懲役サイティンな2Dホッケーゲーム ― Omega Strikers(レビュー)

懲!!役サイティン!!!!な訳ねーだろ。


[タイトル]
Omega Strikers [公式サイト] ※steamリンク

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / PS4 / PS5 / Nintendo Switch / Android / iOS / Xbox One

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
40時間程度 / 上位数%くらい(?)※betaチャレとは当たっていたが、過渡期で%は不明


はじめに

なんでもありの殺人ホッケー、オメガストライカーズ。
open betaは過疎ってしまったものの、個人的には相当な名作だと考えている。

そのomega strikersだが、数々の新要素をひっさげ、正式リリースとなった。
私含め、このゲームのコアなファンは待ち望んだことだろう。

あんなに面白かったゲームが、更に改良されたらどうなるのか。
あんなに面白かったゲームを、「改良」出来るのか。

全人類待望のゲームを、さっそくレビューしていこう。
なお、ベース部分のレビューは過去のレビューを参考頂きたい。

 

基本的な読み合いとゲームプレイ

このゲームにおける基本的な読み合いと、ゲームプレイはbetaと大きく変わらない。
足とキルと削り、そしてオブジェクトであるオーブを巡った後出しチキンレースだ。
このあたりは変わらず、根底にある面白さは維持出来ていると言えよう。

ただまあ、betaは少し「ストイック」すぎた。
だからこそ、数々の新要素を追加し、飽きにくいゲームにするという目標を掲げた。
数々の新要素については次項からレビューするが、結論として本質は変わらない。

最終的に辿り着く、なんでもありの爽快ホッケーアクション
この部分が残っているのは、とても喜ばしいことだ。

 

新要素1: ビルド変更

以前のレビューでも上げたが、このゲームのビルドは「トレーニング」がメインだった。
パッシブスキルをいくつか選択することで、キャラの運用を柔軟に変更できた。
形骸化した最適解選択メソッドではなく、柔軟に変えることが報われるシステムだった。

そう、「だった」

正式リリース版では、以下のように変更が入った。

  • 開幕時に1個パッシブを選択(4種類)
  • セットの合間に、1個選択(ランダムで抽選された中から、活躍度順にドラフト)

これにより、スキル周りの奥深さは消えた。そして、ただただ「オタク要素」が増えた。

まずこの変更により、「狙ったビルド」を選択するのはとても難しくなった。
そもそもがランダム抽選であるし、活躍度順でピックするからだ。
自キャラに合ったものが出るかどうかと、ピック出来るかが運否天賦だ。

そして、このゲームにおけるトレーニングの組み合わせは、とても繊細なものだ。
「ノックバックを2個積んだら端オーブ確定」みたいな、戦術レベルでの閾値があるからだ。
その閾値を踏めるかどうかが、分からなくなってしまう。

だから、「とりあえず相性のいいものを選ぶ」方向に帰結する。
キャラの運用を変えるような選択は、閾値を越えられないリスクがあるからだ。

それに加え、本作のビルドは「細かいプレイフィールの変化」に直結する。
足の速さや蹴りの強さは「壁ドリブルの角度」に直結する。
サイズの大きさは、「キックをディレイ出来る幅」に直結する。

こういった、細かいが致命的なミスを引き起こす要素が、試合ごとに微妙にブレてしまう。
これは割と致命的で、「とにかく回数をこなす」以外での回答が難しい。
格ゲーにおける「単発確認を強制される」ようなところに雰囲気は近い。

だから、総合して、とても残念だ。
ビルドの幅は無くなったのに、無駄に回数をこなさないとミスで殺される。
脳死で回数をこなすだけで上手くなれる、という点はウケがいいのかも知れないが……。

更に言うと、ビルドを破壊するメタトレーニングがランダムで登場する。
キルビルドをしてたのに、キル対策がランダムで出たら負け!サイコー!w

 

新要素2: マップ変更

本作の新要素は、多彩なマップ追加だ。
今までは「殺風景なマップ」が一つあり、細かい角に変化があった程度だった。
それが、大胆な効果のあるマップが増え、特色が出るようになった。

……のだが、マップの設計がとても悪い
今回追加されたマップは、全て「とても狭い」のだ。

大体のマップは、中央に壁として機能するようなオブジェクトが存在する。
そのため、マップは上下で分かれてしまい、事実上狭い2レーンのようになる。
その結果、マップを広く使ったパスなどがし辛く、ごちゃごちゃした殴り合いになる。

このゲームの奥深いところは、如何にパスのルートを作るかだ。
細かい移動の節々で、チャンスを作り出すところが面白かった。
だが、ここまで狭いマップばかりだと、「インテリ」な勝ち方は難しくなる。

また、確かにマップは増えた。
だが、それはどれも「中央付近が使えない上下2レーン構成」だ
だから、取れる戦略として大きな差異は感じられず、ただただ狭く窮屈な印象だけが残る。

 

