究極の立体が織りなす「影」 ― ELDEN RING: Shadow of the Erdtree(レビュー)

あのエルデンリングが霞むくらいの、光。


[タイトル]
ELDEN RING: Shadow of the Erdtree (DLC) [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / PS4 / PS5

[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
50時間(たぶんそれくらい) / ストーリークリア


はじめに

だいぶ今更感あるが、今回はあのエルデンリングのDLCのレビューをしていこうと思う。
エルデンリングといえば、誰もが(?)絶賛する神ゲーとして名高いフロムの作品だろう。
そして、長い開発期間と圧倒的ボリュームという前情報で出たのがこのDLCである。

本DLCには圧倒的な期待感があった。
それも、類をみないくらいの圧倒的な期待感だ。
そんな期待感がある本作、そして素晴らしい本編を超える感動はなかなかあり得ない。

……が、結論から言うと、尋常じゃないくらいの完成度であった。
これはもう、エルデンリング2といっていいくらいの圧倒的な進化があった。
あまりにも圧倒的であり、全ての要素が完璧に近く、唯一無二である。

ということで、さっそくレビューに入ろう。

 

 

全てがローデイルであるということ

本編における一つの課題。
それは、世界が「広すぎた」ことだ。

多数のロケーション、多数のダンジョン。それらを結ぶ広大な大地。
これらの存在は、世界を「薄めて」いた。
使いまわしのボスや、広さに起因する「エリアの繋がり」が薄くなっていたのだ。

唯一といっていいのはローデイル周りの「高低差」を活かした「繋がり」だった。
ただそれは、それだけでゲーム自体が100点になるくらいの価値を持っていた。

圧倒的に広い世界が、上下で繋がる瞬間。同じ座標に収束する瞬間。
これが、ソウルシリーズとの圧倒的なスケールの違いを見せていた。

……ではそれを、「影の地」全土で行ったらどうなるか?

無論、いまだかつてない圧倒的なスケールになる。
そして、本作はそれをやっている。だから、もう批判する要素がない。
ここまで圧倒的なスケールのオープンワールドはやったことがない。

 

圧倒的なマップデザインとスケール感

本作における圧倒的なマップデザインの根幹になっている点は、多数ある。
だが、ここでは特に感心した点に分けて批評していこうと思う。
というか、あまりにも素晴らしくて言葉で説明するのが無粋な感じすらある。


立体構造がもたらす「眺望」が「探索」に繋がる瞬間

本作のマップは、ほとんどのマップが立体的な構造をしている。
立体的……というのは、要はエリアが「縦に」重なっている、ということだ。

例えば、川の上流に病気が蔓延した村がある。
その村の下には、川が流れている。なるほどよくあるRPG的な光景だろう。
きっとどこかにこの水が流れたエリアがあるんだろうな、と推測する。

そしてよくできたRPGでは、そんなエリアを設計して探索させる
プレイヤーはその伏線回収に感心することだろう。
当然、本作DLCはそれを行ってくる。でもそれだけじゃない

本作は、その村の下に川が流れているのが「見える」のだ。
この時点で、「ああ、こういう設定なのだろうな」と思う。

そしてしばらく探索してみると、横穴のダンジョンから川に降りていることに気付く。
ここはその川なのではないか?と思って周りを見ると、恐らくそうだろうと気付く。
そしてその川の先に、汚染された村があり、確信に変わる

本作は、立体的であるがゆえに「行けそうな場所」を「観測」できる。
それは、過去作にあったような部分的な眺望ポイント、というレべルではない。
ほとんどすべてのエリアが「立体的」であり、ほとんどが事前/事後で観測できる。

だからこれは、もはや旅なのだ。
ストーリーを起点として探索が始まる一般的なオープンワールドではない。
「そこに行ってみたい」から始まる、旅なのだ。そして、必ずそこにそれがある。

 

ロケーションの変化と、その納得性と、奇抜さ

本編では、ロケーションは確かに多かった。ただ、「変化感」は少なかった。
それも、基本的にはマップの傾向が同じだったから、だ。
どのマップも同じように広く、たまにダンジョンがあり、たまにアイテムがある。

それでも、一部マップはとても良かったとは思う。
とはいえ、メインの大陸は、背景が違うだけで「廃墟の探索」に近かった。
ただ、DLCではすべてのエリアに目立った「特徴」がある。

それは、色彩的な変化であったり、建物の傾向であったり、エリアの傾向だったりする。
細かいところを述べると正直ネタバレになるのでこれ以上は言及しないが、
全て本編における「ラニ関連マップ」「ローデイル関連」の完成度、といえばわかるはずだ。

そんなエリアが、もうとんでもない数存在する。
そして前述の通り、そのエリアがあることが事前に観測できる。本当に素晴らしい。

 

