修行の成果を見せてみろ ― STREET FIGHTER 6(レビュー)

どう繕っても、結局、修行。


[タイトル]
STREET FIGHTER 6 [公式サイト] ※steamリンク

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / PS4 / PS5 / Xbox One

[プレイ時間] ※レビュー時点
30時間弱 / PLATINUMまで


はじめに

格闘ゲーム。
修行の末に得た力を以て、相手を破壊する。
妥協なき1v1の駆け引きが醍醐味のジャンルだ。

その中でも、最も有名なタイトルの一つが、このストリートファイターだ。
今回ついに、前作5から何年もの時を経て、6が発売された。

私は格闘ゲーム自体、かなり好きなジャンルだ。
主に「アークシステムワークス」社の格闘ゲームを好み、プレイしてきた。
だが、この「ストリートファイター」は、正直あまり合わないゲームだった。

そんなストリートファイターだが、6になって何が変わったのか。
もともと合わなかったプレイヤーにとって、どこがどう変わり、どう感じたのか。
その辺りを、格闘ゲーム経験者の観点から評価していこうと思う。

 

一新されたグラフィックとキャラクター

まず新作で一番分かりやすいのは、新キャラクターとグラフィックだろう。
本作ではグラフィックや演出が一新され、「新作感」はとても出ている

特にグラフィックや演出については、かなり進化したと言える。
後述する新システム周りの演出については、個人的にはかなり気に入っている。
とにかくすごいエフェクト、ヒットストップ、SEという3拍子揃った仕上がりだ。

キャラクタ―については、なんというかポリコレ感が滲み出ている印象を受ける。
……が、まあ各国のファイターが集う!というコンセプトであるし、妥当だろうか。

ただキャラクター性能については、やや偏りというか類似があるように感じる。
これはアークゲーマーのサガかも知れないが、「本質的に同じじゃね?」となる部分はある。
とはいえ、5の「マジで同じじゃん」ってキャラが3人も4人もいる、みたいなレベルではない。

総じて、視覚的にはとても新しく、よりグレードアップして実装されている印象だ。

 

新システム: ドライブゲージ

新作の目玉はやはり新システム、ということでドライブゲージについて評価する。
最初に結論を述べてしまうと、これはめちゃくちゃ出来がいい
これらについて、特徴的な部分に絞って評価していこうと思う。


生ラッシュ

いわゆる凄い前ステで、ゲージを2割弱消費して発動できる。
ラッシュ後の攻撃は特殊硬直となり、基本的にガードさせて有利が取れる。
そして、見てから対応はガン見してないとそこそこ困難だ。

この「通ればめっちゃ強い」「コスパ最高」「見てから対応がムズイ」というのが重要だ。
走れるタイプのゲームにおけるダッシュみたいなもので、これが読み合いの起点になる。
とにかくサクっと触ろう、がスタートになっているので、当然攻撃的になる。

だから、以前の作品のように「まず我慢」ということにならない。
雑に触れるように、意識を散らして上か下かで突っ込もう、が割と通用する。
ゲームなのに、我慢からスタートはあり得ない。だから、個人的にはかなり好感触だ。


キャンセルラッシュ

上記ラッシュは、必殺技キャンセル可能な技からキャンセル発動することができる。
この場合、ゲージ消費は5割と爆増するが、雑な攻め継続やコンボ延長が可能だ。
これは、とても便利に見えるがコスパの悪い行動となっている。

ただ、ゲージを管理出来ていれば、特に最後の一押しを埋めるのに役立つ。
いわゆるリーサルの幅を広げてくれるような要素であり、やり込みが出るポイントだ。

これについては、可もなく不可もなく、という印象だ。
もう少し消費が抑えられていれば、牽制先端からガンガン攻めることも出来た。
それが出来ないのは少し残念ではあるが、あるだけでかなりの深みは生まれている。

純粋に、強引な攻めの展開に使い辛いのが残念だよね、という温度感だ。


ドライブパリィ

おしっぱなしができるワンボタンパリィ。
直前パリィをすると確定が取れるジャストパリィとなる。
この要素は、個人的にはあまり好きではない。

というのも、地上戦や固めの駆け引きが、割とパリィありきになっているのだ。
そして、ジャストであればリターンが爆増するという性質も好みではない。
割と、「突進技は見てから押せよw」という対策を前提としているのだ。

ごちゃりがちなパリィが地上戦に組み込まれること。
突進技の対策として、見てからパリィが前提になること。

このあたり、「全キャラ当身ある前提でゲームするのしんどくない?」という感想だ。


ドライブインパクト

発生26fのアーマー攻撃。見てからインパクトで返すことができる。
画面端だとガードされてもコンボ可能となり、崩しの選択肢となる。

個人的にこれは、かなり評価が低い
というのも、割と「インパクトをインパクトで返す」のが人権になるからだ。
甘えたインパクトをインパクトで返せないと、ゲームが成立しない

立ち回りにおいてもパリィ同様、一部技に見てから押すことも要求される。
そのくせ、強ボタン同時押しというすごいコマンドを要求する。

これはパリィにも言えることだが、見てから押せないといけないボタンが多すぎる。
指は6本無いのだから、普通に押すことが出来ない。致命的なのだ。
だからプロ様は、ボタンを増設したり背面ボタンパッドを利用したりしている。

なんというか、hitboxでも話題になったが、デバイス面での差が出すぎる。
インパクトボタンに指を置けるか置けないかには、相当な差が出る。
この辺り、時代に逆流している感が否めない。

