救いはない。受け入れるだけだ。 ― Redemption Reapers(レビュー)
その不運も、受け入れるべきなのか?
[タイトル]
Redemption Reapers [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / PS4/ Nintendo Switch
[プレイ時間 / 進行度] ※レビュー時点
20時間 / 難易度ノーマルクリア
はじめに
今回レビューするのは、ダークな世界観のSRPGであるRedemption Reapersだ。
あの神ゲーEnder liliesのパブリッシャーであるBinary Haze Interactiveの二作目にあたる。
開発も同様にadglobeが担当している模様(成り立ち的に2社はほぼほぼ同会社のはず)だ。
本作のウリは……ダークでシビアな世界観とゲームプレイだろうか。
ずっと救いがないし、ずっとシビアだし、ずっと苦しい。
このような空気感が、常に纏わりついているような作品だ。
これが吉と出るか、凶と出るか。
そして、シビアゆえの戦略や管理は面白いのか。
世界観表現は、一作目の質を越えることが出来たのか。
こういった観点から、レビューを行いたいと思う。
シンプルで分かりやすいSRPG
本作はディスガイアよろしく、マス目で整理されたターン制SRPGだ。
といってもディスガイアみたいに要素過多という感じでは無く、シンプルだ。
パーティーは5人で固定だし、派手だったり効果が強すぎるスキルはない。
移動周りも多すぎず少なすぎず安定しているし、ダメージ予測もかなり正確だ。
取れる行動は基本的には攻撃か防御だけで、攻撃範囲も基本は1~2マスの範囲だ。
唯一の戦闘システムは「連携攻撃」で、攻撃範囲なら100%の連携攻撃が可能である。
この辺りは、昨今の複雑怪奇なシステムが多いSRPGと違いかなりシンプルだ。
1~2回の戦闘ですべてを理解出来るくらいには分かりやすく、直感的だ。
また、操作性もそこそこ快適だ。
マウス/パッドの両方でプレイしたが、どちらもなかなか快適に動かすことが出来た。
索敵範囲のUI表示については改善の余地があるものの、及第点といったところか。
SRPGとしては、シンプル
とりあえず本作のSRPG要素は、とってもシンプルだ。
だからこそ、詰将棋的なシビアな戦略設計に期待したところだ。
そして本作は確かに、戦闘における戦略設計は割と「シビア」ではある。
敵は大群で、こちらは5人。
それにも関わらず、相手の攻撃を2~3回受けたらそのまま即死してしまう。
だから、絶対に袋叩きにされないように、慎重に進む必要がある。
いわゆる敵の「索敵範囲」を活用して、タンク役を筆頭にじりじり進むのだ。
この辺りのプレイフィールは、ダークソウルで盾を構えながら前進する感じに近い。
しかしながら、重要な要素である敵の索敵範囲のUIがやや見辛い。
複数キャラの索敵範囲が被った場合など、多数のオンオフを必要とする。
とはいえ面倒ではあるが確認は可能で、じっくりやる分には問題はないだろう。
戦略も、シンプル
先程、基本は袋叩きにされないように慎重に進む、と書いた。
これには「アタッカー」と「タンク」と「ヒーラー」が必要になってくる。
タンクが先行し、アタッカーが攻撃し、ヒーラーが補助する。普通の布陣だ。
これについては、特段問題ではない。
なのだけど、基本的に戦略はこれ””しか””ないのだ。
例えば、敵の進行ルートが2レーンあり、分隊して対応する必要がある、とか。
例えば、魔法系の敵を各個撃破する先鋒みたいなキャラを運用する、とか。
例えば、敵の攻撃が苛烈すぎて2タンク2ヒーラーで防御偏重にする、とか。
こういった「戦略のバリエーション」みたいなものは、ほぼほぼ存在しない。
システム上、先行した味方は即死してしまうから、分隊的な運用はかなり難しい。
また、ヘイトコントロールが「索敵範囲」以外に無く、じりじり進む以外では困難だ。
確かに、マップごとにある種の特色みたいなものはあるのだが……戦略としては微妙だ。
どれも「大勢の敵+援軍」であり、一部の爆弾ステージを除けば同じ構成だ。
