
産まれた瞬間、懲役15時間 ― FREEDOM WARS Remastered(レビュー)
恩赦: 最初の2時間。
[タイトル]
FREEDOM WARS Remastered [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★PS5 / PC / PS4 / nintendo switch / (PSVita)
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
14時間 / ストーリークリア
はじめに
キャッチーな世界観で一躍有名となったvitaの「遺物」。
今回レビューするのは、vita作品のリマスターである「フリーダムウォーズ」だ。
元となったvita版について、私は体験版のみプレイしている。
圧倒的な操作性の悪さ/アクションの劣悪さがあり、どうしても受け付けなかった。
設定やキャラメイクあたりは面白そうだったので、少し気になっていた。
実際、vita版は評価は芳しくなかったようだ。
それなのにリマスターが出るのは少し謎ではあるものの、今回はただのリマスターではない。
画質向上だけではなく、どうやら根本的な戦闘面や装備面に手が入っているらしい。
ということで、さっそくレビューに入ろう。
世界観と掴みの強さ
本作は、ポストアポカリプス的な世界観をウリにしている。
資源を争い合う人間、その解決策として兵力を「懲役」として賄う社会システム。
「懲役」は「税金」のようなもので、当然そこに価値は出る。だから通貨にもなる。
プレイヤーは独房の中で窮屈な暮らしを強いられる。
何をするにしても、禁則事項に触れる。懲役が加算される。
こういったところは、世界観をとてもよく表現しているし、魅力的な部分だろう。
特に、自らが「行動」すると禁則事項に触れ、懲役が加算されるのが良い。
ゲーム的に、主人公の状況を体感・体験しやすい構造だからだ。
なるほど確かに凄い状況だ、と実感することになるだろう。
そして、通貨として懲役が用いられるなどの部分も、ゲーム的にはマッチしている。
こういった「掴み」はバッチリだ。
……掴みは、だが。
世界観が壊れていく
先ほども述べたように、序盤の引きはとっても強い。
この状況からどうやって物語が展開するのか、とても気になる。
最初は、咎人としてランクを上げ、権利を獲得していくこととなる。
その中で、何か大きなうねりに巻き込まれていく。
これは、「あるある」な展開ではあるのだが、世界観がブレなければとてもよい。
ただ、本作は途中から世界観がブレにブレる。
細かいところまで言及するとネタバレになるので軽く濁すが、
本作はどこまでいっても「ディストピア」的な「絶望感」がベースにあるはずだ。
閉塞感や人間の欲望、抑圧されているからこそのドラマが一番光るはずだ。
なのだけど、展開されるストーリーの規模が「大きすぎる」。
鳥籠の中の話をしていたかと思いきや、国レベルの話になる。
なんなら、宇宙レベルの話になる。いや、そうじゃないだろと。
仮にスケール感がおかしくなったとしても、筋が通っていればまだいい。
だが、本作のストーリーは宇宙レベルの話をするのに、宇宙の説明をしない。
謎の用語と謎の勢力がどんどん出てくる。お前らは誰なんだ?
だから、もう全く意味がわからないのだ。
狭い独房、抑圧された空間、罪を背負った人間。
この世界観をみっちり描いておいて、いきなり別の話をしだす。
せっかくゲーム的にもしっかり序盤で世界観を作ったのに、なぜこうなるのか。
そのうえで、まったく説明をしないから、お話として成立しない。
ちいかわの世界観でファルシのルシがコクーンでパージして何が面白いのか?
いったい何のために世界観を構築したのか?
操作性の悪いプレイヤーアクション
本作のアクションは……とても出来が悪い。
いやもう、とっても出来が悪い。
まず、プレイヤーの動きから説明しよう。
プレイヤーはなんと、回避をキャンセルすることができない。令和に?
