
アライズは正統進化だったのか? ― テイルズ オブ ベルセリア(レビュー)
「正統」かどうかは諸説あり。
[タイトル]
テイルズ オブ ベルセリア [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★PS4 ※PS5から起動 / PS3
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
30時間くらい / ストーリークリア
はじめに
テイルズオブシリーズという、割と有名なipがある。
最新作は2025.1時点で「アライズ」であるが、これは若干「テイルズっぽくない」。
……という趣旨のレビューを「アライズ」でしたのだが、その時にこう思った。
「テイルズらしさ」は、私の感覚が古いからではないか?と。
というのも、なんだかんだ私はテイルズをやっているものの、いくつかスキップしている。
だから、直近のテイルズである「ベルセリア」をふとやってみよう、と思ったのだ。
ということで、需要のない自分語りはさておき、
テイルズシリーズは実は「変わり始めていた」のか、レビューしていこうと思う。
(私はP、E、D2、R、Gf、H、X、Z、Arise、マイソロ1/2をプレイ済み)
実はアライズっぽいストーリー
やっててまず思ったのは、ストーリーがアライズっぽい感じだというところだ。
分かりやすく「復讐」という目的があり、一貫して最初から軸が存在している。
良し悪しでいえば「わかりやすい」ため、プレイしやすくはあった。
過去のテイルズは、多くが「流れで」冒険を始めることが多かった。
その中で、何かに巻き込まれる形で「冒険を強要」されることが多かった。
これは、過去作は基本(ほぼ全て?)この流れになっているのではないか、と思う。
で、個人的には「どちらでもいい」というのが正直なところではある。
ただ、一貫したストーリーと比較して、寄り道的な遊びは少なく感じるところだ。
これは、因果関係として「一貫しているから」「遊びが少ない」かどうかは分からない。
とはいえ、「ベルセリア」「アライズ」で感じる雰囲気は、かなり似ている。
最初から目的が一貫しているので、仲間になるキャラクターも目的が似てくる。
割と利害で纏まっているから、少しドライでありつつも仲間意識がある感じになってくる。
なんというか、ビジネスパートナーっぽい感じというか、相棒というか。
そういう「硬派さ」が漂っており、「頭お花畑」な感じはほとんどしない。
じゃあこの「お花畑感」が「テイルズらしさ」なのか?というと、何とも言えないが。
総じて、「わかりやすい」が「ありきたり感」は拭えない印象だ。
ゲームを進める理由にはなるが、そのためにゲームを進めたくなるような感じでもない。
やはり尖ったオタクらしさがないと、多くの作品と作風が似てしまう印象だ。
まあただ、皮肉なことに「ストーリーの内容」は今までの作品と比べかなり良かった。
ただ、「ストーリーが比較的いい」と言っても「市場的には平均」ではある。
そして、ストーリーの方向性で失ったもののほうが大きいな、という感覚がある。
キャラクター、スキット、掛け合い
もう一つのテイルズらしさといえば、癖の強いキャラによる癖の強い掛け合いだ。
本作でも例にもれず、この辺りは標準搭載されているように思う。
とはいったものの、過去作に比べるとやや癖は少ない。
というのも、一貫した目的のもとに集まってきた利害関係者みたいなパーティなので、
どうしてもドライな関係というか、クソガキが罵り合っている感じではないのだ。
そのあたりを鑑みると、意外とアライズは「正統進化なのかも」と思った次第だ。
ただベルセリア単品で見た場合は、ややどっちつかずではある印象を受けた。
まあ、なんだかんだギャグテイストなものは存在するので、いつもの感はあるのだが。
しかしながら、前述のストーリー同様「突き抜けていない」。
これはアクションなのか、戦略なのか?