最初にマップを見て、囲まれない進行ルートを考えたら、ほぼほぼステージクリアだ。
じりじりと進んでいくゲームプレイも、別につまらない訳じゃない。
普通に面白いし、シビアなSRPGという意味では全く問題はない。
だが、戦略のパターンが少ないが故に、慣れたらほぼほぼ難なくクリア出来てしまう。
なんというか、若干の物足りなさを感じる。
ビルドシステムと、ランダム成長
さて、本作のキャラクター育成だが、一癖あるシステムだ。
ステータスがランダムで成長するというものであるが、ランダム具合が凄い。
本作はレベルアップ時、各種ステータスが最大1上がる「可能性がある」。
それらは[HP/攻撃/防御/魔法防御/命中/回避]なのだけど、ブレ具合が凄い。
全部上がるケースは確認できなかったが、合計+1は良く見るし+3や+4もそこそこ見る。
つまるところ、この時点でレベルアップを厳選しないと、ステータスに3倍の差が出る。
これだけで「運によるブレ」がめちゃくちゃなものになるのは理解できるだろう。
だが、このランダムの振れ幅の大きさは、それだけが問題ではない。
とにかく、ステータス間の格差が凄いのだ。
特に攻撃と防御は、減算による修正になる。最序盤でこれらを引けないと、致命的だ。
私はメイン盾みたいなキャラが一切これを引けず、遠距離キャラより脆くなっていた。
そして命中や回避は、ほぼほぼ意味をなしていない。
めちゃくちゃに回避を盛らない限り回避ビルドは難しく、盛ること自体がランダムだ。
命中はほぼほぼ困ることが無いため、これにレベルアップを割くとほぼ成長が無い。
序盤の、攻撃や防御が1~5くらいの間は、本当にそのレベルアップに難易度が依存する。
中盤からは装備やアクセサリが強くなったり、確率収束でそこまでの差は出ないだろう。
ランダム故の良さが、ない
このランダム成長なのだが、正直言って「良さ」があまりない。
そもそもランダムの良さは、臨機応変に対応する「一期一会感」だと思う。
これはローグライト的な面白さ、と言ってもいいかもしれない。
本作のステータスは、確かに多少は偏る。
偏るのだけど、その偏りを活かす手段がほぼほぼ存在しない。
前述のとおり、減算である「攻撃」「防御」は必須クラスで強い。
逆に「命中」「魔法防御」は有効な場面が少なく、死にステに近い。
「回避」は極振りレベルで偏らないと効果を発揮しない。なら、どうやって活かすのか?
また、各キャラクターのスキルも、「底上げ」に近い性能をしている。
120%で攻撃するとか、ダメージを1軽減する、みたいなものだ。
そこには、「回避に成功したら回復」みたいな、各ビルドのネタになるものがない。
偏りの感覚としては、Dreamscaperのそれに近い。無意味に近い偏りだ。
攻撃か防御が上がらないと意味がないガチャを、ただ回すだけ。
そしてそのガチャが外れた場合、戦力的には総合力が微増するだけだ。
だから「偏り」は、「紙装甲のメイン盾wwww」みたいな「ネタ」以外にならない。
まあこれはこれで面白いというか、個人的にはそこそこ笑えた部分ではあった。
「下がってろ!!!」って言っときながら、前線に出られず宝箱回収する隊長。
一応、プレイヤーごとに「ドラマ」みたいなものが作れはするのかな、という感じだ。
「攻撃防御のお祈りレベリング」に「ドラマ」を感じるのは、「上級者」な気もするが。
リセマラゲーミングが、逆に丁度良い
このランダム成長だが、一応はリセマラでなんとか頑張ることはできる。
リセマラするゲームなのか……?マジで……?とはなるが、想定していそうな気もする。
というのも、共通経験値を使うとメニューでレベル上げが出来るからだ。
ステージではレベル上げギリギリで調整し、クリア後にリセマラをする。
これを行った場合、めちゃくちゃ強いユニットが作成可能だ。
私は1キャラだけ緩めにリセマラをしたが、とにかく強い。
だけど、経験値調整やリセットの都合、突き抜けた強さにはし辛い。
めちゃくちゃに無双するレベルでの強化は難しく、適度に最強といった感じだ。
これは、なんだかんだ塩梅としてはとてもいいと感じた。
手塩にかけて育てたキャラが、ゲームバランスを壊さない範囲で、強い。
