前作を「踏襲」し「進化」した続編 ― ENDER MAGNOLIA: Bloom in the Mist(レビュー)

「進化」した要素をもってしても、「踏襲」できない本質がある。


[タイトル]
ENDER MAGNOLIA: Bloom in the Mist [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC(steam) / PS4 / PS5 / Nintendo Switch

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
17時間 / 実績コンプ


はじめに

Ender Liliesという、名作メトロイドヴァニアがある。
メトロイドヴァニアとしての基礎を抑えつつも、圧倒的な表現力を持つ作品だ。
そして今回レビューするのは、その続編(?)である、Ender Magnoliaだ。

本作は、前作から空気感や世界観は一定引き継いでいるものの、
一応は独立した作品として成立するようにはなっているようだ。
それ故に、「前作を超えられるか?」が一番の焦点になるだろう。

といったものの、個人的には難しいだろうな、とも思っていた。
期待が高すぎること、そして前作の完成度が高すぎたことが要因である。

まあネガティブな話はさておき、レビューに移ろう。

 

メトロイドヴァニアとしての圧倒的成長

前作もメトロイドヴァニアの基礎は抑えており、評価は高かった。
だが今作では、それに更に磨きをかけたと言えよう。
全体的に見ても隙がない構成になっており、ここで裏切られることはまずない


ストレスフリーな探索と、探索へのモチベーション

まず大前提として、探索における負荷が素晴らしかった。
本作では、前作に引き続き高性能なファストトラベルが存在している。
そして、未探索エリアを知らせるマップシステムも継続されている。

この二点に加え、マップシステム側の精度が圧倒的に向上した。
未探索領域があるかどうかだけでなく、地形なども細かく表示されるようになったのだ。
これにより、誰がどうやっても頑張れば攻略を観ずに探索しきることが出来る

特に素晴らしいのが、「マップが見えているのに」探索し甲斐があることだ。
マップが見えてしまうとどうしても「探索感」は薄れてしまうのだが、
本作においては「マップ横断的な回答」や「隠し部屋」により、それを回避している。

そのような「謎解き的な回答」が「存在すること」はマップから推し量ることが出来、
そのお陰で、どこを重点的に探索すべきかという導線が自然と現れるのだ。

また、本作ではスキル強化素材が主に探索で手に入るため、そういった意味では裏切らない。
適切な報酬と、無駄になりにくい導線設計からこのあたりの完成度は非常に高い。


安定したアクションと、わかりやすくなった操作性

メトロイドヴァニアのもう一つのキモとして、アクション性があるだろう。
本作は、前作のベースは踏襲しつつも、わかりやすさに磨きがかかっている。

本作のベースアクションは、前作と変わらない。
基本攻撃的なものが1ボタン、3ボタンにスキルを割り振る形となっている。
ただそのスキルが、ブラッシュアップされ分かりやすくなった。

スキルは、キャラクターを使役して使うみたいなニュアンスを継続しており、
該当キャラクターを強化することで、種類が拡張される仕様となっている。
この種類だが、キャラクターごとに分かりやすい特性が付与された。

例えば遠距離キャラは長押しで打ち続けることをメインにしていたり、
設置系キャラは設置したらオート攻撃をしてくれたり、
パリィ系キャラは全てがカウンターアクションとなる、みたいな構成だ。

その上で、これらのアクションは前作より見逃すのが難しい造りになっている。
そのため、大半のアクションと大半のプレイスタイルを試しやすくなった

更に言えば、前作にあった切り替えや特殊コマンドみたいなものは統合され、
操作性自体も単純化された……が、ボタンを押したいならそういうビルドにすればいいし
それが苦手なのであれば、オート攻撃で固めればいい形になっている。

そういった意味で、アクションの手触りは非常に良い。


分かりやすくなったビルド

本作における「ビルド」は、そこまでの尖りはない。
特定の戦術を「大幅に」強化するというよりは、少し偏らせる程度の性能になっており、
特化的な運用や、ガラッとプレイフィールが変わるほどのものではない。

直近でレビューしたアルタなんかはこのあたりの完成度が非常に高かったが、
本作においては、相手に合わせて傾向を合わせる……モンハン的なビルドに近い。
といったものの、わかりやすさとコスト感のバランスから、ビルド面に大きな不満はない。

