キャラゲーとRPGの狭間で、令和のテイルズを再定義する ― Tales of Arise(レビュー)
きっとそれは、シリーズとは正反対。
[タイトル]
テイルズ オブ アライズ [公式サイト]
[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / PS4 / PS5 / Xbox One
[プレイ時間/進行度 / DLC ] ※レビュー時点
25時間程度 / ストーリークリア / なし
はじめに
JRPGの一大ブランドとして有名な「テイルズシリーズ」。
今回レビューするのは、その最新作である「テイルズオブアライズ」だ。
ちょっとしたトラブル等で信頼を失いつつあるブランドの、世界展開を狙った一手だ。
本作は、”新生”を目指す開発陣の言葉通り、「テイルズといえば」を再定義している。
安心して楽しめるJRPG、という土台は崩さずに、だ。
だが、「再定義」には必ず「失われる何か」が存在するのも確かだ。
開発者の掲げる“新生”とは何か。
何が違って、どう良かったのか。
そういったことを中心に、レビューをしていこうと思う。
余談にはなるが、色々言われているDLCについては深く言及しない。
個人的に今作における催促やDLCの塩梅は許容範囲であると考えているからだ。
また、私は熱心なシリーズファンではないが、なんだかんだシリーズはかなり遊んでいる。
それなりにファン目線である、ということは留意願いたい。
「ボス攻略」型の戦闘
本作の戦闘は、従来のテイルズとは少し異なる。
雑魚戦は普通の殲滅戦ではあるが、ボス戦が少し特殊なのだ。
というのも、ボス戦はダークソウルのような「攻略」を推奨する仕上がりになっている。
まず、特徴的なのは回避で、タイミングよく回避すると大きな恩恵が得られる。
移動による「間」で回避するのではなく、ジャスト回避をするようなゲーム性だ。
これは、明確にモーションを覚えて攻略する、というゲーム性を作り出している。
次に、「ブーストアタック」という独自のクールタイムのある攻撃が存在することだ。
これは様々な恩恵はあるが、特に「特定の行動のカウンター」になっている点が大きい。
突進には盾キャラの特殊攻撃を合わせると敵が大ダウンする、みたいな仕掛けがあるのだ。
これらの二つの要素が合わさり、今までの戦闘とはプレイフィールが大きく異なる。
というのも、「特定の行動」と「モーション」の二種類を攻略する必要が出てくるのだ。
その恩恵の大きさと、演出のテンポが非常に良いのも高評価だ。
つまるところ「攻略の気持ちよさ」を、プレイヤーが受け取りやすい設計になっているのだ。
今までのテイルズはどうしても「自分のアクション」を中心としていた。
だが今回は、「ボス攻略」という新たな要素を中心としたものになっている。
令和のテイルズシリーズ
私は従来のテイルズシリーズは「時代遅れ」である印象を抱いていた。
UIデザイン、グラフィック、ダンジョン設計といったすべての要素が、チープなのだ。
言葉を選ばずに言うなら、一昔前のハードで出た古臭いゲームという印象だ。
だがアライズは、とりあえず「令和」の最低水準は満たしている。
これはテイルズシリーズとして正直かなり感銘を受けた。
グラフィックは素晴らしくはないが、明らかに綺麗だ。
小学生レベルのダンジョンギミックを連発されることもあまりない。
全滅したらセーブからやり直し、という原始時代のシステムでもない。
兎に角、令和水準なのだ。
看板タイトルでは当たり前な要素が全て、ちゃんと「令和水準」なのだ。
インディータイトルとの決定的な差、みたいなものは感じられる。
アニメのジャンル変更
今までのテイルズにおけるストーリーとは何か?
一言で表現するなら、それは「日常アニメにおけるシリアス回」だと思う。
なんとなく少年少女が旅を始め、和気あいあいとしたやり取りが続く。
最後の方で重大な真実に気付き、それに立ち向かって大団円となる。
そんな印象だ。
そして、それを中心にシリーズを作り上げてきた。
極端で魅力的なキャラを作り、笑える掛け合いを大量に用意し、プレイヤーを楽しませる。
人の関係性をウリにしたゲーム、まさに「キャラゲー」だったのだ。
だが本作は、今までのバランスが完全に逆転している。
「シリアスなアニメの中に、日常のワンシーンがあるだけ」になったのだ。
登場人物は今までほど極端な性格をしていないし、ある程度大人だ。
なんとなく旅が始まることもないし、そもそも目的は最初から一貫している。
クスっと笑わせるような掛け合いは必要最低限のレベルだ。
それでもなお、JRPG感のあるストーリーは健在だ。
世界を救う。クサいセリフと行動。アニメ的なキャラ。なんだかんだ王道でアツい展開。
まさにJRPGというところは外していない。
だからこそ、いわば凡庸な「JRPG」になったとも言える。
だが、ただの「キャラゲー」から脱却できた、とも言えるだろう。
個人的にどちらがいいとは言えないが、覚悟を持って方向転換したのは確かだろう。
総評
本作は「新生」を謳うにふさわしい。
時代に追いついた高水準のテイルズは正直久しぶりであったし、
今までの「テイルズ観」を一新しようとする意思を強く感じた。
目指したのは、世界に通用する高水準なJRPGなのだろう。
だが、個人的には「凡庸で安定した良ゲー」の範疇だと感じている。
キャラゲー臭がして先細りしていたシリーズから「売れる」シリーズになった弊害だ。
「万人受け」を目指し、ただの高水準のゲームになってしまったのだ。
それでもシリーズファンは、今回の「新生」の方向性を感じてみて欲しいと思う。
また、良作RPGをやりたい人にも普通にお勧め出来る仕上がりだ。
だが、良くも悪くも尖ったゲームを期待していた層は避けたほうが無難だろう。
最後になるが、DLCは特段必要ないだろう。
レベリングを許容出来るならノーマル、そうでないならイージーを選択すればよい。
DLCでいろいろ言われているが、通常プレイにおいて必須ではないだろう。
個人的お勧め度: ★★★★★✩✩✩✩✩(5/10)