リトルでミニマムなローグライト ― リトル ノア 楽園の後継者(レビュー)

ローグライト、アクション風味。


[タイトル]
リトル ノア 楽園の後継者 [公式サイト]

[対応ハード] ※★でプレイ
★PC / PS4 / Nintendo Switch

[プレイ時間] ※レビュー時点
5時間 / ノーマルクリア


はじめに

今回レビューするのは、cygamesが送る低価格買い切りゲーである「リトル・ノア」だ。
どうやら元ネタはスマホゲーらしいが、原作は未プレイなのでその辺りはご了承願いたい。

本作は、インディーゲーによくある「ローグライトアクション」だ。
メトロイドヴァニア的な2Dアクションで、それにローグライト要素を追加したジャンルだ。
このジャンルの名作で言うと、例えば「Dead Cells」なんかが思い当たる。

このジャンルは、ひたすらに擦られてきたジャンルである。
であるからこそ、黄金のパターンというか、面白くするための最低ラインみたいなのがある。
先に言ってしまうと、本作はその「最低ライン」については満たせている。

その上で、本作ならではの「付加価値」をどのように提供できるか。
そのあたりを中心に、レビューをしていきたいと思う。

 

最低条件1: 操作性

ローグライクアクションというジャンルだが、私が最も重要視するのは操作性だ。
アクションの硬直。アクションのキャンセル性能。移動の快適さ。UIの快適さ。
これらは、普通のゲームよりも重要視されるべきに思う。

というのも、ローグライトアクションは、同じことをひたすらやる以外にないからだ。
それに、本ジャンルは「全エリア探索すること」が非常に重要になる。
だからこそ、「全エリア探索するのめんどくさいな」と思ってしまった時点で終わりなのだ。

本作は、操作性に関してはかなり快適な部類だ。
全ての行動は回避やジャンプでキャンセルできるし、スキルでもキャンセルが出来る。
攻撃の硬直もキャンセルが出来るし、発生もほぼ即座で快適だ。文句は特にない。

 

最低条件2: 反復における開放要素

次に挙げられるのが、反復における開放要素の存在だ。
ローグライトは、自分の「学習」と「自機の強化」の相乗効果が大事だ。
学習だけだとしんどいから、自機強化でも「次は上手くやれる」と思わせるのだ。

その点、本作は最低限の開放要素は備えている。問題なく、徐々に強くなる。
開放のペースが遅い訳でも、早すぎるわけでもない。無難だ。
だんだん強くなり、だんだん深部まで探索できるようになる。順調に進捗があるだろう。

だけど、とにかく無難であり、幅がない。

このゲーム、残念なことに割と「開放無し」での攻略が困難に見える。
というのも、深部攻略のマストである「火力の担保」が、開放に大きく依存するのだ。
実際、開放したアクセサリの有無で、火力に数倍の開きがあるはずだ。

要は、開放における自機の強化の幅が大きすぎるのだ。
基本的に私は、じわじわと強くなるのがローグライトの根幹を支えていると考える。
自機強化は、攻略失敗における「ロスト」を軽減させる以上であってはならない。

「上手くなったから」ではなく「自機が強くなったから」という感覚に陥るのだ。
面白いことには面白いのだが、アクションというよりRPGに近い感覚になる。
私も後半は「あと2回で火力足りるかな」という思考になっていた。

アクションの腕を磨く、という発想に至らないのだ。
開放要素で、火力がインフレしすぎる。

 

最低条件3: 反復における学習要素

前項でネタバレしているような気もするが、学習も重要な要素だ。
ここではビルド、攻撃パターン、エリア攻略のセオリー。こういった部分を指す。
前回は「知識不足で出来なかった」と思える部分が多いほど、学習が重要になる。

そして本作だが、この辺りがかなり薄い。
まずビルドだが、本作にビルドの差異はほとんどないと言っていい。
属性自体は3属性あるのだが、差別化が殆ど存在しない。

凄く微妙にステータス上の差別化はされているが、やること自体は同じだ。
期待値の算出方法が異なるだけで、プレイフィールに大きな変化がない。
その上、アクセサリなどの選択が困難であるが故に、判断で差をつけるのも難しい。

次に攻撃パターンだが、これもほとんど攻略の余地がない。
ボスに関しては相当大味であり、数回やれば覚えることが可能だ。ほぼ初見殺しでしかない。

そして雑魚戦は、攻撃を出させてしまうと回避が困難であることが非常に多い。
攻撃をキャンセルするには一定ダメージが必要であり、火力が前提になってくる。
火力が担保できると、ほぼノーダメで瞬殺できるようになる。

エリア攻略についても、合ってないようなものだ。
モンスターハウス的なものが無い訳ではないが、火力が結局正義だ。

まあ、数回で攻略出来てしまうレベルの深さしかないのだけど、攻略は出来る。
ただそれが、反復を要求するゲーム性と噛み合わないように感じてしまうのだ。
火力担保で反復を要求するなら、もう少し深さがあっていいように思う。

 

独自性: 攻撃手段の豊富さ

では、本作における独自性はどこにあるだろうか?
そう考えた時、唯一あるのが「攻撃手段」だろうか。

本作の攻撃だが、ざっくり言うと「単発の攻撃アクションを組み合わせる形」である。
お助けキャラみたいなのが数十種類おり、それらを5体組み合わせてコンボを設定するのだ。
お助けキャラは、それぞれが固有の攻撃を持っているため、オリジナル連携が組める。

なのだけど、実際のところそんなに攻撃に種類はない。
属性ごとに同じような攻撃があり、同じような攻撃でもレア度により強度差があるからだ。
実際は、遠距離・近距離がそれぞれ4種類くらいの合計8種類くらいといったところか。

だから、いろいろ出来そうに見えて、プレイフィールに変化は全くと言っていいほどない。
5体まで組み合わせてオリジナルコンボが出来る……といいつつも、自由度は高くない。
何なら、操作性が悪すぎるものが混ざっているため、使える攻撃はかなり固定される。

総合して、独自性はあまり本作特有の強みにはなっていない。

 

総評

最低限の要素はある程度は揃っている。
だけど、アクションゲームとしては秀逸ではないし、独自性も薄い。
コスパ相応と言えばそれまでなのだけど、Dead Cellsとかと比べると分が悪い。

プレイ時間を見てもらえれば分かるように、これはサクッとプレイするようなゲームだ。
ローグライトとして真剣にやるよりは、ミニゲーム的に楽しむべき部類のものだ。

疲れて帰宅したときに、一回だけやる。
操作とかは全部忘れるしおぼろげになるけど、また二日後くらいに一回だけやる。
そういう感じでのライトな積み重ねで遊ぶ方が楽しめるだろう。

だけど、錚々たる顔ぶれが並ぶ本ジャンルで、本作を優先してやるべきか?というと否だ。
体調が悪い時に、アクションゲームを軽くやりたい、みたいな時にやるのが良いだろう。
無論、原作ファンであるならば、小綺麗に纏まっているためゲーム部分で損はしないはずだ。

 

個人的お勧め度: ★★★★✩✩✩✩✩✩(4/10)

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