エゴを捨てた「消費型」ローグライト ― Vampire Survivors(レビュー)
誰も真面目にゲームなんてやってないよ。
[タイトル]
Vampire Survivors [公式サイト] ※無かったのでsteamリンク
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC
[プレイ時間/進行度] ※レビュー時点
7時間 / 裏ステージ開放まで ※v0.3.1(アーリーアクセス版)
はじめに
今回紹介するのは、中毒性が話題となった「Vampire Survivors」だ。
内容としてはありきたりな自機強化型のシューティング(?)生存ゲーだ。
中毒性が高く、一躍大人気となったこのゲームだが、内容はよくあるものだ。
一応ジャンルとしてはローグライトアクションになるのだろうか?
様々なスキルや武器を重ね、強いビルドを再現しクリアを目指す。
では、なぜこんな使い古された「普通のゲーム」がここまで流行ったのだろうか。
その辺りも含め、レビューしていこうと思う。
アクション性より、戦略に振ったゲーム性
Vampire Survivorsにおけるアクション要素は、あまり大きくない。
弾を頑張って避けたり、頑張って間合いを調整する必要性はない。
ビルドや戦略性の方が遥かに大事であり、アクションでなんとかするゲームではない。
だが、戦略性はある程度ちゃんとある。
というのも、ただ敵の波を倒す中にも特性に差異があるからだ。
敵の数、固さ、報酬に色付けがあるからこそ、特定のウェーブに対しての戦略が立てられる。
例えば、序盤が苦しいシナジーメインのビルドをする場合。
序盤を乗り切る為に、初動を助けるスキルやキャラクターを選択することも出来る。
特定のウェーブでは、AOEなのか単発重視なのかで生存率が大きく変わる。
確かに最終的には、簡単に最適化されてしまう。
それだけシンプルなゲームだし、そこに高い戦略性があるとは言えない。
だが、シンプル故に数回のプレイで解くことの出来る「良問」であるとも言える。
ローグライトの要点を抑えたゲーム性
ローグライトの面白さとは何だろうか。
それは、プレイ中の「一度限り」の緊張感と、成立したときの「気持ちよさ」だろう。
それは、上手く行かなかった時に「もう一度」やりたいと思わせるアンロックだろう。
正直言って、Vampire Survivorsのプレイ中のビルド幅はそこまで多くない。
だが、ビルドの「視覚的変化」がかなり大きく、プレイフィールに大きな影響がある。
また、シナジーについても「視覚的変化」がかなり大きい仕上がりになっている。
正直言って、Vampire Survivorsのアンロック要素はそこまで多くない。
キャラクターを開放したり、スキルを少し開放する程度だ。
だが、キャラクターがビルドを想起させるような特性を強く持っている。
だから、いろいろなビルドをちゃんと試したくなる設計になっている。
至って普通のローグライトであると同時に、王道を押さえているのだ。
シンプルなローグライトとしての「割り切り」
ここまでいろいろ言ったが、結局このゲームは「普通」だ。
ビルドのボリューム感も、Loop Heroくらいのものだ。
アクションや戦略性も、初見で一周するくらいのものしかない。
だが、ここに対する「割り切り」が本作の最も優れた点だろう。
本作のアンロック要素は、かなり早くアンロック出来る。
多くのゲームと違い、アンロックの方がリプレイよりも開放ペースが速い。
類似のゲームが3回に1個くらいなのに対し、本作は一回あたり1~2個ペースだ。
本作の自機の強化要素は、かなりシナジーや効果が高い。
それはそれはとんでもなく強力であり、適当でもある程度なんとかなるレベルだ。
強すぎるからこそ細かい調整は不要だが、初見でも楽しく無双できる。
だからこそ、Vampire Survivorsはローグライトを「消費」させてくれる。
とりあえず好きにプレイしたら、ぼくのかんがえたすごいビルドで無双できる。
そしたら要素がガンガン開放されるから、気になるビルドを試しきって終わり。
変にアンロックを薄めたり、難易度を絞って攻略の多様性を制限しない。
全てのプレイヤーが、頭を空っぽにして楽しく「消費」してくれればいい。
開発者の「エゴ」を捨てたかのような「割り切り」こそが、本作の面白さの源泉だろう。
総評
ゲームとしては普通だが、王道を押さえたゲームでもある。
その王道の面白さを支えるのが、「割り切り」だ。
ただ、娯楽として本作を「消費」してくれることに特化しているのだ。
本作のようなゲームは、特にスマホアプリ市場では大量にある。
勿論、ローグライトとして似たようなゲームもPC市場にも大量にある。
だが、変に延命をせず、快適なスピード感で消費させてくれるゲームは少ない。
本作は誰でも簡単にプレイ出来て、誰でも面白さを「消費」出来る造りだ。
万人受けであるのは確かだし、値段もかなり安い。流行る素質は確かにそこにある。
とはいっても、本作が流行った理由はやはり「運」だろう。
たまたま分かりやすい面白さのゲームが、たまたま目についただけ。
僕もそういった理由で、特に考えなく、適当に本作を選んだ。
でも、娯楽なんてそんなものでいいのだろう。
確かにゲーム体験として、本作特有の要素は少ない。
だが、「コミュニケーションの種」として「消費」するには最適だろう。
個人的お勧め度: ★★★★✩✩✩✩✩✩(4/10)