これを演出するためのランダム成長と言われれば、まあギリギリ納得はする。
それくらいに、「丁度いい強さ」に収束するように感じた。
武器リソースのやりくりと、遊撃戦
本作は、クエスト制のような感じで進行していく。
基本的には、メインクエストをひたすら攻略していく形だ。
一応はサブクエスト的に、メインクエストのマップを再攻略する「遊撃戦」も可能だ。
その中で、武器の耐久度というリソースを管理する必要が出てくる。
武器にはそれぞれ耐久度があり、物凄い金額の修理費がかかるのだ。
雑に最強武器を振り回していたら、金欠になって武器が無くなってしまうだろう。
そしてこれは、「遊撃戦」を駆使しても、雑にやる限りはほぼほぼ赤字だ。
なのだけど、丁寧に初期武器を活用する場合、遊撃戦は逆に黒字になり得る。
なんというか、遊撃戦が「ノイズ」になっている印象を受けた。
雑にやる人には赤字を増やすだけだし、丁寧にやる人はリソースを無限に増やせてしまう。
「限られたリソースでメインクエストをこなせ」という設計意図を、受け取り辛い。
遊撃戦を排除して考えた場合、武器リソースなどは良い感じの塩梅ではある。
露払いは弱い武器で行い、確殺のタイミングで強武器を使っていく感じだ。
武器を適切に切り替えていれば、特段問題になることは無いだろう。
私は後半は遊撃戦は縛ったが、最初から縛った方が面白くなりそうだ。
そうしないとリソース管理が破綻してしまうので、要素が死んでしまう。
導線としてはやや不親切で、あくまで「救済措置」であるメッセージが欲しかった。
世界観は貫き通したが、足りない
ゲームシステムについていろいろ書いたところで、最後に世界観について書こうと思う。
本作の世界観は、PVを見て貰えば一発だが、とにかく救いのない世界観だ。
そしてそれは、至る所に表れている。
フィールドには、そういった世界観を捕捉する内容が手記として散らばっている。
ストーリーも一貫して救いがないし、ご都合主義的なものは一切ない。
思い描いた世界を表現できたかについては、ブレなく貫き通したと言える。
だが、どうしてもその表現が「浅い」。
確かに一貫してダークだし、好きな人はたまらないだろう。
だけど、どうしても前作の表現の素晴らしさが、脳裏をよぎる。
Ender Liliesは、ゲームプレイと世界観を綺麗にリンクさせた。
だがその素晴らしい表現は本作には見られず、「映画的」に「見せた」だけだ。
そして映画的に見たとしても、やや物語の進行が遅く、ワンパターンだ。
例えば手記一つ取ってみても、そのフィールドに思い入れがそもそもない。
荒廃した雰囲気を出すという観点では良いのだけど、刺さるほどの強さがない。
賑わっていた頃をゲーム的に「体感」していたなら、もっと刺さるのだが。
とはいえこの世界観が好きなら、決して裏切りはしないだろう。
総評
一周やるには少し物足りない。でも二周やるにはシンプル過ぎる。
一言で言うなら、そんな感じのSRPGだ。
リソースのやりくりも、ランダム要素も、全てわかった上でやるなら面白そうだ。
だけど、ハードをやる気力や動機が残るかというと、個人的には残らなかった。
恐らくは、二周目のハードこそが本領な気がするにもかかわらず、だ。
なんというか、ベースはそこそこしっかりしているのに、勿体ない。
緩いリセマラはやり、遊撃戦は封印し、リソース管理は丁寧にやる。
このようなプレイングを初見で出来るか?というと、導線不足な印象だ。
例えば、メニューでのレベリングは振り直せるとか、遊撃戦はチケット制にする。
そういった感じの導線があれば、いい感じに誘導されたのにな、と感じた。
二周目は、ビルドや攻略パターン的に、やりたくなる設計にするのは難しい気もする。
いろいろ書いたが、じりじり進むSRPGとしては普通に面白い。
世界観も、ご都合主義でちゃぶ台返しをするような雑なものではない。
これらの要素が好きなのであれば、問題なく楽しめるはずだ。
だけど、あのEnder Liliesの会社の二作目としては……至って普通、と感じてしまった。
個人的お勧め度: ★★★★✩✩✩✩✩✩(4/10)