
エルデンリングだから、出来たこと ― ELDEN RING NIGHTREIGN(レビュー)
シリーズファンにサービスを、それ以外にはジャンルの可能性を。
[タイトル]
ELDEN RING NIGHTREIGN [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC(steam) / PS5 / PS4 / Xbox X|S / Xbox One
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
40時間弱 / 全ボスクリア / ver1.01
はじめに
今回レビューするのは、あのエルデンリングのスピンオフ作品だ。
「エルデンリング ナイトレイン」は、いわゆる「ローグライト」に該当する。
そのジャンルの中でも、「ソウル系のアクション」で「coop」が出来る。
ここは明確な強みであり、特徴でもあるだろう。
この要素をどのように調和させるのか、フロムのゲームだけに期待がかかる。
結論、「結構エルデンリングだな」という印象だった。
それは良くも悪くも、そういう感想であった。
まあ前置きはさておき、さっそくレビューに入っていこう。
エルデンリング*ローグライト
本作の特徴はなんといっても、エルデンリングのIPとローグライトの掛け合わせだ。
これは文字通りの実装になっており、想像以上にエルデンリングっぽい。
そしてこれには当然「いい面」と「悪い面」が存在する。
まずアクションだが、これは丸々エルデンリングと考えてよい。
あの理不尽なAOEも、意味不明なくらいのディレイも、一撃7割のアホさも。
これらすべて、エルデンリングの味そのまんま、といった出来になっている。
良く言えば「重厚で攻略しがいがある」。
が、悪く言えば「アクションが難しすぎる上に破綻している」とも取れる。
そしてこのゲームにおいては、後者の印象が強く残ってしまっている。
というのも、このゲームは30分ほどの道中でレベルを上げてから最終ボスに挑む。
この最終ボスの攻略が一番の難所であり、メインディッシュなのは言うまでもない。
なのだけど、このボスで「エルデンリング」をやらされるのだ。
エルデンリングのボス戦は、「攻略する気が起きない」ゲーム性だった。
攻撃力がお互い高いので、攻防の試行回数が少ないからだ。
その上で一撃が重すぎるので、真面目にやるより「何回か戦って1を引き」たくなる。
だがこのゲームでは、30分の前座がある。
そんなゲームで、真面目に攻略しないのはかなり難しい。
だけど、真面目に攻略するようなアクションでもない。
結果、道中の作業を効率化・最適化することで、結局ゴリ押すことになる。
モーションは致命的なものをいくつか覚えるだけで、ちゃんと攻略はしない。
アクション偏重に見えて、アクションを攻略する気にならないのは大きなマイナスだ。
それでも初見殺しで全てを虚無にされるので、ここの不快ポイントだけは残る。
一回の挑戦に時間がかかるゲームで、瞬殺系のボス戦は噛み合いが悪く感じる。
それでもローグライトならよくない?
賢明な読者の方々はこう思っただろう。
「そもそもローグライトって上振れ無双するゲームでしょ」と。
だったら、「逆にアクション面が重要じゃないほうがいいだろ?」と。
その言論は、半分正しく、半分誤っている。
半分の正解は、「最終的にはYESで、道中を効率化してゴリ押せばいい」からだ。
半分の不正解は、「道中の効率化」以外で「上振れ」があまり起きないからだ。
というのも、本作のローグライト要素では「シナジー」がほとんどない。
上振れる可能性のある要素は、最大で10%程度のパッシブ(最大6)くらいだ。
すごく上振れて、2倍火力が出ればいいかな……くらいなものになっている。
そして、こういうゲームに標準搭載されているであろうリロール相当が存在しない。
だから、1プレイの中で、乱数を最適化することが非常に難しい。
ルート取りについても、実は「ほぼ固定」に近く、乱数制御とは程遠い。
という感じで、ローグライトなのに「上振れを楽しむ」要素がほとんどない。
だからこそ、ルートを最適化すれば80%~100%の強さは再現できる。
それ故に、クソみたいなボスをある程度ゴリ押しながら攻略することは出来る。
でも、「それだったらボスラッシュでいいのでは?」と思ってしまう。
ルートが効率化出来た直後から、やってることはボスラッシュと大差ないからだ。
そういう意味で、本作は「ローグライト」の良さがあまり出ていない。
初期ビルド、クラス
では出撃設定できる初期ビルドはどうだろうか?