無意味な場所がない、ということ

本編の課題の一つとして、コピペ的な薄まりや無意味な場所があった点が挙げられよう。
例えば、ただ場所を埋めるようなダンジョンや、眺望的な意味のないポイントなどだ。

これらが、探索の報酬として残念な感覚を与えてしまっていた。
そして、それに加えて「行ける場所」が分からないという点もあった。
新しいところも圧倒的な景観の変化は少なく、やはり探索がダレがちな部分はあった。

だが本DLCは、そんな場所が一切ないといっていい。
ほぼすべてのエリアは景観が圧倒的に変わるし、探索の価値がある。
そしてほぼすべての崖は眺望ポイントであるから、隅々まで行きたくなる。

だが、大事なのはそんな精神的なところではなくて、実用的な面、だ。
というのも、本作における「ダンジョン」などの位置づけは、とても重要になっている。

本作のダンジョンは、縦での橋渡し……いわば、エレベータのようなものだったりする。
ダンジョンの奥深くを探索して、地下に潜っていくと……当然地下に出る
その場所は、今の大きな陸地の下であった、なんてことが多々ある。

そしてダンジョンで得られる報酬についても、DLCでは高レベルなためほぼ全て運用できる。
だから、探索が「報われない」ということがほとんどない

そもそも、「観測した地点に行ってみたい」が動機なのだから、そんなことはないのだけど。
それでも、ゲーム的な視点でも確実に報われるというのはとても重要だ。


総合して、もはや言葉で表現できないレベルの圧倒的なスケールを感じられる。
ゲーム的にも精神的にも探索は確実に報われる。
というか、もう報われすぎて探索しかできなくなる。

私は本編では、終盤ダレてストーリーを駆け足で終えてしまった。
それでも素晴らしい世界だった、と思うのは確かなのだが、これが事実だ。

だがDLCでは、そんなことは一切なかった
探索が面白すぎて、攻略情報は一切絶ってずっと探索をしていた。
結果、一つのミニダンジョンを除き、DLCラスボスクリア前にすべてのエリアを踏破した

もうこれだけで、いかに優れていたかを語れるのではないか、とすら思う。

 

アクションRPGではなく、RPGであること

これまた本編の課題として、アクション要素の薄さがあったと思う。
高強靭の敵を多数配置したり、1v1を避けられない構成が災いし、消耗戦が強いられていた。

これは以前のレビューの通り、「オープンワールドアクション」と相性が悪かった
アクションでどうにもならないのだから、事実上のレベルキャップが存在している。
それは自由な探索と反発してしまうし、レベリングの強要とも取れる。

なのだけど、本DLCはそもそも突入段階が「高レベル」だ。
また、恒久的にステータスを強化するアイテムが探索で手に入る。
だから、これを「アクション的」に攻略するような頭になりにくい。

その前提の上で、本作は本編に比べて強引な敵配置が極めて少ない。
無論、高レベルであるがゆえの搦め手の多さ、というのもあるだろう。
そういった意味で、探索におけるレベルキャップ的なストレスは一切感じなかった。

とはいえ、これが本DLCが進化したからか?というと、なんとも言えない。
そもそもが「高レベルになるまでの相性の悪さ」であったからだ。
鍛石における武器キャップの問題も同様で、すでに「解決」されてから始まっているのだ。

まあ、恒久強化アイテムは普通にデザインとしては良い要素だとは思う。
やや安直な部分は感じるものの、自由度と難易度を維持するには仕方ないようにも思う。

 

多彩で骨太に「感じる」

本DLCには、多彩なボス・魔法・武器が存在する。
これはもう恒例といってもいいのかもしれないが。

特に、ソウルシリーズでもあったように、戦技のような部分が多彩だ。
武器固有の攻撃などの新鮮なモーションが多くあったように思う。
まあ、基本的な要素を本編で出したからこそ、ではあるのだが。

また、ボスについては想像以上に多彩だったと思う。
これは、使いまわしが少ないこと、背景ストーリーに合致したデザインだからだろう。

といっても、冷静に考えると、ボスは実はそんなに数は多くない
なんだかんだ、魔法も武器も本編の方が多いくらいだろう。
でも、本DLCのほうが多彩に感じた。

それは、見せ方が上手いからだ。
じっくり探索をした後、探索の景観に見合ったボスが出たらそれは印象に残る。
「ビルドや強化リソース的に使えない武器」が少ないから、全部運用できる。

そういった意味で、「使われなかったコンテンツ」が少ないのだろう。
これは、MHR:SBにも言えるようなことで、見せ方でボリュームを演出している。
とても賢く、プレイヤーとしても大満足だ。

 

総評

圧倒的な完成度であった、エルデンリング本編。
その完成度が霞むくらいの、圧倒的な完成度。圧倒的な光が生んだ圧倒的な影
ソウルライクオープンワールドの、終着点。

エルデンリングの悪かった点をほとんど排除し、良かった点を徹底的に磨いた。
あのエルデンリングがここまで進化してしまうのか?正直、信じられない。

もう何も言うことはないので、とにかくやれ
本編ダレたって人、いったん買え。本編の比じゃない。

 

個人的お勧め度: ★★★★★★★★★★(10/10) ※実際は16点くらい

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