どちらかというと、ビルド「そのもの」というより、コスト面が洗練された印象だ。
というのも、ビルドは基本「スキル」と「レリック」と「装備」で行うのだが、
これらの製造コストの共通財貨が存在しており、一定の取捨選択になっているからだ。

無限に稼ぐこと自体は出来るので、稼ぎ作業をすれば成立はしえないが、
基本的には取捨選択的な構造となっており、そういった意味での「ビルド」が成立している。
このあたりの財貨のやりくりは新しく追加された部分ではあり、一定の深みがある。


という感じで、メトロイドヴァニア的な点で言うとかなり安定しており、外れない。
前作は「良作」というレベルだったが、本作は「かなりの名作」というレベルで安定している。

 

 

それでも前作は超えられない

ゲーム部分は間違いなく進化した。それもかなり進化した。
それでも、前作は絶対に超えられない。雲泥の差がある。圧倒的なまでの。

それは、やはりというか世界観と表現の部分だ。
前作が完成されすぎていた——といえばそうなのだが、
本作はその前作に引っ張られてしまい、真似事のような形になってしまっている。

単体で見れば別に悪くないのだが、前作と比べるとやはり厳しい。


世界の「在り方」

前作において素晴らしかった点……それは、ミクロとマクロで見たマップデザインだ。
ミクロで見た場合、例えば「塔」は「登っていく」という「2Dでの納得感」で、
マクロで見た場合というのは、例えば「ストーリー」などの「世界単位での納得感」だ。

まずミクロで見た場合についてだが、これは割と納得感のある構造になっている。
前作ほど象徴的なマップは無いものの、ロケーションとしての納得感は非常に高い。
そういった意味で、こっちについては評価は高い。

ただマクロについては——どうしても真似事の領域になっている。
前作は、主人公が目覚めた位置から目指す場所、途中のロケーション全てに意味があった。
ストーリー上の背景があり、文脈があり、だからそこにその場所があった。

本作は、そこに「一定の」意味はある。だが、「一定の」意味という感覚なのだ。

本作はまず始めると、「上層を目指す」という目的が伝えられる。
それゆえ、マクロ面では文字通り3層の構造でマップがデザインされている。
なのだけど、それ以上の意味合いが薄い……もしくは補完出来ていない。

何故、中層にその施設があるのか。
何故、初期エリアの真上にあるのがそこなのか。
そういう「理由付け」が、非常に薄いのだ。

本作では、「上中下の縦軸」と「重要ロケーション」以外でそれがない。
裏を返せばそれはあるので、大半のゲームより全体デザイン自体は良いのだが、
前作の圧倒的な完成度と比べてしまうと、どうしても見劣りしてしまう。


細部のこだわり方

前作では、細部にも圧倒的なまでのこだわりがあった。
攻撃アクション、回復アクション、レリックなど……すべてに理由付けがあった。
だからこそ圧倒的な没入感が形成されていた。

だが、本作は「中途半端に」踏襲してしまっている印象だ。
例えば攻撃アクションとしては仲間を使役するニュアンスを継続しているのだが、
その「理由付け」が、やっぱり淡泊に感じてしまう。

前作は、「なぜそう攻撃できるか」と、「なぜ協力しているか」の二つに納得感があった。
こういう細かい要素で見た時に、どうしても限界がある。
なんというか本作は、「ゲーム的な要素(手段)」の領域を出ていないのだ。


舞台装置としての限界

前作は、これらすべてを統合して舞台装置的なストーリーが展開されていた。
だから、全ての要素がカチっとハマるように設計されているし、そのために存在していた。
そして本作はそのストーリーを「土台」にしつつ、一定新しくしている。

なのだけど、システム面や表現技法は続編らしく踏襲されているのだ。
だから、当然「圧倒的な完成度」の裏にある「調和」が崩れてしまっている。

分かる人には分かるかもしれないが、「初代ディスガイア」みたいなイメージだ。
そもそものゲームシステムや設定やデザインコンセプトが、特注品なのだ。
だから、そのベースとなるストーリーが変わるのであれば、最適解は異なる。

そういった意味で、このあたりの刷新がなかったのは非常に残念ではあった。
今回は「煙」と「半機械」がコンセプトなのだから、それ用に最適化しないといけない。
前作で象徴的だった「雨」のように、「煙」が象徴になるデザインを見たかったな、と。


手記システムの限界と、やはり前作踏襲であるということ

今作のストーリーテリングは、少し進歩というか、追加されている。
前作では世界観の都合で人はおらず、手記や記憶で全てが語られていた。
本作ではそれらに加え、人との会話が追加されている。