これについては、「そこそこ面白い」。
まず初期ビルドだが、本作は3つのレリックを出撃時に設定できる。
レリックには最大で3つの強化オプションが付く形になっており、
ゲームプレイに伴いランダム抽選で継続的に獲得できる。
まあ、モンハンの「お守り」みたいなものを考えてもらうのが早い。
で、この要素については割と制御できる要素であって、結構面白い。
クラスの特色と合わせて、「こういうビルドでいこう」と、決めやすい。
そして前述の乱数の少なさも相まって、割とその通りになりやすい。
だから、初期クラスとビルドに関してはそれなりの拡張性がある。
最終的には強弱は決まってしまうだろうが、ストーリー攻略レベルでは気にならなかった。
まあ、めちゃくちゃ拡張性があるわけではない。
「今回は刀にしよう」、とか「今回は炎属性にしよう」とか、その程度である。
プレイフィールとしてはほとんど変わらないので、数字遊びとしての面白さに留まる。
それでもcoopなソウルライクであるということ
ローグライトとしての上振れなし、アクションは破滅的。
ビルドはそこそこ遊べるが、プレイフィールへの影響は少ない。
ここまで聞くと、「結構ダメじゃないか?」と思うだろう。
そして実際、ローグライトとしてはダメもいいところである。
そこらへんのインディーゲーにも余裕で負けそうなくらいだ。
なのだけど、腐っても「ソウルライク」の「coop」なのだ。
「好きなビルド」で「1からダクソ」を、「coop」で出来る、みたいなゲームなのだ。
今までは物好きが時間をかけて行っていた周回プレイ的なことを、気軽に出来るのだ。
だから、「coopメインのソウルシリーズ」として見た時、確かに珍しい枠ではあるのだ。
そして、まあ腐っても素晴らしいipであるのは確かだ。
だから、なんだかんだ物珍しさと基本的なコンテンツの強さで遊べてしまう。
そういった意味で、シリーズファンであればそれなりに遊べる出来になっている。
じゃあシリーズ未経験者にとってはどうだろうか?
きっと思い入れもない。その上で操作系統は優れてるとは言えない。
ソウルシリーズの「常識」は「ゲーム内辞書」を読み込まないといけない。
たから、学習コストが高いだけの、coopアクションにしかならない。
恐らくこうなってしまうのではないか、と感じた。
総評
ローグライトとしては二流。
上振れもなければ、ルート取りもほとんど固定。
アクションはエルデンリング譲りの攻略する気が起きないゴリ押しアクション。
だけど、”セミ”ランダムで「ぼくの考えたビルド」で「ソウル系」で「coop」が出来る。
ここに最大の価値を置いたゲーム、として評価するのが妥当だと思う。
それくらい、ここの要素で一点突破しようという気概を感じる。
シリーズファンであり、coopに価値を感じる人なら十分におすすめ出来る。
また、ちょっとしたメインウェポンの差分で周回を楽しめていたならかなり好印象だろう。
だが、「ローグライト」や「アクション」を目当てにプレイするにはイマイチだろう。
総じて、「ありそうでなかった」「可能性を感じる」ゲームだったな、という感じだ。
そして、「エルデンリングのIP」と「資産やノウハウ」がないと作れないようにも感じた。
だから、「こういうジャンルが売れる可能性がある」ことを示してくれたのはとても有難い。
これからこういった「coop」*「ローグライト」が流行ってくれるなら、とても楽しみだ。
本作はローグライト要素がしっかりしていれば、めちゃくちゃ面白そうだったからだ。
というか、ローグライト要素はDLCで調整するのではないか?とすら思っている。
それくらい露骨にリロールや収束円などの乱数制御要素を制限しているからだ。
実際、DLCでボスを追加するだけだとネタがないといえばないので、意図的な気もしている。
まあこれは、DLCを待ってみるとしよう。
最後になるが、プレイする場合は情報を絶つことを強くお勧めする。
出来れば野良を廃除し、初見のメンツで固めることを強くお勧めする。
このゲームはルートの最適解を知ってしまうと、ただボスをゴリ押す作業になるからだ。
個人的お勧め度: ★★★★★☆☆☆☆☆(5/10)