流石に攻撃は回避にキャンセル可能だが、タイミングがひたすら遅い。
そして、仰け反り硬直をキャンセルできない(または受付タイミングが遅い)。
だから、「攻撃を見てからキャンセル回避」みたいな、一般的な動きがぎこちない。
だから、雑魚敵にチェインでハメられて即死するのが当たり前だ。
ついでに、全体的な硬直も無駄に長い。着地硬直が無駄に長い。連携猶予も短い。
空中攻撃の制御はほとんど出来ない。攻撃の方向転換がほとんど効かない。
だから狙った方向に攻撃出来ない。でも空中慣性は一切なくて異次元の動きをする。
また、ボタンの役割が多すぎる。特にワイヤーアクション(茨)周りがカオス。
ワイヤーを射出する。射出先にアイテムがあったら拾う。なかったら連結。
連結したら移動/キャンセル。移動後はジャンプ/キャンセル/移動攻撃/張付攻撃。
別に多いのはいい。でも、大半の操作があんまり意味がないのだ。
そのうえで、正確なエイムが無いと成立しない操作もあり、無駄にシビアになっている。
なんというか、劣化した「MHW:IBのクラッチクロー」を常に使ってる感じだ。
令和基準なら茨からアイテム取得はオミットするだろう。
そして、移動攻撃も自動で出るようなものになるだろう。
そういう感じの、「普通のアクション的な快適性」がないのが、とっても気になる。
総合して、本作は変に「いろいろ出来過ぎる」のに、「操作が煩雑」だ。
そして、大半のアクションは正直言って使わない。
その上で硬直周りがガチガチだから、操作ミスに対してかなり不寛容だ。
だから、操作面でまずは嫌な気分になるだろう。
アクション性の薄いボス戦
本作のボス戦は、とってもシンプルだ。
というのも、ボス戦におけるアクションがほとんど存在しないからだ。
大半のボスは、適当なその場攻撃、突進、射撃で構成されている。
モーションは非常に分かりやすく、硬直も長い。
真面目にやったら、被弾する要素がほとんどないレベルだ。
なのだけど、本作は先ほども述べたような……「圧倒的な操作性の悪さ」がある。
そして、回避行動の無敵フレームが恐らくほぼ無い。狙った回避は相当厳しい。
だから、攻撃が来るのが分かっていても普通に「事故る」。文字通りの「事故」だ。
そんでもって、攻撃があり得ないくらいに痛い。普通に8割くらい減る。
でも死んでもどうでもいい。ほぼ無限にリスポーンできるからだ。
まあ雑魚敵が死体に重なってると蘇生出来ないみたいな「事故死」を除けば、だが。
という感じで、アクションは破綻している。
真面目にやったら被弾しないし、被弾したとしても復活できるから緊張感はない。
その癖ボスは無駄にタフだから、作業感が非常に強い戦闘になってしまっている。
追い打ちとして、そもそもの大型の敵の種類がほとんどない。
10種類いるだろうか?というレベルでいない。もうこれ以上言うことはないだろう。
それでも簡単にクリアされたら悔しいでしょう?
と、操作性の悪さで殺しに来るゲーム、というのはよくわかっただろう。
だがそれだけではなくて、本作は「理不尽」的な要素が多々ある。
まず、敵の人型。特に近接タイプが厄介だ。
近接タイプは自分と同じようにコンボをするのだが、ワンコン10割だ。
マジだ。10割なのだ。硬直が長すぎて、チェインで即死する。
特に、といったが遠隔タイプも厄介だ。
とはいえ適当に突っ込んで殺せばよいし、被弾しても3割なのでそこまでではない。
ただ、あり得ないくらい追尾してくるほぼ100%回避不能なミサイルを発射する奴がいる。
で、小型が一部ミッションでは大型と戦っているときに湧いてくる。
旧作のモンハンで、小型にイライラさせられることはあった。本作は、それで人が死ぬ。
いや、普通に考えてそれは面白いのか?と。
とはいえ、NPCが大量にいるので、即死してもリカバリーは容易だ。
適当にゾンビアタックすればいい。何の問題もない。ただイラっとするだけだ。
厄介な小型に殺されたな、まあまた作業バトルを開始しよう、となるだけだ。
だとしたら、その小型の超火力に果たして意味はあるのだろうか?
キャラクターメイクとアクセサリ設定
これは本作における数少ない評価点といえる。
本作のキャラクターメイクは、種類は少ないもののそこそこ優秀だ。
こだわって作ることは難しいかもしれないが、それっぽいものを作るのは簡単だ。
また、常に同伴するNPCであるアクセサリ設定も、これまた面白い。
セリフの設定などをすると、読み上げソフトを介して実際に喋ってくれる。
近代のAIと比較するとイマイチだが、棒読みだからこそ世界観には合っている。
まあその優れたキャラメイクと世界観を、何故か破壊してしまうのだが……。
ビルド・装備強化
本作のビルド・装備強化は、あってないようなものだ。
いや実際はそこそこ効果はあるのだろうが、あんまりやる意味がない。
適宜気に入った武器を強化していけばよい、という感じだ。
特化ビルドという概念はほとんどない、または必要がない。
結局ボス戦は作業だし、適当にダウンを取って溜め攻撃を当てるだけだからだ。
死ぬときはみんなハメられて死ぬだけだし、生存重視とかの概念はない。
まあ、大罪人モードという名のハードモードなら別かもしれない。
なのだけど、本作においてアクション面で面白くなることは構造上ないだろう。
ビルドといいつつステータスの底上げ以外の要素はあまりないはずだ。
何もないRPGよりは、少し期待感がある分マシではある。
といっても、昨今のRPGでは当たり前ではあるし、それと比べると劣っている。
総評
見事な世界観の構築。プレイヤーへの表現。そして優れたキャラメイク。
序盤、プレイヤーへの没入感と、期待感を大いに高めてくれる。
だが、進めてみると……何故かその世界観を、捨て去ってしまう。
一番よくできたところを、何故か捨ててしまう。
置いてけぼりにされ、まだ中盤だよな?と思ったらスタッフロールが流れる。
いやはや、これって未完成品なのか?と思わざるを得なかった。
リマスターだし、このあとDLCとかあるんだよな?と思わざるを得なかった。
最初の世界観で、こじんまりやるだけでよかったのに、と。
正直、「アクション面はこれで改善されたのか?」というくらいにはイマイチだ。
それに、アクション面が面白かったとして、根本的な部分がおかしい。
結論、アクション的なところを期待するには非常に厳しい出来だ。
そして、世界観的なところを期待するには非常に厳しい出来だ。
世界観が気になった人は、最初の2~3時間は楽しめるだろう。
個人的お勧め度: ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1/10)