新要素3: ゴールの変更

本作に入って、「ゴールゲート」というオブジェクトが追加された。
ゴール付近にある2つのオブジェクトで、ボールが当たると消滅する。
これらを二つ消すと閉じていたゴールが開き、ゴールが出来る状態になる。

これが、とにかくゲームに致命的にあっていない。

まずゴールゲートは、幅がかなり狭くGKのスキルで完全にカバー可能だ。
また、壁ドリブルなどでスキルを誘うための余白エリアがほとんどない。
だから、GKがミスらない限り、突破するのはかなり困難だ。

だけど、GKがミスると、めちゃくちゃ簡単に突破できる。
また、ボールとの距離が近くなりやすく、慣れていないと反射神経系のミスを誘発しやすい。
だから、「GKのミス待ち選手権」のような構造となる。

ミスを誘う為に、如何にボールキープ率を高め、ごちゃごちゃスキルを連打するか。
それが、ゴールゲートを突破するための賢い選択になりがちだ。
以前のように、「スキルを誘いつつ賢くボール回しをする」攻略とは、真逆だ。

これにより、ゴールゲートを突破しても「ミスした」としか思えず、気持ちよくない
更に言うと、GKのスキル差が如実に表れるようになる。
もっと言うと、ゲート突破時に攻守交替となるため、味方依存がかなり強くなった

これが、とにかく致命的だ。
気持ちいいゴールまでにミス待ち選手権が発生するため、テンポが悪い。
そして、3連続でファインプレーをしないと、一人ではゴールできなくなった。

試合が始まってすぐ、「もうどうしようもない」という空気が流れるのだ。

 

新要素(?)4: オーブの変更と打点の変更

本作には、「オーブ」というオブジェクトがある。
これは、端付近に定期的に生成されるオブジェクトで、beta時点のコアだった。

このオーブだが、正式版ではとても弱くなった。
オーブ取得時の経験値がかなり低下し、回復量や補助効果がかなり低下した。
これにより、オブジェクトとしての求心力が低下した

また、キャラクターの吹き飛ばし力が全体的に減ったのもポイントだ。
これは、変更点1に絡む部分であるが、試合後半にならないと前作同様のビルドにならない。
それまでは、キャラクターの能力は低く、なんとオーブに対しての確定キルが出来ない。

本作は、そもそも「ボールに雑に触る」ことが割と「リスク」寄りだった。
プレイヤーの行動を焚きつけるのはオーブであり、これを中心に回っていた。
だが、今回のオーブはなんというか、「割とどうでもいい」

厳密にはどうでも良くないのだが、それよりも重要なことがある。
雑にボールを触って、雑にスキルを回して、雑にGKのミス待ちをすることだ。
その中で、たまーにオーブの取り合いがある。

オーブは、状況に応じて有利な読み合いを仕掛けるポイントではなくなった。
勝っているチームが、雑な殴り合いの中で雑に取れるだけのご褒美になった。
そこに戦略は無く、「パーティー会場にあるお菓子」に成り下がった。

 

新要素5: ラウンド変更

本作はもともと、5本選手で10分でサクッと出来るゲームだった。
それが今回、「3先の3先」となった。
これが、とにかく前述の要素と噛み合わない。

beta時点のサクサク動作が出来るのは試合後半からだ。
もし試合に負けていたら、活躍度順でパッシブ取得する都合、弱いままだ。

ダメな味方を引いたとき、AFKを引いたとき、懲役が長すぎる。
以前なら3分で終わった懲役が、今回は10分はかかる。
味方ゲーがかなり顕著になったにも関わらず、だ。

いやもう、細かい分析とかを抜きにして、時間帯あたりの気持ちよさが少なすぎる。
元riotだからといって、lolの悪いところをそのまま真似しなくていいだろうに。
そのlolは、こういうところに何年もかけてマシになるようにアプローチしているというのに。

ダメなチームを引いたり、afkを引いたら、もう投了させてほしい。
2R終わった時点で、もう勝てる勝てないはそこそこ見えるだろう。俺を拘束するな。

 

総評

シンプルで、奥深くて、気持ちいい。
だったのは、昔の話だ。
今はもう、15分に1回あるかどうかの気持ちいいポイントを待ち望むパーティーゲームだ。

いやはや、全ての要素が残念すぎる。
追加した要素全てが、変に人気ゲームを意識していて、噛み合っていない。
本作に足りないのはプロモーションであって、雑なパーティー要素では無いのではないか。

15分に1回あるかどうかの快感に期待するなら、もはやlolをやった方がいい
本作の魅力は、「サッカー」に対しての「バスケ」にあったのだ。
短いスパンで、ガンガン気持ちよくなれるのが魅力だったのだ。

サッカーとしてじっくり醸成するほどの、奥深さはない。
寧ろ、betaのほうが奥深かった。
懲役を我慢してやるくらいなら、どう考えてもlolをやったほうがいい。

それでもまあ、ベース部分は良く出来ている。
スキルが揃ってきた後半、お互いのゲートが消えたあたりからはとても楽しい。

だが、それまでだ。

 

個人的お勧め度: ★★★✩✩✩✩✩✩✩(3/10)

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