
経営か、アクションか ― Aeruta アルタ(レビュー)
選ぶのは君次第……?
[タイトル]
Aeruta アルタ [公式サイト] ※steamリンク
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC(steam)
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
10時間 / ストーリークリア
はじめに
インディーと言えば!2D横スクダンジョン!
インディーと言えば!経営*アクション!
ということで、今回レビューするのは「アルタ」だ。
散々擦られ続けてきているジャンルで、パッと思いつくだけでも複数浮かぶ。
Dave the Diver・Cuisineer等、アクションで食材を集めて経営……といういつものだ。
まあこれはインディーというより、原初のゲームに近い部分がある。
本業としての経営的なパートと、それを補完する素材集めアクション。
アトリエシリーズなんかもここには相当するような気さえする、原初のゲーム。
だからこそ、両面が相互にシナジーを発揮しないと、特異なゲームにはなれない。
両面が単品でも面白くない限り、高い評価を得ることはできない。
そんな、擦られてるが故のハードルの高さがあるジャンルでもある。
そんな中、本作は名作なり得る出来だったのか……、レビューをしていこう。
インディー的世界観と良質な演出
まずゲーム内容に入る前に、世界観と演出について触れていこうと思う。
擦られているジャンルだからこそ、そもそもの「ガワ」がまずは目に入るからだ。
そういった意味で見た場合、本作の「ガワ」は結構出来が良い。
2Dドットであるがゆえにチープさは全く感じないし、それでいて動きも細かい。
更に言うと、吹き出しの出し方やキャラクターの動かし方などが非常に上手い。
敵のデザイン、キャラクターのデザイン、伝える媒体としてのドット、演出。
全て統一された世界観を形成しており、かなりのこだわりを感じる内容だ。
予算をつぎ込んだ「最高」のグラフィックにはない、インディーとしての切り口を感じた。
パン屋を経営する、ということ
では、本作のコアである「経営パート」について触れていこうと思う。
結論から述べてしまうと、経営パートは非常に浅い。
ほぼほぼ経営面で詰めることは無く、技量が出るところはない。
シナジーを形成して……ということもないし、売り方もワンパターン。
経営パートの業務はシンプルで、ただ配膳とレジ打ちをするだけ。
更に言うと、期限や固定費みたいな概念もない。
だから、最高効率で売り上げを出すインセンティブもない。
それゆえ、「要素をアンロックするとその分売り上げが伸びる」だけの仕様と言ってよい。
総じて、経営パートで考えることは一切ないと評価してよい。
また、経営パートで「気持ちいい」を感じるような部分もほとんどなく、
いわば「冒険で手に入れた素材での自機強化」に「変換作業」があるだけに過ぎない。
そういう意味で、経営パートを中心にプレイするにはなかなか厳しい印象だ。
素材を回収する、ということ
じゃあアクションはどうなのか?というと、めちゃくちゃ出来が良い。
経営のために素材集めるだけでしょ?と思いきや、そうではないのだ。
それに加えて、ビルド面やアンロックの面でも出来が非常に良い。
まずアクションだが、基本の麺棒/高機動な鞭/カウンターのレイピアから選べる。
そしてそれぞれの武器には4つのスキルがあり、結構ハイテンポにスキルを使える。
その中でも大きく評価できるポイントとして、プレイフィールが大きく異なる。
麺棒はオーソドックスながらも重量感のある攻撃が出来るし、
鞭は空中攻撃やワイヤーアクション的な機動力のあるアクションが出来るし、
レイピアは言わずもがなパリィアクションの特異性がある。
その上で更に、スキルによる武器内の差別化もなされている。
本作は経営パートの進捗に応じてスキルツリー形式でスキルを強化できるのだが、
スキルの強化内容がプレイパターンを大きく変えるものが揃っているのだ。
例えばレイピアだが、パリィを中心としたビルドにすることもできれば、
刺剣あるあるな突撃を中心としたビルドにすることもできる。
待ちか攻めか、ビルドによって大きく異なるのは楽しく、ビルド解放の面白さもある。
更に更に大前提として、めちゃくちゃレスポンスが良く、エフェクトも気持ちいい。
カウンターは派手なパリィ音が出るし、反撃行動のヒットストップは爽快だ。
当然パリィや回避などは通常攻撃をキャンセルして出せるため、不快感もない。
といった感じで、総合的に見てもアクションはかなり良質な部類だ。
アクションをメインにしたゲームよりもアクションの出来が良いし、ビルドの幅も広い。
近いプレイフィールで言うと、Dead Cellsあたりに近い感じだろう。
正直、これは経営ゲームなのか?と思わずにはいられない。