テイルズシリーズを語るうえで外せないのが、戦闘だ。
当時では珍しいアクション性の高い戦闘を搭載して、戦闘の面白さはずっと有名だ。
とはいったものの、昨今ではアクション性は標準搭載であり、優位性は薄れている。
その上で、本作の戦闘を評価するとなると……なんというか、中途半端だ。
本作の戦闘だが、全ての技が相互に連携可能となっており、通常攻撃がない。
自由に特技を組み合わせ、オリジナルコンボで敵を殲滅……という、雰囲気を受ける。
のだけど、実際はそうではない。
というのも、本作の技には全て「攻撃属性」があり、相手の弱点を突くことが出来る。
そしてこの弱点だが、敵の弱点属性を全て突くようなコンボをすることが前提になっている。
何故ならば、「弱点を突くかどうか」が極端なまでに重要になっているからだ。
弱点を突けば、圧倒的な攻撃力と圧倒的なスタン発生率で「ほぼハメられる」。
逆に弱点を突かないと、攻撃はガードされ、相手攻撃でスタンして「ハメられる」。
弱点の有無で、ハメるかハメられるかがはっきりと分かれてしまうのだ。
その上で、敵ごとに適切なコンボを「その場で出す」のは極めて困難なのだ。
例えば、「隙の少ない相手には弱」みたいな「使い分け」が、極めて難しい。
技の攻撃性能ではなく、弱点属性のほうが遥かに重要になっているからだ。
だから、戦略としては「敵ごとにコンボを設定しなおす」のが最適解になる。
そして良くも悪くも、一つのマップには数種類の敵しか存在しない。
結果、ステージの敵ごとにコンボを複数設定しておき、どれかを使う形になる。
なので、プレイフィールとしては「アクション」な感じが一切しない。
戦闘は基本的にボタン連打で、戦闘前のコンボ設定でほぼ全てが終わっているのだ。
まあ過去作も正直、ボタン連打みたいなところはあった。
だが、それは「楽しいボタン連打」だったのだ。
好きな、使ってて気持ちいい、そんな技を押し付ける行為だったからだ。
それに引き換え本作は……これ、コマンド戦闘で良くないか?と思わざるを得ない。
技の気持ちよさよりも、とにかく最適なコンボを組むだけのゲームだからだ。
やり込み要素不足というか、変わり映えがしない
テイルズシリーズといえば、GRADEによる「強くてニューゲーム」もあるだろう。
特に経験値の大幅増加や、特殊ゲージの回復など大きな変更要素が入ることが多い。
これらを使って、「味変した二周目」を楽しむのも、醍醐味だろう。
しかしながら本作では、このGRADEの効果がかなり薄い。
薄いというか、まあ別に二周目やらなくていいかな……と思うくらいには魅力がない。
出来ることは、結局「ステータスをややインフレさせる」くらいのものなのだ。
だから、二周目は別の方向で遊んでみよう、となりにくい。
個人的にテイルズは二周目からが本番、というくらいには期待しているのだが、
本作では二周目をやる気がせず、一周で終えてしまった。
その一因はGRADEシステムにあるが、前述の戦闘にも理由はある。
本作の戦闘は敵ごとにコンボを設定するだけで終わるため、個性が出にくい。
どのキャラでもやることは同じで、プレイフィールに変化がないのだ。
だから、二周目は別キャラとGRADEで味変テイルズ……をする気が一切しなかった。
総評
「テイルズらしさって何なんだろう」と改めて感じる作品であった。
テイルズっぽさを残しつつも、オタクっぽさは少し減らし、ビジネスライクに。
アクション面の優位性が消えてしまったが故に、システムを工夫したが逆効果。
そうしてみた時に、アライズは実は「正統」進化だったのかもな、と思った。
ベルセリアから見てみれば、方向性は一致したうえで進化している。
だからベルセリアの時点で、テイルズは変化しようとしていたのかもしれない。
まあでもなんというか……シリーズが終わりを迎えている感じは否めない。
今となっては劣悪寄りのアクションに、尖っていないストーリー。
この方向で進化させたらアライズになるけど、それは他社作品と被る。
ストーリーやキャラはオタクに尖らないと、海外のゲームに勝てるわけがない。
アクションに戦略性を入れたところで、インディーゲーにすら勝てない。
アクションは並以上を作るのは最早至難の業なのだから、勝ち筋はキャラにあるはずだ。
まあそこそこ遊べたけれども……なんというか、なんとも言えない気分になった。
個人的お勧め度: ★★★☆☆☆☆☆☆☆(3/10)