なのだけど、やっぱりこのストーリーテリングも「真似事」だ。

誰もいないから、手記から追うしかない。
誰も残っていないから、会話の代わりに記憶を覗くしかない。
でも本作は、会話が出来る。

だからやっぱり、記憶にストーリーテリングを任せることは違和感がある。

そして、前作は全てが主人公を中心に回っていた。
また、「主人公の解明=関連者の記憶を覗くこと」であり、
「世界で起きていること=手記からの推察」という形で語り方が分けられていた。

だが今回は、わかりやすいストーリーが裏で走っている
そしてそれを補完する要素として、これらを継続して使っているに過ぎない。
結果として記憶を覗くことが群像劇的になってしまっていて、演出方法と合っていない。

死に際の記憶みたいなものは、そのキャラクターに思い入れがないと感動しない。
裏で起きていることを回想的に見ることは、「記憶」という手段で見せる意味が薄い。

寧ろそういった内容は、記憶でやると違和感が強くなる。まず「誰?」となるからだ。
手記などで断片的に語ってゆっくり咀嚼させるか、それこそ誰かに語って貰ってもいい。
ムービーの技術が上がっても、それが前作を超えられるかは別の問題なのだ。


という感じで、総合的に見たら良作なのは間違いないのだが、前作には遠く及ばない
前作を前作たらしめていた圧倒的な表現力は、そこにはない。

それこそ、前作はタイトルにすらしっかりした意味があったのだ。
それをそのまま踏襲したところで、名前以上の意味は持てない
結局全編通してそういう形になってしまっているのだから、当然といえば当然だ。

……いやまあ、意味はあるといえばあるのだが……後付けの印象が強い。
仕組み上の理由付けはあるものの、納得感がない。
前作が「噛み締めるくらいの深さ」があるのに対し、非常にあっさりしている。

 

ボス戦の傾向変化

これは良い点とも悪い点とも取れるが、ボス戦について傾向が変わった。
難易度が大幅に緩和され、死にゲーと言えるレベルではなくなったのだ。

また、難易度調整が可能になったことも踏まえ、そのあたりのハードルは無くなった。
本ゲームの本筋は雰囲気と探索のため、あまりボスは気にしていないのだが、
個人的にはBGMやボスの印象が薄くなる、という意味ではマイナスに感じる

前作においては全ボスは前半後半でBGMが分かれており、どれもメロディアスだった。
そのため、ボス戦のBGMは極めて印象に残るものであったし、
ボス自体も観察が必要であるがゆえに、モーションから感じ取れるものもあった。

そのあたりが難易度低下により、淡泊になった。
群像劇になったストーリーテリングも相まって、なんというか広く浅くな印象がある。
ダークソウルに対してのエルデンリング無印みたいな、そういう感覚がある。

 

総評

メトロイドヴァニアとしての圧倒的な進化。
探索の面白さと快適さのバランスは素晴らしく、完成度が高い。

だが、前作を前作たらしめていた要素は鳴りを潜めている。
その圧倒的な総合芸術としての力はそこにはない。
前作の真似事として、雰囲気とシステムだけがそこにある。

なんというか、前作が評価されすぎたからこその、呪縛のようなものを感じた。
まあ前作は評価されてしかるべき圧倒的な完成度だったのでそこに文句はないのだが、
前作がなぜ圧倒的に優れていたか、が追求しきれなかった印象がある。

といってもメトロイドヴァニアとしてはクオリティは非常に高く、
世界観や表現についても普通に平均点を大きく超えているのは確かだ。
だからおすすめではあるのだが……まずは前作をやることをお勧めする。

結局のところ、本作の体験は非常に高品質だが、唯一無二ではない。

 

最後になるが、本作のBGMはやや「BGMっぽく」なった印象を受ける。
メロディラインがおとなしくなったり、ボーカルの主張が薄くなっている。
そういった意味での「尖り」みたいなのがなかったのも個人的には残念ではある。

このあたりもやっぱり前作に囚われているなぁ、と思ってしまう。
本作は「儚さ」を表現するストーリーや世界観ではないからだ。
もう少し棘があるBGMのほうがよかっただろうし、やっぱりうーん、という印象だ。

 

 

個人的お勧め度: ★★★★★★★☆☆☆(7/10)

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