
文字通りの超正統進化 ― ビビッドワールド(レビュー)
本当に”正統”な続編。
[タイトル]
ビビッドワールド(Vivid World) [公式サイト] ※steamリンク
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC(steam)
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
35時間 / エンコン9割くらい完了
はじめに
今回レビューするのは、ビビッドナイトの続編であるビビッドワールドだ。
オートチェス的なシナジーと、半オートな戦闘が中心のローグライクゲーである。
前作の発売時点では割と珍しめの組み合わせではあったが、今はそうでもない。
その上で前作は、レビューにも書いたように「とても惜しい」出来だった。
ゲームの根幹やもろもろは良く出来ているのに、ローグ「ライト」な部分が噛み合わなかった。
そんな勿体ない作品である印象が、個人的には強く残っている。
組み合わせの真新しさはなくなったものの、続編ならではの革新はあるのか。
また、「惜しい」点にどうアクセスし、改善したのか。
こういったところを踏まえて、レビューをしていこうと思う。
変わらず面白い基本プレイ
本作は前作と同じく、「オートチェス×ローグライト」といった趣だ。
ユニットには所属派閥とクラスの2つの属性があり、これらを複数揃えるとスキルが発動する。
そして、スキルはそれぞれが大きなシナジーを持っている。
また、オートチェス同様の「重ねる」タイプのアップグレードがある。
複数同じ駒を合成することで、ステータスの底上げが可能となる。
更に、合成したコマは編成しなくともシナジー用の属性がカウントされるようになる。
このあたりの面白さは、相変わらずだ。
何を重ね、何をパーティーに残し、どんなシナジーを組むか。
オートチェスならではの編成の妙が、変わらず残っている。
更に面白くなった基本プレイ
では、ただ続編として同じものを焼き増しただけなのか?というと、答えはノーだ。
本作は、ちゃんと「続編」としての正統進化をしている。
本作のコアである「シナジー」と「アップグレード」は、トレードオフだ。
シナジーを狙うなら3体を合成してシナジー属性を稼ぐ形になるし、
単一のユニットに頼るなら、9体合成してスペックを上げる必要がある。
だが前作は、ここに若干の「定石感」があった。
なんというか「特定の序盤シンボルを取る」「特定のシンボルを重ねる」みたいな、
定石に近い、安定する動きみたいなのを強いられるような側面があった。
その上で、上振れを狙うには無理な運ゲーを突破する……みたいな印象があった。
だけど、今回はそうではない。
それは、3つの秀逸な追加要素・設計変更があるからだ。
一つ目は、高レア・最高レアユニットの設計だ。
今回は高レアユニットでも十分パーティの主軸になるような性能をしており、
無理に最高レアを重ねるみたいなことを意識する必要が薄れている。
二つ目は、キャラクターにつけられる「オーブ」だ。
これは普通にオートチェスにおける「アイテム」なのだけど、効果がエグい。
だから、普通に1要素として上振れの幅が大きく伸びている。
三つ目は、低レアでも9体重ねると強力な「オーブ」が手に入ることだ。
これも革命的で、低レアを重ねきるみたいな戦術が実行可能になる。
その上で、序盤を低レアでしのいでからオーブだけ剥がす、みたいな計画もできる。
この三つの変更のお陰で、取り得る戦術の幅と、その上振れの上限がかなり伸びた。
そしてそれを後押しするように、上振れでなくともエンコンはクリアできるレベルだ。
だから、体感の自由度と自己効力感はめちゃくちゃに高く、非常に面白い。
総合して、「もともとの面白さ」を更にブラッシュアップすることに成功している。
これは本当に「正統進化」であり、非常に考えられた設計であると感心するばかりだ。
欠点もきっちり修復済み
前作の欠点として、「星を重ねるときの運ゲー感」を挙げた。
それは、導線として「最高レアを重ねるゲーム」であると序盤に錯覚させておきながら、
終盤では「シナジーゲー」であるという要素が、アンロックと噛み合わないがために起きた。
前作は導線上、シナジーの余白が増えるのに比例して単一キャラを重ねにくくなっていた。
それは、「キャラクター」や「ジェム」といった、ランダム要素の択がアンロックされたからだ。
だが、本作は「ランダム要素」がアンロックされる設計にはなっていない。
本作のアンロックは、いわば「底上げ」に近いアンロックになっている。
この設計はローグライトの基本ではあるものの、基本に忠実な設計であるがゆえに面白い。
その上で、ただの底上げ以上の面白さのある要素として成立している。
具体で言うと、「パッシブスキル」と「消費アイテム」を持ち込めるものになっている。
パッシブスキルは、特定の行動が強くなるみたいな戦略性を決める要素になっており、
コスト制で、組み合わせてダンジョン挑戦前に設定することが出来る。
これは導線上逆に「ワクワクする」ようなアンロックであり、とてもよく設計されている。
前作のアンロックの「不快感」をかなり軽減した、かなり良い改善であると言えよう。
ただ一応、前作と同様に「キャラを覚える」カロリーは高い。
その上で、前作はアンロックであったがゆえにそこのカロリーは導線上軽減されていた。
ここについては、正直前作をやっていたので飲み込めた部分はあるが、
新規ユーザがどこまで頑張れるか?というと、そこについては未知数だと思っている。
とはいえ、そもそもキャラの数よりは基本ルールが大変なので、あまり変わらない気もするが。
総評
前作の課題点を概ね払拭したうえで、面白さをブラッシュアップ。
超正統進化と言うに相応しい、完成度の高い続編。
こう評価するのが妥当なくらい、きれいに課題にアクセスした作品だろう。
オートチェス・ローグライトというワードに興味があるなら普通に楽しめるだろうし、
どちらかだけのファンであっても、完成度の高さから問題なく楽しめるだろう。
この組み合わせにおいては、ほぼ「答え」に近い出来といって差し支えない。
ただ、個人的にはそこまでの「衝撃」がないくらいにジャンルが擦られてしまっているし、
「前作を超正統進化した」以外の変化はなかったようにも感じる。
そういった意味で、面白さと比較した点数は低めとなっている。
だがこれは、前作既プレイであるがゆえの主観に基づくものであることは理解いただきたい。
また、ジャンルの真新しさみたいなものが過去と変わったという点も影響がある。
なんだかんだ、前作未プレイだったり前作を投げた人にはかなりおすすめ出来る内容だ。
個人的お勧め度: ★★★★★★★☆☆☆(7/10)