そして、このインパクトは恐らく「最終的には見てから返される」
だから、プロ様にとっては特定の技に差し込むような用途になるように思う。
だが、修行を積んでいない「足切り対象」のプレイヤーは、地獄を見る。

適当にパナして、咎められないから一生誤魔化せるボタンになるのだ。
どこまで行っても、修行をしていないプレイヤー目線では大味になる。
スマブラを経て格ゲーになる、というデザインなのかも知れないが……。


総合して、ドライブゲージ周りの新システムの出来はとてもよい。
ドライブラッシュの存在だけで、スト6はガラッと攻め起点のゲームになった。
それだけで、ガン待ちゲーの修行というイメージは払拭出来ているはずだ。

 

新?システム: 単発確認廃止、有利F激減

本作では、単発確認は事実上廃止された。
単発確認というのは、所謂「当たってたらキャンセル必殺技をする」行為を指す。
この確認猶予が20fを切っており、相当な反復練習が必要なものであった。

これが廃止されたことで、足切りはだいぶ緩和されたように思える。
今までは「単発確認ができるとリターンが倍以上になる」都合、勝負にすらならなかった。
今回は、シビアな修行をせずとも対戦に行くことができる。

また、有利Fが大幅に削減された。
基本的に有利Fはラッシュ以外で取ることは出来ず、暴れ潰しは小技の連キャン中心だ。
だから、基本的に投げor打撃を2回凌げば、攻めはほぼ終わる。増長はラッシュ以外難しい。

そういう意味だと、攻守がガンガン変わるようなゲームにはなった。
だが逆に言うと、一回の流れで殺しきるのは難しくなり、読み合いの回数は増えた。
また、読み合いの性質自体も、似たような読み合いが多くなる。

だからこそ、どうしても「強キャラ」の「強キャラ感」が強くなる。
同じ読み合いでより強い選択肢を取れるからこその、強キャラだからだ。
キャラ固有の選択肢の多さで対処する……のに、限界があるゲームデザインに感じる。

まあ、こういう部分は個人的には評価してはいる。
特に、単発確認という悪しき文化の撤廃は英断だったと思う。
その事実だけで、変革をしようという精神性が垣間見える。

有利Fについても、覚えるべきフレームが結果的には多少減るため、好印象だ。
というかそもそも、スト5は強キャラ以前に下位互換だらけだったので、論外だった。
最低限キャラが立っているだけで、強キャラ云々は割とどうでもいい、と考えている。

 

それでもストリートファイター

今のところ割と評価が高そうに見えるスト6だが、思うところはある。
なんというか、それでも「ストリートファイター」なんだよな、というところだ。

例えば、本作のヒット硬直やガード硬直は相変わらず技ごとに設定されている。
ボタンは6種類あって、似た用途の技だらけだ。でも、キャラ毎に相性を調べないといけない。
同時押しがいっぱいあって、純粋に指が足りない。指を置いておけない。

こういったところは、「無駄な修行」を要求される。
硬直が地味に違うから、ボタンを押すタイミングが地味に変わる。
技の振り分けを調べないといけない。ボタン操作やデバイスを工夫しないといけない。

これが、とにかくイライラする。
出来ていて当たり前の水準に、反復練習を要求される。駆け引きとして大差ないのに、だ。
これはゲームなんだから、最低限の動きくらいは誰でも簡単にできるようにしてほしい。

また、最終的な着地点は相変わらず「修行による反応ゲー」だと思われる。
〇〇には見てからパリィ。インパクトには見てからインパクト。ラッシュは2p押す。
こういう「見てから押せるか押せないか」の駆け引きが中心になるように思える。

これは、恐らく全対応出来ない。出来ないが、個別では出来ないと土俵に立てない。
インパクトも、パリィも、ラッシュも、フレーム的に少し「思いきり」が足りない。
反応がギリギリ間に合うくらいのフレームになっており、余白がある。

こういった「修行」による「反射」を要求するあたり、ストリートファイターだな、と思う。
「これ」には「これ」、をどれだけ詰めて、どれだけ無心で繰り出せるか。
無我の境地で格闘するのは、やっぱりストリートファイターなんだな、と。

これは格闘”ゲーム”ではなくて、あくまでも”格闘”ゲームなのだろう。

 

総評

ドライブラッシュにより、攻め起点となった新生ストリートファイター。
ある程度のレベルまでは雑に楽しむことができるし、苦行を強いられにくい。
そういった意味では、割と完成度は高い、と言わざるを得ない。

だけど、ストリートファイターはストリートファイターだ。
修行が正義で、鍛錬と反復練習が全てだ。
それが最低限の足切りを作っているのは間違いないように思う。

その足切りのラインが、少し楽になった。いや、だいぶ楽になった。
浅くやる分には構わないが、真面目に対戦を楽しむにはやはり苦しい。
でも、「東大の足切りライン」を気にする人は多くはないだろう?

だから、「ストリートファイター」が好きなら、きっと大正解だ。
ストリートファイターとして進化したか?と問われれば、答えは圧倒的YESだ。
ストリートファイターでありながら、足切りラインを大幅に緩和出来ている。

でも、最終的にはストリートファイターだ。
だから、具体的な対策を反復練習で練るのが好きな人にはお勧めできる。
だから、抽象的な対策を思考実験で導くのが好きな人にはお勧めしない。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★✩✩✩✩(6/10)

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