは、動かない敵シンボルにぶつかるだけ。
でも、しっかりしたフィールドだから移動に時間を取られる。
戦闘は3Dなのだが、そのせいかロードのような間がたまに挟まる。
テンポよくカードを使いたいのに、使わせてくれないのだ。
カードは確かに美麗なのだが、イラストの差別化が出来ていない。
一目見てどのカードかが分かり辛いので、確認が面倒だ。
だから、本作の重厚さで感動するのは最初だけだ。
リプレイを重ねると、「重厚さ」が「面倒臭さ」になってしまう。
一度しか語られないストーリーなどに、全リソースを割いて欲しかった。
総評
システム的には、すべてが及第点の良く出来たゲーム。
ジャンル的な面白さは一応あることにはあるし、悪くはない。
だが「重厚さ」が仇となり、リプレイをする気にはあまりならなかった。
「重厚さ」とは裏を返すと、「インパクトの強さ」だ。
一度しかないイベントや景色なら、インパクトは強くていい。
だが、何度もあるイベントや景色であるなら、それは強すぎて辟易してしまう。
リプレイ性の高いジャンルに、過度な重厚さは不要なのだろう。
実際どうかは分からないが、そう思わせるゲームだった。
個人的お勧め度: ★★★✩✩✩✩✩✩✩(3/10)