非常に良質なボス戦
本作にボスは10体いるのだが、ボス戦も非常に質が高い。めちゃくちゃ面白い。
まず感じたのは、ボス設計の一貫性とその設計の素晴らしさだろう。
理不尽ではないが、そこそこの難しさはあるという絶妙なラインになっている。
その設計なのだけど、ボスは「早い攻撃/連撃」「ディレイ攻撃」「初見殺し」を持っている。
見てから対処が困難な発生の早い攻撃や連撃は予備動作をちゃんと見せてくれ、
ディレイ攻撃は連撃と織り交ぜてランダムで使ってくることはない。
だから、「予備動作を見て対処」という攻略が完全に成立している。
その上でボスにある「初見殺し」は、大技的に凄まじい連撃を繰り出してくる。
これは何回かやれば対処できるのだが、初見では捌くのが難しい。
要は音ゲー的な覚え感のあるものなのだけど、慣れてしまえば小気味よい。
ただ本作には、「骨太アクション」や「高難度アクション」にあるような深さはない。
例えば、「ランダムで連撃が来るからカウンターを構える」サンブレイクの深さや、
「ランダムでディレイが来るから様子見する」エルデンリングの性質はない。
それもこれも、行動キャンセルが容易であることと、ランダム性が薄いことに起因する。
ただこれはプレイフィールとのトレードオフであり、仕方のない部分でもある。
その上で本作は、代わりと言ってはアレだが、攻撃のテンポが非常に速い。
本当に「音ゲー」みたいな攻撃の応酬をする必要があるので、「そこそこ難しい」。
深さはなくとも、爽快さと適度な難しさにおいては完璧な塩梅だろう。
総じて、ちゃんと「攻略させてくれる」ようなボス戦という印象だ。
初見はハイスピードな連撃で圧倒されるが、何回かやれば全てパリィすることは容易であり、
その「攻略の気持ちよさ」と「ハイテンポ攻撃を捌く気持ちよさ」を両立したアクションだ。
前述のビルドによって攻略方法が大きく変わることがそんなにないのだけは残念だが、
「パリィか回避かシールドで受けるか」くらいの選択肢はあるため、さしたる問題ではない。
経営とアクションのペースメイカー
ここまで読んで、こう思ったのではないだろうか。
「アクションゲーなのに、経営が足を引っ張ってるゲームなのではないか」と。
それは半分正しく、半分誤っている。
というのも、本作の経営はいわば「ペースメイカー」なのだと感じるのだ。
アクションは一定のアンロックを前提とする部分があり、初見で全て突破するのは難しい。
だけど、ボスに挑むには雑魚戦をそこそここなす必要があり、周回するのは少し面倒だ。
そこで出てくるのが、経営というわけだ。
経営は結局「かわいい2Dドットを眺める」だけのものなのだけど、
これがいい感じに「休憩」として機能しており、ペース配分を上手く調整してくれる。
そういった意味で、経営パートがない方がいいか?というと、そうではないのだ。
アクションはかなりハイテンポであり、根詰めるには疲れるのだ。
そんな中、ゲーム内で「この日は経営してね」みたいな導線がある。
事実上の強制とするには効果が薄い、オープンワールドのサブクエストみたいなものだが、
じゃあ休憩するか、という選択をするには十分すぎる導線だ。
結果として経営が考えることがないがゆえに、経営は休憩用として成立している。
だけど、これまたバランスが絶妙なのが、「どっちかだけでもよい」ことだ。
実際、アクション偏重で低レベルクリアみたいなことは全然出来るバランスだし、
経営を連続してやってから楽々アクションをすることも全然出来る。
いわば、強制感のない休憩だ。
導線の設定、経営パートの意義、アクション密度のバランスが作った意義だ。
意図しているかどうかは分からないが、個人的にはとても優れた設計に思う。
総評
パン屋経営と言いつつ、2Dアクションが本業なゲーム。
経営パート単品では質は高くないが、それを補って余りある2Dアクションの質がある。
アクションが高品質だからこそ、淡泊な経営パートに別の役割が与えられる。
なんというか、看板に偽りありみたいな感じだが、ゲームとしてはきれいに纏まっている。
経営を期待すると楽しめない気はするが、アクションを期待するなら全く問題はない。
私はボスをちょいちょい初見でクリア出来たのもあって、経営パートは最低限でプレイしたが、
それはそれでワンミスすると速攻死ぬくらいの歯ごたえがあって、なかなか楽しめた。
なお、本作にはアクションの難易度を下げるオプションがある。
なのだけど、アクションが相当苦手でない限りは、あんまりおすすめしない。
本作のアクションを作業にしてしまうと、たぶんかなり厳しい感じになる。
経営を極力せずに、アクション中心に死にゲー的に楽しむのが個人的にはおすすめだ。
ボス戦はめちゃくちゃ楽しいし、ハイテンポで気持ちいい。
良質な2Dアクションを求めているなら、やってみてはいかがだろうか。
個人的お勧め度: ★★★★★★★☆☆☆(7/10)


